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第5章 籠の中の鳥
第25話 リョウvs双子の魔女
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漆黒のゴスロリドレスを夜風にはためかせ、冷然とリョウを見下ろすリリ。
純白のドレスが月光に映え、無感情な瞳を向けるロロ。
双子の魔女はリョウ・アルバースを排除すべき障害と断じ、その指先から練り上げられた闇色の魔力を撃ち放つ。
それは単なる直線的な弾丸ではない。
一つはリョウの直進を阻む壁のように広がり、もう一つは追尾するように螺旋を描いて迫る。
爆音と衝撃波が石畳を砕き、リョウを巧みに死角へと追い詰めようとしていた。
「「老体に変化している魔女、何者? リョウ・アルバースの味方なら殺す」」
回避運動を続けるリョウを一瞥し、攻撃の手を緩めぬまま、双子はなおも地上に佇む謎の存在に問いかける。
その存在は杖を手に静観するのみで、リョウを助ける素振りも双子に敵対する意思も見せない。
その瞳の奥には冷めた好奇心が揺らめいていた。
「フン! マツバに、こう伝えておくが良い。『マツバの回りくどい計画より、儂のやり方の方がよほど確実だ』とな」
ディルの挑発的な言葉は、双子の無表情な仮面に明確な敵意を刻ませた。
「「マツバ様を侮辱する口、許さない。敵とみなす」」
双子の魔力が再び高まる。
だが、その瞬間をリョウは見逃さなかった。
爆風を背に地を蹴り、漆黒の剣を構えて跳躍。
双子の連携魔法陣が完成する寸前、その中心へと鋭く斬り込む。
予測外の軌道からの強襲に、双子は陣形を乱して魔力弾の軌道を逸らす。
空を切った剣閃。落下を始めるリョウの身体は空中において無防備な的となった。
「「もらった! 死ね、リョウ・アルバース。魔王復活のために!」」
リリが放つ闇の槍がリョウの心臓を狙い、ロロが展開する重力の檻がその動きを封じようとする。
絶対的な死角からの回避不能の挟撃。
だが落下するリョウの身体は、常識ではありえない挙動を見せた。
空中で独楽のように高速回転し、迫る闇の槍を剣で弾き逸らすと同時に、重力の檻が発生する座標からコンマ数秒早く離脱。
そのまま回転の勢いを利用し、さらに加速して双子の懐へと肉薄する。
「「なっ……空中で、二段跳躍⁉ 馬鹿な⁉」」
驚愕に見開かれた双子の瞳に、リョウの冷徹な視線が映る。
物理法則を無視したかのような動き。
それは彼が幾多の死線を越える中で培ってきた、純粋な技量と身体能力の極致だった。
反応する間も与えず、リョウの剣の柄頭が寸分違わぬタイミングでリリとロロ、それぞれの鳩尾へと深く叩き込まれた。
「ぐっ……ぁ……!」
短い呻きと共に双子の魔女は意識を失い、力なく地上へと落下する。
リョウはそれを空中で巧みに受け止め、衝撃を殺しながら静かに着地した。
「……なるほどのう。これはこれは……たしかに厄介よ、この小僧は」
一連の攻防を満足げに眺めていた魔女が、杖を軽く打ち鳴らす。
その瞳は先ほどよりも強い輝きを放ち、リョウの実力を正確に測り終えたかのような深淵の色を滲ませていた。
杖から漏れ出る黒いオーラが濃くなり、彼女の存在そのものが周囲の空間を歪ませているかのようだ。
「魔女殿……どうやら俺たちに敵意はないようだが、できれば戦いは避けたい。貴女の目的をお教え願えないだろうか?」
気絶したリリとロロを地面に横たえ、リョウは警戒を解かぬまま、しかし礼を尽くして魔女に問いかけた。
「ふむ……小僧、少しは楽しませてもらった礼じゃ。双子が目覚めたらこう伝えるがいい。『クレマンティーヌ様、私をも若返らせるとは相変わらず凄い御方よ』とな」
その名前にリョウの背筋に冷たいものが走る。
クレマンティーヌ。魔王軍の宰相の名として、エルフの前女王フォレスタから聞いていた名だ。
疑問が深まるリョウの前で、魔女の身体が淡い光に包まれる。
しわくちゃの老人の姿は掻き消え、そこには金髪ウェーブのショートヘアの美少女が立っていた。
「落ち着け小僧。ローゼにもこう伝えておけ。『未熟者め、魔法の罠に簡単に引っかかりおって』とな」
「……まさか貴女は……」
リョウは絶句する。
ローゼにそのような口を聞く存在は、この世に1人しかいないから。
「魔女ディル……」
ローゼを10年間鍛え、魔女にした存在。
「じゃあの。生き続けていれば、また相まみえようて」
その言葉を最後に、ディルの姿は陽炎のように揺らめき、完全に掻き消えた。
まるで最初からそこに誰もいなかったかのように、静寂だけが残された。
その直後、けたたましい馬の蹄の音が静寂を破った。
近衛隊長アレックスが息を切らして馬を駆り、その後ろには本物のガードン子爵がしがみつくように乗っている。
もう一頭の馬には青い修道服姿のテレサが跨がり、鋭い視線を周囲に向けていた。
彼らの背後からは王宮の兵士たちが隊列を組み、瞬く間に女子寮の前は包囲された。
「リョウ殿! 無事か! ……むっ⁉ その倒れているのは……まさか、クラーク家の双子⁉ どういうことだ!」
「……リョウ、説明を求めます。この状況、そして……中の様子は?」
アレックスの驚愕と、テレサの冷静ながらも緊迫した問いかけが飛ぶ。
「テレサさん、アレックス殿、それに本物のガードン子爵殿ですね。先ほど、この双子の魔女と交戦して制圧しました。身柄を引き渡します」
リョウは簡潔に状況を報告する。
「おお! まさしくクラーク家の行方不明となっていた双子の令嬢じゃわい! これは……ありがたい! これで8年前のニーマイヤー家の反乱、そして先日のクラーク家の事件の真相に迫れるやもしれぬ!」
興奮気味に語る本物のガードン子爵の様子に、リョウは内心で、先ほどの偽物との落差に僅かな安堵と、依然として残る大きな謎への警戒心を抱きながら、ホッと息をついた。
「王宮に立ち寄って、テレサ様に女子寮への立ち入りの許可をいただこうとしたら、テレサ様はガードン子爵家に向かわれた、とマーガレット妃殿下から伺ってな。行き違いになったかと邸宅へ馬を飛ばしたら、なんとガードン子爵がぎっくり腰で動けなくなっておられ、テレサ様が治療の最中だったのだ。いやはや、まるで悪質な魔女の悪戯に、キツネにつままれたような気分だ」
アレックスが、やや疲れた表情で経緯を説明する。
「ホッホッホ、テレサ様の素晴らしい神聖魔法のおかげで、儂の腰痛もすっかり良くなったわい。ありがたや、ありがたや。……しかし古来より、突然の腰痛は魔女の一撃、とも申すが、一連の流れ、まさしく魔女の仕業じゃろう。気絶しておった儂に成り代わり、リョウ殿たちに接触した存在が、全ての元凶じゃろうのう」
ガードン子爵は、すっかり元気になった様子で付け加えた。
「それで? ガードン子爵に化けていた魔女は、どうなったのです?」
テレサが鋭く尋ねる。
「……姿を消しました。その正体については、後ほど詳しく報告します。それよりも、この女子寮のことです。偽ガードン子爵が言うには、この建物全体が強力な幻惑系の結界に覆われており、一度入ったら最後、術者の望む『偽りの現実』に囚われ、出られなくなる、と。フィーリアとベレニスとクリス、それに門番兵の方2名が中に入ったまま、戻ってきません」
リョウの重い説明に、アレックス、テレサ、そしてガードン子爵の顔色が一変した。
「ふむう……なんと厄介な……」
「……精神誘導を伴う大規模な催眠魔法、ですか。そうなると、残念ながら外部からの物理的な干渉はほぼ無意味。内部から結界を破るか、術者を無力化する以外、対処しようがない状況を作られています。寮長であるモリーナ先輩がいながら、このような事態を許してしまうとは……信じたくはありませんでしたが……やはり、この状況を作り出した張本人は……」
テレサは天を仰ぎ、悲しげに首を横に振った。かつての先輩への複雑な思いが窺える。
「……ところでリョウ殿。ガードン子爵から、さらに気になる情報を得たのだ。女子寮には、もう一つ……いや、もう1人、おかしな点がある、と」
アレックスが、リョウに視線を向ける。
リョウは聞きながら静かに頷く。
その脳裏には、偽ガードン子爵(ディル)が去り際に残した言葉と、本物のガードン子爵が語った、とある寮生に関する不可解な情報が反芻されていた。
「リョウ殿、随分と落ち着いている様子だが……中の者たちが心配ではないのか?」
アレックスが、リョウの冷静さに少し驚いたように尋ねる。
リョウは女子寮の建物を見据え、静かに確信を込めて答えた。
「ローゼなら、きっと何とかするでしょう。ヴィレッタもレオノールもいます。俺はここで彼女たちが必ずやり遂げて戻ってくるのを、信じて待っているつもりです」
そう語るリョウの声には、揺るぎない信頼と晴れやかな響きがあった。
「……わかりました。あなたの仲間への信頼、しかと受け止めました。万が一の事態に備え、私もこの場に残るとしましょう。アレックス様、ガードン子爵様、まずはこの邪教の魔女と思われる双子の身柄を確保し、王宮への連行をお願いできますか」
テレサの迅速な判断に、アレックスとガードン子爵は力強く頷き、兵士たちに指示を出し始めた。
「承知した! 終わり次第、俺もすぐにここへ戻ってきましょう。リョウ殿、気を抜くなよ!」
「ホッホッホ、陛下と妃殿下にも、急ぎこの状況をご報告せねばなりますまい。いやはや、とんだ休日になったものじゃわい」
アレックスとガードン子爵が、兵士たちと共に双子を連行すべく動き出す。
その直後、凄まじい轟音と共に、女子寮の最上階付近で大規模な爆発が起こり、建物の壁が大きく崩落した。
ラインハルト王とマーガレット妃が、この異常事態の報告を受けて現場に駆けつけるのは、それから間もなくのことであった。
純白のドレスが月光に映え、無感情な瞳を向けるロロ。
双子の魔女はリョウ・アルバースを排除すべき障害と断じ、その指先から練り上げられた闇色の魔力を撃ち放つ。
それは単なる直線的な弾丸ではない。
一つはリョウの直進を阻む壁のように広がり、もう一つは追尾するように螺旋を描いて迫る。
爆音と衝撃波が石畳を砕き、リョウを巧みに死角へと追い詰めようとしていた。
「「老体に変化している魔女、何者? リョウ・アルバースの味方なら殺す」」
回避運動を続けるリョウを一瞥し、攻撃の手を緩めぬまま、双子はなおも地上に佇む謎の存在に問いかける。
その存在は杖を手に静観するのみで、リョウを助ける素振りも双子に敵対する意思も見せない。
その瞳の奥には冷めた好奇心が揺らめいていた。
「フン! マツバに、こう伝えておくが良い。『マツバの回りくどい計画より、儂のやり方の方がよほど確実だ』とな」
ディルの挑発的な言葉は、双子の無表情な仮面に明確な敵意を刻ませた。
「「マツバ様を侮辱する口、許さない。敵とみなす」」
双子の魔力が再び高まる。
だが、その瞬間をリョウは見逃さなかった。
爆風を背に地を蹴り、漆黒の剣を構えて跳躍。
双子の連携魔法陣が完成する寸前、その中心へと鋭く斬り込む。
予測外の軌道からの強襲に、双子は陣形を乱して魔力弾の軌道を逸らす。
空を切った剣閃。落下を始めるリョウの身体は空中において無防備な的となった。
「「もらった! 死ね、リョウ・アルバース。魔王復活のために!」」
リリが放つ闇の槍がリョウの心臓を狙い、ロロが展開する重力の檻がその動きを封じようとする。
絶対的な死角からの回避不能の挟撃。
だが落下するリョウの身体は、常識ではありえない挙動を見せた。
空中で独楽のように高速回転し、迫る闇の槍を剣で弾き逸らすと同時に、重力の檻が発生する座標からコンマ数秒早く離脱。
そのまま回転の勢いを利用し、さらに加速して双子の懐へと肉薄する。
「「なっ……空中で、二段跳躍⁉ 馬鹿な⁉」」
驚愕に見開かれた双子の瞳に、リョウの冷徹な視線が映る。
物理法則を無視したかのような動き。
それは彼が幾多の死線を越える中で培ってきた、純粋な技量と身体能力の極致だった。
反応する間も与えず、リョウの剣の柄頭が寸分違わぬタイミングでリリとロロ、それぞれの鳩尾へと深く叩き込まれた。
「ぐっ……ぁ……!」
短い呻きと共に双子の魔女は意識を失い、力なく地上へと落下する。
リョウはそれを空中で巧みに受け止め、衝撃を殺しながら静かに着地した。
「……なるほどのう。これはこれは……たしかに厄介よ、この小僧は」
一連の攻防を満足げに眺めていた魔女が、杖を軽く打ち鳴らす。
その瞳は先ほどよりも強い輝きを放ち、リョウの実力を正確に測り終えたかのような深淵の色を滲ませていた。
杖から漏れ出る黒いオーラが濃くなり、彼女の存在そのものが周囲の空間を歪ませているかのようだ。
「魔女殿……どうやら俺たちに敵意はないようだが、できれば戦いは避けたい。貴女の目的をお教え願えないだろうか?」
気絶したリリとロロを地面に横たえ、リョウは警戒を解かぬまま、しかし礼を尽くして魔女に問いかけた。
「ふむ……小僧、少しは楽しませてもらった礼じゃ。双子が目覚めたらこう伝えるがいい。『クレマンティーヌ様、私をも若返らせるとは相変わらず凄い御方よ』とな」
その名前にリョウの背筋に冷たいものが走る。
クレマンティーヌ。魔王軍の宰相の名として、エルフの前女王フォレスタから聞いていた名だ。
疑問が深まるリョウの前で、魔女の身体が淡い光に包まれる。
しわくちゃの老人の姿は掻き消え、そこには金髪ウェーブのショートヘアの美少女が立っていた。
「落ち着け小僧。ローゼにもこう伝えておけ。『未熟者め、魔法の罠に簡単に引っかかりおって』とな」
「……まさか貴女は……」
リョウは絶句する。
ローゼにそのような口を聞く存在は、この世に1人しかいないから。
「魔女ディル……」
ローゼを10年間鍛え、魔女にした存在。
「じゃあの。生き続けていれば、また相まみえようて」
その言葉を最後に、ディルの姿は陽炎のように揺らめき、完全に掻き消えた。
まるで最初からそこに誰もいなかったかのように、静寂だけが残された。
その直後、けたたましい馬の蹄の音が静寂を破った。
近衛隊長アレックスが息を切らして馬を駆り、その後ろには本物のガードン子爵がしがみつくように乗っている。
もう一頭の馬には青い修道服姿のテレサが跨がり、鋭い視線を周囲に向けていた。
彼らの背後からは王宮の兵士たちが隊列を組み、瞬く間に女子寮の前は包囲された。
「リョウ殿! 無事か! ……むっ⁉ その倒れているのは……まさか、クラーク家の双子⁉ どういうことだ!」
「……リョウ、説明を求めます。この状況、そして……中の様子は?」
アレックスの驚愕と、テレサの冷静ながらも緊迫した問いかけが飛ぶ。
「テレサさん、アレックス殿、それに本物のガードン子爵殿ですね。先ほど、この双子の魔女と交戦して制圧しました。身柄を引き渡します」
リョウは簡潔に状況を報告する。
「おお! まさしくクラーク家の行方不明となっていた双子の令嬢じゃわい! これは……ありがたい! これで8年前のニーマイヤー家の反乱、そして先日のクラーク家の事件の真相に迫れるやもしれぬ!」
興奮気味に語る本物のガードン子爵の様子に、リョウは内心で、先ほどの偽物との落差に僅かな安堵と、依然として残る大きな謎への警戒心を抱きながら、ホッと息をついた。
「王宮に立ち寄って、テレサ様に女子寮への立ち入りの許可をいただこうとしたら、テレサ様はガードン子爵家に向かわれた、とマーガレット妃殿下から伺ってな。行き違いになったかと邸宅へ馬を飛ばしたら、なんとガードン子爵がぎっくり腰で動けなくなっておられ、テレサ様が治療の最中だったのだ。いやはや、まるで悪質な魔女の悪戯に、キツネにつままれたような気分だ」
アレックスが、やや疲れた表情で経緯を説明する。
「ホッホッホ、テレサ様の素晴らしい神聖魔法のおかげで、儂の腰痛もすっかり良くなったわい。ありがたや、ありがたや。……しかし古来より、突然の腰痛は魔女の一撃、とも申すが、一連の流れ、まさしく魔女の仕業じゃろう。気絶しておった儂に成り代わり、リョウ殿たちに接触した存在が、全ての元凶じゃろうのう」
ガードン子爵は、すっかり元気になった様子で付け加えた。
「それで? ガードン子爵に化けていた魔女は、どうなったのです?」
テレサが鋭く尋ねる。
「……姿を消しました。その正体については、後ほど詳しく報告します。それよりも、この女子寮のことです。偽ガードン子爵が言うには、この建物全体が強力な幻惑系の結界に覆われており、一度入ったら最後、術者の望む『偽りの現実』に囚われ、出られなくなる、と。フィーリアとベレニスとクリス、それに門番兵の方2名が中に入ったまま、戻ってきません」
リョウの重い説明に、アレックス、テレサ、そしてガードン子爵の顔色が一変した。
「ふむう……なんと厄介な……」
「……精神誘導を伴う大規模な催眠魔法、ですか。そうなると、残念ながら外部からの物理的な干渉はほぼ無意味。内部から結界を破るか、術者を無力化する以外、対処しようがない状況を作られています。寮長であるモリーナ先輩がいながら、このような事態を許してしまうとは……信じたくはありませんでしたが……やはり、この状況を作り出した張本人は……」
テレサは天を仰ぎ、悲しげに首を横に振った。かつての先輩への複雑な思いが窺える。
「……ところでリョウ殿。ガードン子爵から、さらに気になる情報を得たのだ。女子寮には、もう一つ……いや、もう1人、おかしな点がある、と」
アレックスが、リョウに視線を向ける。
リョウは聞きながら静かに頷く。
その脳裏には、偽ガードン子爵(ディル)が去り際に残した言葉と、本物のガードン子爵が語った、とある寮生に関する不可解な情報が反芻されていた。
「リョウ殿、随分と落ち着いている様子だが……中の者たちが心配ではないのか?」
アレックスが、リョウの冷静さに少し驚いたように尋ねる。
リョウは女子寮の建物を見据え、静かに確信を込めて答えた。
「ローゼなら、きっと何とかするでしょう。ヴィレッタもレオノールもいます。俺はここで彼女たちが必ずやり遂げて戻ってくるのを、信じて待っているつもりです」
そう語るリョウの声には、揺るぎない信頼と晴れやかな響きがあった。
「……わかりました。あなたの仲間への信頼、しかと受け止めました。万が一の事態に備え、私もこの場に残るとしましょう。アレックス様、ガードン子爵様、まずはこの邪教の魔女と思われる双子の身柄を確保し、王宮への連行をお願いできますか」
テレサの迅速な判断に、アレックスとガードン子爵は力強く頷き、兵士たちに指示を出し始めた。
「承知した! 終わり次第、俺もすぐにここへ戻ってきましょう。リョウ殿、気を抜くなよ!」
「ホッホッホ、陛下と妃殿下にも、急ぎこの状況をご報告せねばなりますまい。いやはや、とんだ休日になったものじゃわい」
アレックスとガードン子爵が、兵士たちと共に双子を連行すべく動き出す。
その直後、凄まじい轟音と共に、女子寮の最上階付近で大規模な爆発が起こり、建物の壁が大きく崩落した。
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