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第4章 竜は泉で静かに踊る
第37話 アランの傭兵ども
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「よろしいですか、リョウ様。わたくしたちは、ラインハルト陛下を救出した一行としてパーティーに招かれているのです。ダンスも行われるでしょう。社交場でのダンスは教養の見せ所です。絶対に足を踏んではいけません」
ヴィレッタが貴族令嬢然として、社交ダンスの嗜みをリョウにレクチャーしだした。
これから行われるであろう、社交ダンスという未知の経験について、リョウは後に語る。
剣舞でも見せればいいんだろ? と考えていたと。
「ローゼもボサッとしていてはなりません。ダンスが始まったら、リョウ様の手をしっかり握ってリードするのですよ」
私にまで⁉ 正直、ダンスなんてやったことないんだけど⁉
でもヴィレッタの言う通り、社交場では恥をかかないように振る舞わなきゃだよね。
でも、リョウとダンスかあ~。
えっと……あれ? 真冬なのに暑くない? 王都リオーネって。
……ぽわわーんと妄想の中で、優雅に踊る私とリョウのダンスに拍手喝采が鳴り響き、お似合いの2人と祝福の鐘を鳴らされる!
「よろしいですか? そもそもダンスというのは、大陸暦以前からある、女性が殿方に洗練された姿を披露する場なのです。殿方も女性をエスコートし、パートナーの魅力を最大限に引き出さなければなりません」
妄想に浸っている私を余所にヴィレッタの説明は続く。
ベレニスとフィーリアとクリスは後に語る。
話の途中でリョウは、身分証である銀の認識証を見せたブラウン髪の大男に、ゴツンと頭を叩かれ引き摺られてどこかへ行ってしまったのだ。
だが、私とヴィレッタの様子から黙っていよう、リョウならどこかへ自分の足で行ったと説明しておこう。
でないと自分たちが怒られると頷きあったと。
「という訳でして、社交場のダンスは殿方の嗜みなのです。リョウ様は恥をかかないように、今から練習しなければなりません。……あれ? リョウ様は?」
「さ、さあ? 傭兵なら話に飽きたんじゃない」
あさっての方向を向くベレニスの目は泳いでいる。
「リョウ様! どこですか⁉ リョウ様‼ えっと……ローゼも現実に戻ってくださいまし‼」
ヴィレッタにガクガクと身体を揺らされ、私は意識を取り戻したのであった。
でもリョウはどこに消えたのやら?
後に私はリョウを連れ去った人物から聞く。
あの時のリョウは死を覚悟した面持ちだったと。
***
リョウは王宮の賓客をもてなす一室に連れ込まれていた。
そこは、荒々しさと規律が混在する独特の雰囲気に満ちている。
その一室、10人以上のアラン傭兵団の証たる黄土色の鎧を着た面々の中で、1人だけ修道服姿のテレサが一応リョウの弁護を担当する。
「……以上を持ちまして、リョウへのペナルティは街に到着したら必ず報告書を作成して、提出する手筈になりました」
「うぇーい」
茶褐色の髪の青年カルマンがハイタッチを求めてくるので、リョウは渋々応じた。
「つーかさあ。ノイズを殺したんだろ? ならリョウに旅をさせる意味なくない?」
リョウを連れ去った大男が座る机に柄悪く座りながら、七色の髪をした妙齢の女性がリョウに問いかける。
アラン傭兵団随一の乱暴者と恐れられる七色の凶戦士、副団長のアレクシア・シャングリラである。
カルマンやサラといった他の団員たちは、楽しげな笑みを浮かべ成り行きを見守る。
「魔女を見つけたらすぐに報告しろと言ってあったが、何故報告を怠った。あまつさえ一緒に旅をしている。これはどういうことだ?」
席に座る大男が、リョウを問い質す。
「団長、そんなのは可愛いからよ。男っつーのは性欲で動くもんよ。他にも一緒にいるのはエルフにドワーフに公爵令嬢。全員女ってのがウケるわ~。リョウはパルケニアに返して、あたいがその面子と旅するでよくない?」
答えたのはアレクシアだ。クククッと笑いながら、冗談とも本気ともつかぬ言葉を付け加える。
リョウは釈然としないが、事実だけに何も言い返せない。
そんなリョウの様子を見て、団長と呼ばれた大男はため息をつく。
「リョウがパルケニアに居づらいのは理解している。が、ダーランドでもまだ俺たちに需要がある。ベルガー王国からも、俺たちに依頼が入っているからそこへ行くのもいい。各地で魔獣や盗賊が頻発化している現状だ。お前をいつまでも遊ばせてはおけん。どうするかを、俺たちが帰還する間に考えておけ」
「ヒュー♪ グレン団長、優しい♪」
茶褐色のセミロングヘアの少女サラが茶化す横では、兄のカルマンがうんうんと頷く。
「俺だって美少女たちと旅がしてえ! リョウ、てめえこの野郎! 1人だけいい思いをしやがって!」
そんな2つ年上のカルマンの恨み節に、リョウは肩に手を乗せて呟く。
「……地獄だぞ」
「は? ……お、おう」
リョウの言葉にカルマンは固まり、傭兵たちは笑い転げた。
「なら決まりだな。パーティーが終わったら団に戻れや。あたいの隊でいいかい団長」
「いえ、アレクシア殿、グレン団長。お願いがあります。このまま、ローゼたちとの旅の同行をお許し頂けないでしょうか?」
頭を下げるリョウの姿に、グレンは意外に思った。
なぜなら、他人にあまり興味を持たなかったリョウが人名を出したのだ。
フッと、笑みが溢れそうになるのを堪える。
「はは~ん、リョウはマゾだったかい? あたいの隊でも地獄を見せてあげられるぜ?」
そんなアレクシアの軽口に、リョウは頭を上げず言葉を返す。
「俺は今まで復讐のために戦ってきました。憎悪のみで剣技を磨いてきた。アラン傭兵団に拾われ、命を永らえたことも罪だとすら考えていた。俺が存在する理由は、デリムの仲間たちの仇であるノイズをこの手で屠るため。そこに他に理由はないと」
一息に語るリョウの眼は、憎悪に燃えていた過去を振り払う様に鋭い。
「だがローゼたちと出会い、旅をしました。俺の事情に巻き込んだり、あいつらの事情に巻き込まれたりしているうちに、あいつらの手助けをしたいと、あいつらの笑顔を護りたいと、そう考えるようになった。……だから俺はローゼたちと一緒に旅がしたい。俺の我儘を、お許しください」
リョウの言葉にグレンはニヤリと笑う。
変わったな。良い方向に。
そう感じながら口を開く。
「あらかたの事情は聞いている。だがリョウよ。お前はダーランドでも、ベルガーでも、ファインダでも目立ちすぎた。もう世間はお前を無視できない。俺は運命ってのは嫌いでな。英雄の運命なんざどうでもいい。お前が昔のお前のままだったら、世間がどう言おうが連れ帰るつもりだった。旅を続ける覚悟、世間の期待に応える覚悟ができたんだな?」
グレンの言葉にリョウは力強く頷いた。
「そうさ、お前はそうでなきゃな! 俺たち全員を振り回した我儘野郎だ! 勝手にどこへでも行って、好きなことをやりやがれってんだ‼」
そんなカルマンの言葉を皮切りに、グレンも団員たちもリョウの我儘を認めていった。
……ただアレクシアだけは、剣を床に突き立て柄に両手を乗せた。
それだけで、室内はしんと静まり返った。
「そこまで言うんだ。傭兵団の証たる認識証と鎧を置いていきな」
「お、おいアレクシア」
「団長は黙ってな。団ってのはなあ、家族なんだ。団に尽くし団を家族と思えってのがアラン傭兵団の教えさ。リョウはこれから好き勝手やるって言いやがる。それって、家族を捨てると言っているのと同じだよなあ。なら、もう家族じゃねえよなあ?」
そんなアレクシアの言葉に、団員たちはやれやれと頭を振った。
「おい、どうしたリョウよ? あたいの気が変わらねえうちに、さっさと鎧と認識証を渡しな。……気が変わったら、この剣でプスリさ」
他人から見れば、今のリョウの感情を知ることは難しいだろう。
口下手なリョウだ。言葉を紡ぐ才能はない。
それでも、思っていることをありのままにリョウは口にしていくのであった。
「我儘なのは重々承知しています。ならばもう一つ我儘を言います。アラン傭兵団の所属のままでいさせてください。団長やみんなへの恩義は忘れるつもりもありません。だからお願いします」
アレクシアは剣を抜き、切っ先をリョウに向けた。
「傭兵の仕事はしねえけど、傭兵でいさせてくれってのか。随分と虫がいい話だなあ」
「旅路では、アランの傭兵は、身分を証明するのにこれ以上ない立場という考えはあります。ですがそれは、救いを求めている者が信じるに足る、頼りにしてくれる存在でもある証なのです。俺はそれに応え続けたい。そして高らかに誇らしく言いたい。『アラン傭兵団のリョウ・アルバース。アランの傭兵の誇りにかけて戦い抜く』と」
「……バカだバカだと思っていたが、ここまでバカだったとはねえ」
嘆息するアレクシアに、テレサが役目である弁護を再開した。
「グレン団長、アレクシア副団長。他の幹部の方々もそうですが、アラン傭兵団はリョウに貸しがあります。オルガ・フーガの暴走をリョウが止めた件です」
テレサの言葉に、グレンは合点がいったと頷きアレクシアは頭を掻きむしる。
邪教の魔女に利用され、復讐に走った仲間の名に全員が複雑な胸中を覗かせた。
「それを言うなよテレサ。あんなのわかるかよ」
「……ええ。ただ結果的には、リョウに私怨で暴走し、復讐に走ったオルガと対峙させてしまいました。この事態を招いたのは、同じ団員である我ら目上の者の責任。ですので、この程度の我儘ぐらいは聞いてあげてもよろしいのでは?」
テレサの訴えにアレクシアは、クソッと毒づいてリョウを見つめる。
「オーケーわーったよ。ただアラン傭兵団を名乗る以上、負けたら殺す。以上だ」
そう言うや、不貞腐れたようにアレクシアは机に座った。
「俺からは国家間、民族間の戦争にどっぷり巻き込まれんようにしろ。弱者を護り、理不尽な暴力を跳ね除けろ。……それだけだ」
グレンの言葉にリョウは大きく頷くのだった。
「パーティー前にこんな話をして悪かったな。だが、このタイミングでしかリョウの本心は聞けんと考えてな。さあて、俺たちも主賓だが、主役はリョウだ。とっとと戻って正装してこい」
リョウは一礼し、部屋を出る前に振り向く。
グレンの慈愛に満ちた眼差しに背中を押されつつ、団員たち1人1人を見つめ、礼をして部屋から去った。
その姿を見送りながら、アレクシアがボソリと呟く。
「楽な選択肢を選ばねえってのも、難儀なもんだ」
「クスッ、副団長。まるで、子を見守る親のような、慈愛に満ちた顔をしていますよ」
「はあ? おいテレサ。あたいはまだ32だぞ! あんなでけえガキがいてたまるかよ!」
慌てるアレクシアに、団員たちが笑いの渦を巻き起こす。
グレンはやれやれと肩を竦めながら、俺たちも楽な選択肢を選ばないようにしないとな、と決意を新たにしたのであった。
ヴィレッタが貴族令嬢然として、社交ダンスの嗜みをリョウにレクチャーしだした。
これから行われるであろう、社交ダンスという未知の経験について、リョウは後に語る。
剣舞でも見せればいいんだろ? と考えていたと。
「ローゼもボサッとしていてはなりません。ダンスが始まったら、リョウ様の手をしっかり握ってリードするのですよ」
私にまで⁉ 正直、ダンスなんてやったことないんだけど⁉
でもヴィレッタの言う通り、社交場では恥をかかないように振る舞わなきゃだよね。
でも、リョウとダンスかあ~。
えっと……あれ? 真冬なのに暑くない? 王都リオーネって。
……ぽわわーんと妄想の中で、優雅に踊る私とリョウのダンスに拍手喝采が鳴り響き、お似合いの2人と祝福の鐘を鳴らされる!
「よろしいですか? そもそもダンスというのは、大陸暦以前からある、女性が殿方に洗練された姿を披露する場なのです。殿方も女性をエスコートし、パートナーの魅力を最大限に引き出さなければなりません」
妄想に浸っている私を余所にヴィレッタの説明は続く。
ベレニスとフィーリアとクリスは後に語る。
話の途中でリョウは、身分証である銀の認識証を見せたブラウン髪の大男に、ゴツンと頭を叩かれ引き摺られてどこかへ行ってしまったのだ。
だが、私とヴィレッタの様子から黙っていよう、リョウならどこかへ自分の足で行ったと説明しておこう。
でないと自分たちが怒られると頷きあったと。
「という訳でして、社交場のダンスは殿方の嗜みなのです。リョウ様は恥をかかないように、今から練習しなければなりません。……あれ? リョウ様は?」
「さ、さあ? 傭兵なら話に飽きたんじゃない」
あさっての方向を向くベレニスの目は泳いでいる。
「リョウ様! どこですか⁉ リョウ様‼ えっと……ローゼも現実に戻ってくださいまし‼」
ヴィレッタにガクガクと身体を揺らされ、私は意識を取り戻したのであった。
でもリョウはどこに消えたのやら?
後に私はリョウを連れ去った人物から聞く。
あの時のリョウは死を覚悟した面持ちだったと。
***
リョウは王宮の賓客をもてなす一室に連れ込まれていた。
そこは、荒々しさと規律が混在する独特の雰囲気に満ちている。
その一室、10人以上のアラン傭兵団の証たる黄土色の鎧を着た面々の中で、1人だけ修道服姿のテレサが一応リョウの弁護を担当する。
「……以上を持ちまして、リョウへのペナルティは街に到着したら必ず報告書を作成して、提出する手筈になりました」
「うぇーい」
茶褐色の髪の青年カルマンがハイタッチを求めてくるので、リョウは渋々応じた。
「つーかさあ。ノイズを殺したんだろ? ならリョウに旅をさせる意味なくない?」
リョウを連れ去った大男が座る机に柄悪く座りながら、七色の髪をした妙齢の女性がリョウに問いかける。
アラン傭兵団随一の乱暴者と恐れられる七色の凶戦士、副団長のアレクシア・シャングリラである。
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席に座る大男が、リョウを問い質す。
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答えたのはアレクシアだ。クククッと笑いながら、冗談とも本気ともつかぬ言葉を付け加える。
リョウは釈然としないが、事実だけに何も言い返せない。
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「俺だって美少女たちと旅がしてえ! リョウ、てめえこの野郎! 1人だけいい思いをしやがって!」
そんな2つ年上のカルマンの恨み節に、リョウは肩に手を乗せて呟く。
「……地獄だぞ」
「は? ……お、おう」
リョウの言葉にカルマンは固まり、傭兵たちは笑い転げた。
「なら決まりだな。パーティーが終わったら団に戻れや。あたいの隊でいいかい団長」
「いえ、アレクシア殿、グレン団長。お願いがあります。このまま、ローゼたちとの旅の同行をお許し頂けないでしょうか?」
頭を下げるリョウの姿に、グレンは意外に思った。
なぜなら、他人にあまり興味を持たなかったリョウが人名を出したのだ。
フッと、笑みが溢れそうになるのを堪える。
「はは~ん、リョウはマゾだったかい? あたいの隊でも地獄を見せてあげられるぜ?」
そんなアレクシアの軽口に、リョウは頭を上げず言葉を返す。
「俺は今まで復讐のために戦ってきました。憎悪のみで剣技を磨いてきた。アラン傭兵団に拾われ、命を永らえたことも罪だとすら考えていた。俺が存在する理由は、デリムの仲間たちの仇であるノイズをこの手で屠るため。そこに他に理由はないと」
一息に語るリョウの眼は、憎悪に燃えていた過去を振り払う様に鋭い。
「だがローゼたちと出会い、旅をしました。俺の事情に巻き込んだり、あいつらの事情に巻き込まれたりしているうちに、あいつらの手助けをしたいと、あいつらの笑顔を護りたいと、そう考えるようになった。……だから俺はローゼたちと一緒に旅がしたい。俺の我儘を、お許しください」
リョウの言葉にグレンはニヤリと笑う。
変わったな。良い方向に。
そう感じながら口を開く。
「あらかたの事情は聞いている。だがリョウよ。お前はダーランドでも、ベルガーでも、ファインダでも目立ちすぎた。もう世間はお前を無視できない。俺は運命ってのは嫌いでな。英雄の運命なんざどうでもいい。お前が昔のお前のままだったら、世間がどう言おうが連れ帰るつもりだった。旅を続ける覚悟、世間の期待に応える覚悟ができたんだな?」
グレンの言葉にリョウは力強く頷いた。
「そうさ、お前はそうでなきゃな! 俺たち全員を振り回した我儘野郎だ! 勝手にどこへでも行って、好きなことをやりやがれってんだ‼」
そんなカルマンの言葉を皮切りに、グレンも団員たちもリョウの我儘を認めていった。
……ただアレクシアだけは、剣を床に突き立て柄に両手を乗せた。
それだけで、室内はしんと静まり返った。
「そこまで言うんだ。傭兵団の証たる認識証と鎧を置いていきな」
「お、おいアレクシア」
「団長は黙ってな。団ってのはなあ、家族なんだ。団に尽くし団を家族と思えってのがアラン傭兵団の教えさ。リョウはこれから好き勝手やるって言いやがる。それって、家族を捨てると言っているのと同じだよなあ。なら、もう家族じゃねえよなあ?」
そんなアレクシアの言葉に、団員たちはやれやれと頭を振った。
「おい、どうしたリョウよ? あたいの気が変わらねえうちに、さっさと鎧と認識証を渡しな。……気が変わったら、この剣でプスリさ」
他人から見れば、今のリョウの感情を知ることは難しいだろう。
口下手なリョウだ。言葉を紡ぐ才能はない。
それでも、思っていることをありのままにリョウは口にしていくのであった。
「我儘なのは重々承知しています。ならばもう一つ我儘を言います。アラン傭兵団の所属のままでいさせてください。団長やみんなへの恩義は忘れるつもりもありません。だからお願いします」
アレクシアは剣を抜き、切っ先をリョウに向けた。
「傭兵の仕事はしねえけど、傭兵でいさせてくれってのか。随分と虫がいい話だなあ」
「旅路では、アランの傭兵は、身分を証明するのにこれ以上ない立場という考えはあります。ですがそれは、救いを求めている者が信じるに足る、頼りにしてくれる存在でもある証なのです。俺はそれに応え続けたい。そして高らかに誇らしく言いたい。『アラン傭兵団のリョウ・アルバース。アランの傭兵の誇りにかけて戦い抜く』と」
「……バカだバカだと思っていたが、ここまでバカだったとはねえ」
嘆息するアレクシアに、テレサが役目である弁護を再開した。
「グレン団長、アレクシア副団長。他の幹部の方々もそうですが、アラン傭兵団はリョウに貸しがあります。オルガ・フーガの暴走をリョウが止めた件です」
テレサの言葉に、グレンは合点がいったと頷きアレクシアは頭を掻きむしる。
邪教の魔女に利用され、復讐に走った仲間の名に全員が複雑な胸中を覗かせた。
「それを言うなよテレサ。あんなのわかるかよ」
「……ええ。ただ結果的には、リョウに私怨で暴走し、復讐に走ったオルガと対峙させてしまいました。この事態を招いたのは、同じ団員である我ら目上の者の責任。ですので、この程度の我儘ぐらいは聞いてあげてもよろしいのでは?」
テレサの訴えにアレクシアは、クソッと毒づいてリョウを見つめる。
「オーケーわーったよ。ただアラン傭兵団を名乗る以上、負けたら殺す。以上だ」
そう言うや、不貞腐れたようにアレクシアは机に座った。
「俺からは国家間、民族間の戦争にどっぷり巻き込まれんようにしろ。弱者を護り、理不尽な暴力を跳ね除けろ。……それだけだ」
グレンの言葉にリョウは大きく頷くのだった。
「パーティー前にこんな話をして悪かったな。だが、このタイミングでしかリョウの本心は聞けんと考えてな。さあて、俺たちも主賓だが、主役はリョウだ。とっとと戻って正装してこい」
リョウは一礼し、部屋を出る前に振り向く。
グレンの慈愛に満ちた眼差しに背中を押されつつ、団員たち1人1人を見つめ、礼をして部屋から去った。
その姿を見送りながら、アレクシアがボソリと呟く。
「楽な選択肢を選ばねえってのも、難儀なもんだ」
「クスッ、副団長。まるで、子を見守る親のような、慈愛に満ちた顔をしていますよ」
「はあ? おいテレサ。あたいはまだ32だぞ! あんなでけえガキがいてたまるかよ!」
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