【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

エピローグ

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 荘厳でいて闇の夜のように暗く淀んだ空気。

 その一室で、元ベルガー王国公爵令嬢シャルロッテ・ルインズベリーは六賢魔が行う儀式を跪いて眺めていた。

「キヒ♥ あたしたちがベルンで実験した結果と、あっちにいるリリとロロが持ち帰った魔獣の魂……すんごいことが起きるよぉ♥」

 シャルロッテの横では、同じく邪教の魔女ジーニアが歪んだ笑みを零しながら跪いている。

 十数名の魔女が控える中、六賢魔からそれぞれの髪色と同じ魔力が溢れていった。

(あの無機質な表情のゴスロリ服の双子の魔女。その後ろで、無精髭を擦っている男がノイズね。……よくも、私のローゼマリー姫様とヴィレッタを殺そうとしたわね)

 跪きもせず、大あくびをしながら存在する男へシャルロッテは睨みつける。

「あの赤髪ポニテのクソガキ誰だ?」

 ノイズは敵意に気づき、自身の配下であるリリとロロに訊いた。

「「ベルガー王国4大公爵家、ルインズベリーの公女シャルロッテ」」

 ハモり答える双子の無機質な声に、ノイズは合点した。

「クックック、あと10年したらいい女になりそうだな。それまで待つとするか」

「ノイズ様うるさい」

「ノイズ様静かにして」

「「とこしえの森でやられたのを、連れ帰らなければよかった」」

 六賢魔の実験を凝視するリリとロロの言葉に、ノイズは肩を竦めた。

「ここにはクソガキとババアしかいねえのがなあ。さてさてさあて、魔王軍宰相クレマンティーヌっていうのは、とんでもない美女だったって話だが、俺の女になってくれないかねえ」

 そんなノイズの呟きは、六賢魔が放つ魔力の音に掻き消された。

 赤色の魔力がチャービル。
 紫色の魔力がローレル。
 緑色の魔力がアロマティカス。
 水色の魔力がタイム。
 白色の魔力がフェンネル。
 黒色の魔力がマツバ。

 六賢魔が放つ魔力は、まるで自然の叡智を具現化したかのような神秘性に満ちていた。
 一方のノイズは、そんな光景を冷めた視線で見渡し、唇をゆがめて嘲笑するような態度だった。

 やがて1つの柱のように6つの魔力は統一され、轟音と光で室内は満たされる。

「キヒ♥ 成功したみたぁい」

 魔力が消え、六賢魔が跪いている姿を控えている魔女たちは見た。

 やがて青肌の絶世の美女が立ち上がり、六賢魔に、周りにいる魔女の少女、ノイズを見て小首を傾げた。

「ローレル、アロマティカス、チャービル、マツバ、タイムにフェンネルかい? 驚いたさね。今はディンレル歴何年さ?」

 荘厳な光の中から現れたクレマンティーヌは、まるで神話に登場する女神のような美しさを放っていた。
 その均整の取れた容姿に、あらゆる生物が魅了されずにいられそうにはなかった。

「今は大陸暦1117年でございます」

「大陸暦? 何さね」

 代表してローレルが口にすると、クレマンティーヌはきょとんとし、六賢魔を凝視し、やがて合点がいったのか嘆息した。

「キヒ♥ 凄い凄ぉい! 動いている本物の魔族ぅ♥ 生きていてよかったぁ♥ クレマンティーヌ様ぁ♥ どうかこのぉ、ジーニア・クレッセントを好きに使ってくださぁい♥」

 ジーニアが、涎を垂らしながら身を乗り出し、クレマンティーヌに魂を捧げるように懇願した。

「私はシャルロッテ・ルインズベリー。どうか私を鍛えてください」

 シャルロッテの瞳には、強靭な意志が宿っていた。

 他の魔女たちも跪いて忠誠を誓う中、双子の魔女リリとロロだけは、周囲とは異なり無表情のままだった。
 2人が動じることなく、ただ黙々と跪いている姿は際立っていた。

「これはたしかに凄えわ。俺はノイズ・グレゴリオ。夜のベッドが寂しいと感じたなら、いつでも呼んでくれ」

 ノイズも右手を胸に当て、ニヤリと嗤った。

「まあまあ、待つさね。千年以上の歴史をちょいと学びたいと思うさね。チャービル、マツバ、いつも一緒にいたディルはどうしたんさね? 書物ならディルが一番詳しかったさねえ」

「ディルとは喧嘩別れしております」

「ですが問題ありません」

 チャービルとマツバは、しゃがれた声で返答した。

「ま、いいさね。それより老婆姿はちょいと慣れないさね」

 クレマンティーヌが手をかざすと眩い光が六賢魔を包む。

「神聖魔法の光……」

 シャルロッテは戦慄した。
 魔族が女神の力を使用した事実を目の当たりにして。

 光が収まると、老婆の姿はなかった。
 全員同じ顔で髪色だけで認識していた面々が、それぞれ個性的に変化する。

 ローレルは紫髪癖っ毛の17歳の姿へ。
 アロマティカスは緑髪セミロングヘアの17歳の姿へ。
 チャービルは赤髪巻き毛の15歳の姿へ。
 マツバは黒髪ショートボブヘアの15歳の姿へ。
 タイムは水髪ロングヘアの11歳の姿へ。
 フェンネルは白髮ショートヘアの11歳の姿へ。

「キャハ♥ マツバ様可愛い。あたしよりぃ、年下になっちゃったぁ♥」

 ジーニアが目をハートマークにし、軽んじる発言をした瞬間、マツバが闇色の魔法を室内に充満させた。

「冗談ですよぉ♥ 今後もぉ六賢魔様とぉ、クレマンティーヌ様にぃ、忠誠を誓いまぁす♥」

 ジーニアが土下座する中で、ノイズはガッカリと肩を落とした。

「どうせなら、あと10歳は上の年齢にしてくれればよかったのになあ」

「あんたの趣味なんて知らんさね。さて、そんなことより、次に何をするつもりなのかだけ聞いておくさね」

 クレマンティーヌの言葉に、マツバは前に出て淡々と告げる。

「魔王アリスを復活させたいと考えております」

 荘厳でいて闇の夜のように暗く淀んだ空気が、より一層、深まっていった。
 
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