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第5章 籠の中の鳥
第1話 ホレイショカフェ(前編)
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真冬の冷たい空気に、ブルッと身体を震わす今日この頃。
街路樹の枝には霜が降り、息は白く凍りついて消えていった。
王都リオーネは、朝早くから活気に満ちている。
市場では商人たちが大声で呼び込みをし、通りには朝の散歩を楽しむ貴族の姿も見られた。
私、ローゼは、本日オープンする飲食店の開店待ちの列に並んでいる。
息が白いなあ。フヘヘへ、楽しみ~。
どうか女神フェロニア様、おまけのぬいぐるみ、目当てのものが当たりますように。
私は両手を合わせながら女神様に祈るのであった。
寒さで鼻先が赤くなっているのを感じながら、列の前方を覗き込む。
朝日が昇り始めて店の看板に当たって金色に輝いている。
その光景に、何だか今日は良いことがありそうな予感がした。
「もうすぐ開店するっす~。事前アンケートをしますんで、ご協力よろしくっす~」
少女がお店から出てきて、列に向かって小走りしながら呼びかける。
この子はフィーリア・メルトダ、11歳。
緑色の髪の短いツインテールで茶色の瞳、私の冒険者仲間でもあり、本職は商人の可愛い女の子だ。
実はドワーフっていう珍しい種族なのだが、見た目は人間の美少女だから誰も気にしていない。
「おわっ! お姉さん、自分っすか⁉ 照れるっす~。聞いているのが自分だからって、遠慮はいらないっすよ~。ほほう、次の方はレオノール姫っすねえ。ふむふむ、ベレニスさんっすか。お次はローゼさん、そしてヴィレッタさん、そんでもってクリスさん。うんうん、正直、均等に票が入って嬉しいっす」
フィーリアは小さな体を精一杯使って列を行き来し、時折つま先立ちになって背の高い客に話しかけていた。
その熱心な姿に、多くの客が微笑んでいる。
フィーリアは何かをアンケートしているみたい。
あれかな? 本日オープンのホレイショカフェの目玉である、来店者特典のぬいぐるみで誰のが欲しいかアンケートしているのかな?
えへへ、実は私たち冒険者パーティー7人がぬいぐるみのモデルなんだよね~。
なんで私たちがモデルになっているかというと、こういう理由である。
先日このファインダ王国が危機にみまわれた際、魔獣に襲撃された西の街ラフィーネを守りきり、尚且つ、命を落とす直前だった英雄王と名高き、ファインダ国王ラインハルト・ファインダを救ったのだ。
王から直々に感謝され、ファインダ王国内に広く知れ渡った私たちなのだ♪
すると、商売に利用する人も当然現れるわけで、私たちはホレイショ商会の看板娘のミレーヌさんから、両手を合わせて頼まれたのである。
今度開店するカフェで、私たちをぬいぐるみにしてプレゼントしたいという企画を耳にして、私も仲間たちも顔がニヤけたのは言うまでもない。
ミレーヌさんは20歳の金髪ロングのお姉さん。
なんでもフィーリアとは、1年近く一緒に行商の旅をしたことがある、商人仲間として固い絆で結ばれた友人だそうな。
ミレーヌさんにそう言わせて、裏で動いていたフィーリアが、すでに私たちのぬいぐるみを量産していたのを知ったときは唖然としたが。
どうやら、ここリオーネにはフィーリアの知人の商人が多くいるようで、到着したその日に計画を考え実行していたみたい。
恐るべし、自称11歳。
ちっちゃいっすから元手もそんないらないんすよ~、なんて言いつつ、昨日の夜に私たち全員へ、自分がモデルのぬいぐるみを配ってくれた。
たしかに手のひらサイズだし、精巧でもないが、それぞれの特徴を捉えていて可愛い。
ベレニスは白銀の長い髪と緑色の瞳、エルフと一目でわかる長い耳が特徴的。
クリスはボサボサな赤髪ロングヘアと、赤い瞳で身長が高く、暢気そうなのが特徴的。
ヴィレッタは青髪ロングヘアで碧眼、青いドレス服でクールビューティーさがよく表現されている。
フィーリアのも緑髪に短いツインテールと、茶色い眼に商人服と小柄な子供感が伝わってくる。
この場にいないレオノールのも見せてもらったが、灰色ショートヘアにヘーゼル色の瞳、銀鎧の凛としている姿が本人感あって実に見事な造形だ。
私のも金髪ショートヘアに碧眼、白のブラウスと紺のスカート姿が可愛らしくできていて、満足な出来栄えだった。
リョウのも黒髪黒瞳で目つきが悪いのが見事に表現されていて、黄土色の皮鎧姿も、まるで本人がぬいぐるみにされたと思えるぐらい完璧な仕上がりだった。
ベレニスもクリスも、ほへえと、自分のぬいぐるみを見てヘンテコな声を出す。
ヴィレッタはお礼を言うや、すぐに貴重品袋に入れ、リョウは興味なさげに無造作にポケットに突っ込んだ。
私? 私は速攻、こう思った。
リョウのがむっちゃ欲しい‼ 何あれ? 本人そのものじゃん!
あれが私の手のひらにある姿を想像すると、めっちゃ幸せな気分になれちゃうぞ!
でも、本人にぬいぐるみ交換しよう? なんて言えるはずがないじゃない?
だから今日はこうして、朝早くからリョウのぬいぐるみをゲットすべく、ホレイショカフェに並んでいるというわけなのだ。
くっ! さすが今や大陸屈指の隆盛を誇るファインダ王国の王都リオーネ。
まさか開店30分前に来て、すでに行列がこんなにもできているなんて思いもしなかったぞ!
「はい、次はお姉さんっす。お姉さんは誰が……ってローゼさん⁉ なんすかその恰好?」
「シーッ! 何って、一応有名人になっちゃっているみたいだし、フードを被っておこうと思って。寒いし、結構こういう人多いし、目立たないでしょ?」
「ま……フードはいいっすが、色眼鏡は変な感じっす」
「ええっ⁉ そうかな? 結構似合っていると思ったんだけど!」
「まあいいっす。それでローゼさんは、どのぬいぐるみが希望っすか?」
フィーリアの持つボードの上のほうには、私たち7人の名前が書いてあり、その下に丸いシールを貼る仕組みのようだ。
ほほう♪ 私にもいっぱい票が入っているなあ♪
女子みんな、ほとんど差がなさそうでこれまた嬉しい♪
いやあ、女の子ばっかり前に並んでいるし、やっぱり唯一の男であるリョウ狙いが多いかな~と思っていたから、これは嬉しい誤算だ。
えっと、リョウは~っと。
……ん? シールが1枚も貼られていないぞ? もしやリョウだけ2周目とかかな?
でも、並んでいる人数とシールの数がおかしいかも?
まあ、ともかく貼ろう。
えいっと、私はリョウのところにシールを貼った。
「おお! ようやくリョウ・アルバースに1票入ったっす~。さあ、次のお姉さんは誰に入れるっすかあ?」
ええ⁉ リョウに誰も入れていなかったの?
なんで? みんなリョウのカッコよさを知らないから?
いや、待て待て私。リョウに、もしいっぱいシールが貼られていたら私はどう思った?
私は嫉妬なんて無縁だし、むしろ自分のことのように嬉しいと思うはず。
うん。間違いないな!
ちょっと前方に魔法を放ちたくなるだけだったに違いない。
うんうん♪っと。
そんなことより、そろそろ開店するみたいで楽しみ♪
ハッ⁉ 料理は何を頼もう? ここはやっぱりパフェかなあ?
なんて思っていると、鈴の音と店主のミレーヌさんの『開店しまーす』の声が聞こえてきた。
フィーリアが中に入っていくのに続き、私たちお客さんもホレイショカフェに入店するのだった。
街路樹の枝には霜が降り、息は白く凍りついて消えていった。
王都リオーネは、朝早くから活気に満ちている。
市場では商人たちが大声で呼び込みをし、通りには朝の散歩を楽しむ貴族の姿も見られた。
私、ローゼは、本日オープンする飲食店の開店待ちの列に並んでいる。
息が白いなあ。フヘヘへ、楽しみ~。
どうか女神フェロニア様、おまけのぬいぐるみ、目当てのものが当たりますように。
私は両手を合わせながら女神様に祈るのであった。
寒さで鼻先が赤くなっているのを感じながら、列の前方を覗き込む。
朝日が昇り始めて店の看板に当たって金色に輝いている。
その光景に、何だか今日は良いことがありそうな予感がした。
「もうすぐ開店するっす~。事前アンケートをしますんで、ご協力よろしくっす~」
少女がお店から出てきて、列に向かって小走りしながら呼びかける。
この子はフィーリア・メルトダ、11歳。
緑色の髪の短いツインテールで茶色の瞳、私の冒険者仲間でもあり、本職は商人の可愛い女の子だ。
実はドワーフっていう珍しい種族なのだが、見た目は人間の美少女だから誰も気にしていない。
「おわっ! お姉さん、自分っすか⁉ 照れるっす~。聞いているのが自分だからって、遠慮はいらないっすよ~。ほほう、次の方はレオノール姫っすねえ。ふむふむ、ベレニスさんっすか。お次はローゼさん、そしてヴィレッタさん、そんでもってクリスさん。うんうん、正直、均等に票が入って嬉しいっす」
フィーリアは小さな体を精一杯使って列を行き来し、時折つま先立ちになって背の高い客に話しかけていた。
その熱心な姿に、多くの客が微笑んでいる。
フィーリアは何かをアンケートしているみたい。
あれかな? 本日オープンのホレイショカフェの目玉である、来店者特典のぬいぐるみで誰のが欲しいかアンケートしているのかな?
えへへ、実は私たち冒険者パーティー7人がぬいぐるみのモデルなんだよね~。
なんで私たちがモデルになっているかというと、こういう理由である。
先日このファインダ王国が危機にみまわれた際、魔獣に襲撃された西の街ラフィーネを守りきり、尚且つ、命を落とす直前だった英雄王と名高き、ファインダ国王ラインハルト・ファインダを救ったのだ。
王から直々に感謝され、ファインダ王国内に広く知れ渡った私たちなのだ♪
すると、商売に利用する人も当然現れるわけで、私たちはホレイショ商会の看板娘のミレーヌさんから、両手を合わせて頼まれたのである。
今度開店するカフェで、私たちをぬいぐるみにしてプレゼントしたいという企画を耳にして、私も仲間たちも顔がニヤけたのは言うまでもない。
ミレーヌさんは20歳の金髪ロングのお姉さん。
なんでもフィーリアとは、1年近く一緒に行商の旅をしたことがある、商人仲間として固い絆で結ばれた友人だそうな。
ミレーヌさんにそう言わせて、裏で動いていたフィーリアが、すでに私たちのぬいぐるみを量産していたのを知ったときは唖然としたが。
どうやら、ここリオーネにはフィーリアの知人の商人が多くいるようで、到着したその日に計画を考え実行していたみたい。
恐るべし、自称11歳。
ちっちゃいっすから元手もそんないらないんすよ~、なんて言いつつ、昨日の夜に私たち全員へ、自分がモデルのぬいぐるみを配ってくれた。
たしかに手のひらサイズだし、精巧でもないが、それぞれの特徴を捉えていて可愛い。
ベレニスは白銀の長い髪と緑色の瞳、エルフと一目でわかる長い耳が特徴的。
クリスはボサボサな赤髪ロングヘアと、赤い瞳で身長が高く、暢気そうなのが特徴的。
ヴィレッタは青髪ロングヘアで碧眼、青いドレス服でクールビューティーさがよく表現されている。
フィーリアのも緑髪に短いツインテールと、茶色い眼に商人服と小柄な子供感が伝わってくる。
この場にいないレオノールのも見せてもらったが、灰色ショートヘアにヘーゼル色の瞳、銀鎧の凛としている姿が本人感あって実に見事な造形だ。
私のも金髪ショートヘアに碧眼、白のブラウスと紺のスカート姿が可愛らしくできていて、満足な出来栄えだった。
リョウのも黒髪黒瞳で目つきが悪いのが見事に表現されていて、黄土色の皮鎧姿も、まるで本人がぬいぐるみにされたと思えるぐらい完璧な仕上がりだった。
ベレニスもクリスも、ほへえと、自分のぬいぐるみを見てヘンテコな声を出す。
ヴィレッタはお礼を言うや、すぐに貴重品袋に入れ、リョウは興味なさげに無造作にポケットに突っ込んだ。
私? 私は速攻、こう思った。
リョウのがむっちゃ欲しい‼ 何あれ? 本人そのものじゃん!
あれが私の手のひらにある姿を想像すると、めっちゃ幸せな気分になれちゃうぞ!
でも、本人にぬいぐるみ交換しよう? なんて言えるはずがないじゃない?
だから今日はこうして、朝早くからリョウのぬいぐるみをゲットすべく、ホレイショカフェに並んでいるというわけなのだ。
くっ! さすが今や大陸屈指の隆盛を誇るファインダ王国の王都リオーネ。
まさか開店30分前に来て、すでに行列がこんなにもできているなんて思いもしなかったぞ!
「はい、次はお姉さんっす。お姉さんは誰が……ってローゼさん⁉ なんすかその恰好?」
「シーッ! 何って、一応有名人になっちゃっているみたいだし、フードを被っておこうと思って。寒いし、結構こういう人多いし、目立たないでしょ?」
「ま……フードはいいっすが、色眼鏡は変な感じっす」
「ええっ⁉ そうかな? 結構似合っていると思ったんだけど!」
「まあいいっす。それでローゼさんは、どのぬいぐるみが希望っすか?」
フィーリアの持つボードの上のほうには、私たち7人の名前が書いてあり、その下に丸いシールを貼る仕組みのようだ。
ほほう♪ 私にもいっぱい票が入っているなあ♪
女子みんな、ほとんど差がなさそうでこれまた嬉しい♪
いやあ、女の子ばっかり前に並んでいるし、やっぱり唯一の男であるリョウ狙いが多いかな~と思っていたから、これは嬉しい誤算だ。
えっと、リョウは~っと。
……ん? シールが1枚も貼られていないぞ? もしやリョウだけ2周目とかかな?
でも、並んでいる人数とシールの数がおかしいかも?
まあ、ともかく貼ろう。
えいっと、私はリョウのところにシールを貼った。
「おお! ようやくリョウ・アルバースに1票入ったっす~。さあ、次のお姉さんは誰に入れるっすかあ?」
ええ⁉ リョウに誰も入れていなかったの?
なんで? みんなリョウのカッコよさを知らないから?
いや、待て待て私。リョウに、もしいっぱいシールが貼られていたら私はどう思った?
私は嫉妬なんて無縁だし、むしろ自分のことのように嬉しいと思うはず。
うん。間違いないな!
ちょっと前方に魔法を放ちたくなるだけだったに違いない。
うんうん♪っと。
そんなことより、そろそろ開店するみたいで楽しみ♪
ハッ⁉ 料理は何を頼もう? ここはやっぱりパフェかなあ?
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