婚約破棄は夜会でお願いします

編端みどり

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第二十話

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カルロとの婚約は、無事発表され多数の方に祝福して頂けました。

今から騎士団の皆様にも婚約の報告をします。職場が同じなので、わたくしが異動しないといけないかと不安でしたが、騎士団内で夫婦の方も居るそうですから特に問題はないそうです。ただし、仕事中に少しでもプライベートを持ち出したら、どちらかもしくは両方辞めさせられます。例え、夫婦喧嘩をしていても、仕事中は普通に過ごせと王家から指示がありました。普通は、こんな話をするのは団長なのですが、今回は団長が当事者ですので……。

「という訳で、オレとシルヴィアは婚約した。結婚はまだ先になる。仕事中にプライベートを出すことはないが、少しでも気になる事があれば言ってくれ。報告が遅れてすまない」

「黙っていて申し訳ありませんでした。ようやくみなさんにご報告できて嬉しいです。仕事には支障がないよう全力で努めて参りますので、今後ともよろしくお願いします」

「団長、シルヴィア、おめでとう!」

「団長、さっさと報告して下さいよ!」

「まぁ、バレバレだったけどなぁ」

皆様、祝福して下さいました。
ヘレナも、ニコニコ笑って祝ってくれました。昨日の話があったから、少し気になっていたのですが……。

「よし、シルヴィアは非番だから帰って良いぞ。そろそろ仕事の話をする。今日は、娼館に行った貴族の嫡男が娼婦に刺された件の調査がある。娼婦は拘束して、尋問は女性騎士を中心に行っている。新人の経験を積む為、非番以外の新人は全員オレと聞き込みだ。場所はブラン娼館、この街でいちばんデカイ娼館だ」

「「「承知しました!!!」」」

ヘレナ?! いつもはすぐ返事をするヘレナだけ、返事もせずに真っ青な顔をしています。

「ヘレナ、返事はどうした!」

「……すいません、承知……しました」

明らかにヘレナの様子がおかしいです。

「ヘレナ? どうしたの? 大丈夫?」

「……大丈夫、じゃないかも」

「団長、わたくしヘレナと交代致します。よろしいですか?」

「……ヘレナ、今日はシルヴィアと交代して寮で休め。シルヴィア、出発は15分後だ」

「かしこまりました! すぐ準備致します!」

…………………… 

「シルヴィア、ごめん」

「大丈夫です。困った時はお互い様ですわ。わたくしこそ、ヘレナに婚約の事黙っていてごめんなさい」

「ふふっ、やっぱり気にしてたんだ。でもあたし、シルヴィアと団長が婚約してるの知ってたよ」

「……え?!」

「騎士団で、知らない人なんて居ないよ。ちょっとシルヴィアをからかっただけ。まぁ、私にだけ秘密を話してくれないかなって思ったのもホントだけど」

そ、そんなにバレバレでしたの?! 先輩騎士の方にはバレてると思ってましたが……。

「黙っていて、ごめんなさい……」

「ううん、やっぱりシルヴィアは真面目だね。発表まで秘密ってなったら、ホントに誰にも言わないんでしょ。不真面目なあたしとは大違い」

「ヘレナは努力を隠したがりますが、早朝訓練の前に自主練をしていますし、仕事も他の方より努力しています。わたくしよりヘレナの方が真面目ではありませんか」

「早朝練習見られてたんだ。それも誰にも言ってないでしょう?」

「ええ、ヘレナはそう言ったことを隠したいと思いましたので」

「当たり、ホント今まであたしが出会った事ない人だよシルヴィアは。優しくて、真面目で、純粋で」

なんだかヘレナがとても思い詰めているように見えます。これは、放っておくとまずいですわ。

「……わたくし、なんの役にも立たないかも知れませんが、ヘレナの悩みを話すだけで楽になるなら、聞かせてくださいまし。もちろん、誰にも言いませんわ」

「団長にも?」

「ヘレナが望むなら」

「……じゃあ、ちょっとだけ聞いて貰おうかな」

「なんでもどうぞ。秘密は守ります。誰にも言いませんわ」

「あたしね、元娼婦なの」

ヘレナがとても辛そうに、教えてくれます。まさか、先程青くなったのは……。

「もしかして、今から調査に行くブラン娼館ですか?」

「当たり、他にもあたしの反応で気がついた人居るかも。軽蔑されるかな?」

「どうしてですの?」

「だって、身体売るなんて……」

「ヘレナには、娼婦をやる事情があったんでしょう? そして、経緯は分かりませんが騎士団の試験に受かる程に鍛錬をして、合格した。誇って良いと思いますわ」

「シルヴィア……そんなキッパリ言う?」

「騎士団の方は、過去に色々あった方も多いです。入団した時点で、過去の事を言うのはタブーですもの。きちんと素行調査もされて入団出来たのですから、誰も過去など気にしませんわ。わたくしだって、おバカな婚約者に振り回されて捨てましたもの」

「ははっ、そうだったね。あんま詳しく聞いた事ないけど、今度教えてよ」

「ええ! あんまり楽しい話ではありませんけど……」

「あたしも楽しい話じゃないけど、後でゆっくり聞いてくれる?」

「もちろんですわ!」

「シルヴィア!!!」

「レオン?」

「時間だ! 団長がキレてる!」

ままま、まずいですわ! まだ5分あるはずでしょう?!

そ、そうでした! 騎士団は5分前行動でしたわ!!!

「すぐ行きます! ヘレナ! ごめんなさい!」

「うん、ゆっくり待ってるから帰って来たら話聞いてね!」

「シルヴィア! 先にダッシュしてくれ! 多分5分は説教だから俺はちょっと休んで行く」

レオンは、ダッシュし過ぎて少し休憩が必要なようですね。先に走りますわ! なんとか、間に合って!

「シルヴィア、5分前行動だと言っただろう!」

間に合いませんでした。きっちり10分お説教されましたわ。

「……本当に、プライベートを持ちこまねぇんだな。さすが団長」

「ってか、俺らに対してより厳しくねぇか?」

「あぁ、シルヴィアも可哀想に」

待って下さいまし! わたくしに対してだけ厳しいのは如何がなものかと思いますわ!
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