【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
209 / 314
第6章 雪原は鮮血に染まる

第5話 奔走! 果物集め!

しおりを挟む
「サンストーン・グレイプの原体を所望とは、また物好きな客人よのう」

 魔導具店の店主は、カウンターの奥から顔を出し、ちょび髭を捻りながら目の前の若い男女のリョウとクレアを値踏みするように眺めた。

「ふむ。それで、取引価格はいくらになるのかね?」

 クレアが落ち着いた声音で尋ねる。

「そうよのう、何分にも希少な代物じゃ。加工前の原体とはいえ、大金貨2枚は下らぬぞ」

 大金貨2枚。衛兵が1年間、飲まず食わずで働いてようやく手にできるかどうか、という額だ。
 リョウの顔が僅かに曇る。傭兵稼業でそれなりの蓄えはあるが、気軽に出せる金額ではない。
 クレアも今は旅の身だ。

「クレア殿……さすがにそれほどの大金は……」

 リョウが言い淀むのを、クレアは手で制した。

「なるほど。それで、在庫は現在あるのかね?」

「まあ待て。焦るでない」

 店主は悪戯っぽく笑うと、奥の棚から厳重に保管されていた箱を取り出した。

「まだ工房に出す前のものが、ちょうど一つだけある。ほれ、これじゃ」

 箱の中から現れたのは、成人男性の拳ほどの大きさの、鉱石のような物体だった。葡萄とは似ても似つかない。
 燃え盛る夕日を思わせる深みのあるオレンジ色をしており、表面には無数の微細な粒子が内側から発光するように煌めき、神秘的な七色の光彩を放っていた。
 宝石と紹介されても疑わないだろう。

「ふむ、見事なものさね。たしかにサンストーン・グレイプの原体だねえ」

 クレアが鑑定するように頷く。

「これを魔導具のコアとして加工すれば、大金貨3枚でも買い手がつこうぞ」

 店主は自慢げに語る。

 リョウに魔導具の知識はないが、その輝きと店主の言葉から、これが尋常ならざる価値を持つ品であることは嫌でも理解できた。

「店主殿、貴重な品を見せていただき、感謝いたします。しかし、残念ながら今回は手持ちが足りませぬ。諦めるとしましょう」

 リョウは潔く頭を下げた。仲間のためとはいえ、今の自分には分不相応な品だ。

 だが、店主はにやりと意地の悪い笑みを浮かべた。

「まあ、そう言うでない。どうしても欲しいというのなら、ちいと頼み事を聞いてはくれんか? 報酬として、これを譲ってやらんでもないぞ」

「頼み事……ですか?」

「うむ。昨日リオーネ川に、とんでもない化け物が出たと評判でな。『大ウグイ』とか呼ばれとるらしい。そいつを仕留めてきてくれたら、このサンストーン・グレイプと交換してやろう」

「大ウグイ……?」

 聞き慣れない名前に、リョウは首を傾げる。

「なに、ただのデカい魚よ。だが、ちいとばかり厄介でな。漁師どもも手を焼いとるらしい。どうじゃ? 腕に覚えがあるなら、挑戦してみるか?」

 店主の言葉には、明らかにリョウを試すような響きがあった。
 サンストーン・グレイプは喉から手が出るほど欲しい。
 仲間の、クリスの喜ぶ顔が見たい。

「……承知いたしました。その大ウグイ、俺が仕留めてまいります」

 リョウは迷わず即答した。
 その隣で、クレアは(なるほどねえ)と内心で面白がるように微笑んでいた。
 リョウの実力と覚悟を試す、良い機会になりそうだ、と。

「クレア殿、大ウグイ討伐には時間がかかるかもしれません。これ以上、俺の個人的な頼みに付き合っていただくのは、ご迷惑では……」

 魔導具店を出ると、リョウは申し訳なさそうにクレアに言った。

「気にすることはないさね。むしろ、君の英雄譚を間近で見られるのは、僥倖というものさね」

 クレアは優雅に微笑む。

「それに、私の旅の目的の一つは、各地の珍しい素材、特に果物を集めて、新たな薬のレシピ開発に役立てること。君の見舞い品探しは、私の目的にも合致しているのさ」

 クレアはそう言うと、リョウが持っていた果物リストに目を落とした。

「だが、一つ一つ対処していては日が暮れるねえ。大ウグイの前に、他の果物の目星もつけておくべきさね。ブラックベリーのジャム、南部諸国産のマンゴー、それに高級なイチゴや梨、レスティア産に近い味のリンゴ……心当たりはあるのかね?」

 リョウは首を横に振った。高級品となると、普通の果物屋では難しいだろう。

「ふむ。ならば、まずは情報収集さね」

 クレアの提案で、2人は王都の飲食店や高級食材店を巡り始めた。
 口下手なリョウに代わり、クレアが持ち前の落ち着きと巧みな話術で情報を引き出していった。

「最高級のイチゴや梨、レスティア産に似た風味を持つ特別なリンゴも南部諸国産のマンゴーもございます。ブラックベリーのジャムも、今年は出来が良いものが少ないですな。これらは相応のお代をいただきます。……ですが、大ウグイを退治していただければ進呈しましょう」

 やがてたどり着いた貴族御用達の高級果物店で、そう告げられた。
 直接的ではないにせよ、大ウグイ騒動が影響しているようだ。

「どうやら、街の厄介払いをするのが、結局は一番の近道みたいだねえ」

 クレアは肩をすくめ、リョウを見つめる。
 その瞳の奥には、単なる好奇心だけではない、何か別の感情が揺らめいているようにリョウには感じられた。

「……はい。どの道、サンストーン・グレイプのためにも、大ウグイは倒さねばなりません」

 リョウは覚悟を決め、クレアと共にリオーネ川へと向かった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...