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4. 執事は決意する
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「リリーお嬢様、大丈夫です。見張りは2名、隠密が3名おりましたが、全員眠らせました。あまり長時間は不審に思われますが、今は夜です。1時間程度なら少し居眠りをしたと思う程度で済みます。私の魔法なら、腫れた目もお顔もすぐに癒せます。……ですからどうか……今だけはご無理をなさらないで下さい……」
「どうして、フォッグがそんな顔をするの?」
「分かりません。でも、オレはお嬢様の笑顔が見たいんです」
「わたくし、笑っていなかったかしら?」
「いつも穏やかな笑みを浮かべていらっしゃいます。ですが……オレは心から笑ったお嬢様のお姿を拝見した事がありません」
「……心から……笑う……? そんなはしたない事、出来ないわ」
「大丈夫です。絶対にバレません。今この屋敷で起きているのは、お嬢様とオレだけです」
「……え?」
「見張り以外の者に見られても困ります。だから、魔力を広げて屋敷に居る者は全員眠って貰っています。あ、大丈夫です。立ったまま寝るし、誰も倒れたりしてねぇっすから。なんて言うか……時が止まってる感じですね。実際は寝てるだけっすけど」
リリーは、部屋の扉を開けた。メイドがシーツを持ったまま、立って眠っていた。
「フォッグ! なんて魔法使ってるのよ?! そんなに強力な魔法を使って貴方の身体は大丈夫なの?! 魔力は足りてるの?!」
初めて焦った表情を見せたリリーを見て、フォッグは顔をくしゃりと歪ませ笑った。
「お嬢様、なんでオレの心配をするんですか。今一番心配されなきゃいけないのはお嬢様です。魔力は充分足りてますし、なんなら王都の人間を全て眠らせられますよ。まぁ、それだと30分くらいしかもたないでしょうけど」
「ばっ……馬鹿じゃないの?! 王都の人間を全員眠らせるだなんて無茶よ! そんな事出来るのは……!」
リリーは、ハッとした表情を浮かべた。
「あー、さすがお嬢様ですね。そう、オレは魔族の血を引いてるんです。って言っても、先祖返りってヤツですけどね。両親は人間ですよ。顔も知りませんけど、そう聞いてます。オレの目、左右の色が違うんですよ。魔族の血を引く証らしいっすよ。いつもは魔法で隠してるんですけど、生まれたばかりなんて隠せないですからね。そのせいで捨てられたんです。最初は街のゴロツキに拾われて、ある程度の年になったら仕事をさせられました。それで捕まって……孤児院に入れられました。その頃には簡単な魔法は使えたんで、目は隠しておいたんですけど、まぁ所詮ガキなんで。上手く隠せなくてバレちまったんです。お嬢様が拾ってくれなければ、今頃どうなってたか……」
「そんな立派なものじゃないわ。だってわたくしは……」
「孤児なら拾って貰った恩を感じるだろうから、選んでみろ。でしたっけ?」
「そうよ! 結局お父様の言いなりになっただけ!」
「でも、オレを選んでくれたのはお嬢様です」
「違う……わたくしは……」
「違いませんよ。厄介払いしたかったジジイに勧められてましたけど、最後に決めたのはお嬢様です。お嬢様がオレを選んでくれたから、オレは救われた。あのままなら、近いうちに追い出されてたと思います。だから、オレは決めたんです。お嬢様を守ろうって」
「わたくしを……守る……?」
「はい。まずはお嬢様の心の平穏を守ろうと思いまして。今なら泣いても怒っても良いっすよ。なんなら、クソ旦那様の顔に落書きしましょうか? ちゃんと消しますから。ハゲる呪いとかどうっすか? ちょっとは、スッキリしませんかね?」
「顔に……落書き……?」
「あ、お嬢様はそんな事しませんよね。試しにちょっとオレにやってみてくださいよ! ちゃんと消すから安心して下さいね! スッキリするかもしれねぇっすよ。あ、あとは花瓶とか割っちゃいます? 魔法で修復しますよ! オレ、しょっちゅう孤児院で皿割ってたんで。皿割ると次回はメシ抜きになるから、こっそり魔法で直してました! だから修復魔法は自信があります!」
「お父様の顔に……落書き……あははっ! ははっ!」
その日、リリーは初めて心から笑った。
「お嬢様が今みたいに幸せそうに笑っていられるには、何をしたら良いですか? オレ、なんでもします! お嬢様の笑顔、すっげぇ可愛いです!」
「……へ? わ、わたくしが……可愛い?!」
真っ赤な顔をしたリリーを見て、やっぱりお嬢様は可愛いと思った。それが、フォッグの初恋の始まりだった。
「どうして、フォッグがそんな顔をするの?」
「分かりません。でも、オレはお嬢様の笑顔が見たいんです」
「わたくし、笑っていなかったかしら?」
「いつも穏やかな笑みを浮かべていらっしゃいます。ですが……オレは心から笑ったお嬢様のお姿を拝見した事がありません」
「……心から……笑う……? そんなはしたない事、出来ないわ」
「大丈夫です。絶対にバレません。今この屋敷で起きているのは、お嬢様とオレだけです」
「……え?」
「見張り以外の者に見られても困ります。だから、魔力を広げて屋敷に居る者は全員眠って貰っています。あ、大丈夫です。立ったまま寝るし、誰も倒れたりしてねぇっすから。なんて言うか……時が止まってる感じですね。実際は寝てるだけっすけど」
リリーは、部屋の扉を開けた。メイドがシーツを持ったまま、立って眠っていた。
「フォッグ! なんて魔法使ってるのよ?! そんなに強力な魔法を使って貴方の身体は大丈夫なの?! 魔力は足りてるの?!」
初めて焦った表情を見せたリリーを見て、フォッグは顔をくしゃりと歪ませ笑った。
「お嬢様、なんでオレの心配をするんですか。今一番心配されなきゃいけないのはお嬢様です。魔力は充分足りてますし、なんなら王都の人間を全て眠らせられますよ。まぁ、それだと30分くらいしかもたないでしょうけど」
「ばっ……馬鹿じゃないの?! 王都の人間を全員眠らせるだなんて無茶よ! そんな事出来るのは……!」
リリーは、ハッとした表情を浮かべた。
「あー、さすがお嬢様ですね。そう、オレは魔族の血を引いてるんです。って言っても、先祖返りってヤツですけどね。両親は人間ですよ。顔も知りませんけど、そう聞いてます。オレの目、左右の色が違うんですよ。魔族の血を引く証らしいっすよ。いつもは魔法で隠してるんですけど、生まれたばかりなんて隠せないですからね。そのせいで捨てられたんです。最初は街のゴロツキに拾われて、ある程度の年になったら仕事をさせられました。それで捕まって……孤児院に入れられました。その頃には簡単な魔法は使えたんで、目は隠しておいたんですけど、まぁ所詮ガキなんで。上手く隠せなくてバレちまったんです。お嬢様が拾ってくれなければ、今頃どうなってたか……」
「そんな立派なものじゃないわ。だってわたくしは……」
「孤児なら拾って貰った恩を感じるだろうから、選んでみろ。でしたっけ?」
「そうよ! 結局お父様の言いなりになっただけ!」
「でも、オレを選んでくれたのはお嬢様です」
「違う……わたくしは……」
「違いませんよ。厄介払いしたかったジジイに勧められてましたけど、最後に決めたのはお嬢様です。お嬢様がオレを選んでくれたから、オレは救われた。あのままなら、近いうちに追い出されてたと思います。だから、オレは決めたんです。お嬢様を守ろうって」
「わたくしを……守る……?」
「はい。まずはお嬢様の心の平穏を守ろうと思いまして。今なら泣いても怒っても良いっすよ。なんなら、クソ旦那様の顔に落書きしましょうか? ちゃんと消しますから。ハゲる呪いとかどうっすか? ちょっとは、スッキリしませんかね?」
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「お父様の顔に……落書き……あははっ! ははっ!」
その日、リリーは初めて心から笑った。
「お嬢様が今みたいに幸せそうに笑っていられるには、何をしたら良いですか? オレ、なんでもします! お嬢様の笑顔、すっげぇ可愛いです!」
「……へ? わ、わたくしが……可愛い?!」
真っ赤な顔をしたリリーを見て、やっぱりお嬢様は可愛いと思った。それが、フォッグの初恋の始まりだった。
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