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13.婚姻
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「なぁリリー、余裕ないみたいで悪いんだけど……今すぐオレと結婚してくれねぇか?」
「喜んで。わたくし、フォッグと夫婦になれるのね。こんなに幸せな結婚が出来るなんて思わなかったわ。フォッグ、愛してるわ」
「オレもリリーを愛してる。早速届けを出そうぜ!」
フォッグがベルを鳴らすと、リリーも見覚えのある侍女が現れた。
「え……! なんで?! レナは1ヶ月前に辞めたんじゃ……?」
「使用人の中で、見込みのあるヤツはオレが雇ったんだ。リリーだって、知らない国で知らないヤツに世話されたくねぇだろ? レナはリリーの侍女だったし、監視さえなきゃもっとリリーの世話をしたいってよくぼやいてたからな。リリーも、なんだかんだでレナは信用してただろ?」
「そうね。城に連れて行くくらいは信用してたわ。けど、監視されてたしあまり話せなかったし、突然辞めてしまったからやっぱりレナもわたくしの事を嫌いなんだと思っていたの」
「フォッグ、説明しといてくれるって言ったじゃないの! お嬢様、誤解しないで下さいね! 私はお嬢様が大好きですよ。お嬢様の担当で、ラッキーだって思ってましたから! ただその……お嬢様は常に王家に監視されていましたから……侍女と仲良く話すとお嬢様が王妃様に……叱られるので……」
レナは、青い顔で震え出した。
「どういう事だ。叱られるって怯え方じゃねぇぞ」
「あ……そうか! レナはわたくしが王妃様に叱られてるのを見たのね! フォッグが来る少し前からレナが冷たくなったのは、わたくしの為だったのね。レナ、気が付かなくて、ごめんなさい」
「私はフォッグみたいにお嬢様を守る力はありませんでした。あの日だって、必死で仕事をするお嬢様のお側に行く事すら出来ませんでした。私が余計な事をすれば……またお嬢様が酷い目にあうと思って……。城で働くお嬢様に、食事や飲み物すら用意出来なくて……だけど、フォッグが来るようになってからはお嬢様は王妃様に叱られなくなって、私も、お世話を許されるようになって嬉しかったです。これからは監視に怯えずに心置きなくお嬢様にお仕え出来ます! しかも、前よりお給金は良いんですよっ! 嫌な上司も居ないし、最高です! だから、これからもよろしくお願いしますね! お嬢様に似合いそうなドレスをたくさんご用意したんです。面倒なしがらみもありませんし、いーっぱいおしゃれしましょうねっ!」
「え……レナってこんなに明るいの?!」
「そうですよ。本当はお嬢様ともっと話したかったんですけど、我慢してました。これからはいっぱいお話ししましょうね!」
「こんな感じで、リリーに好意的で、国に未練がないヤツらは何人か連れて来てる。料理人も居るから、前と似たようなモノは食べられる。城で食べるような豪華な食事じゃねえけど、美味いぜ。使用人を雇っても大丈夫なくらいは稼いでるから安心してくれ」
「新しいご主人様は気前が良いんで嬉しいです! お嬢様も、いっぱいおねだりしちゃいましょ!」
「お、おねだり?!」
「そうですよー! お嬢様がちょっと甘えれば、何でも買ってくれますよ」
「とりあえず、リリーはコレに署名な。あ、魔力も込めてくれ。そしたらなんでも買ってやるよ」
ポカンとしているリリーは、フォッグの勧めるままに婚姻届に署名し、魔力を込めると書類が光り輝き消えていった。届出が認められた証だ。
魔法が発達しているこの国は、婚姻すると夫婦の手の甲に同じ模様が入る。模様はひとつとして同じものはなく、普段は見えないが魔力を込めると現れ、夫婦が手を繋げば模様が光る。
フォッグの説明を聞いて、模様が光るのを確認するとリリーは無邪気にはしゃぎ始めた。
「よし、これでリリーの夫はオレだから」
「嬉しいわ! フォッグ、大好き!」
「きゃー! お嬢様可愛いっ!」
「あ、そうだ。リリー、その服脱いでくれ。あっちで手に入れたモノは何ひとつ置いておきたくない。リリーがその服を気に入ってるなら残すけど……」
「要らないわ。確かに、盗んだとか言われたら癪だものね。着替えが用意してあるなら脱ぐわ。アクセサリーも、要らないし」
「だよな。なぁ、レナに用意してもらったけどモノが足りてるか分らねぇんだ。クローゼットを確認してくれるか? 特にその……下着とかさ。オレ、ちょっとレナと今後の話をしておくから」
「了解。確認してくるわね」
リリーがクローゼットに入ると、フォッグは小声でレナに聞いた。
「王妃は、リリーに何をしたんだ?」
「……躾と言ってましたけど、あれは……」
カタカタと震え出したレナの様子を見て、フォッグはそれ以上聞くのをやめた。
「まぁいい。どうせ、壊すんだから。リリーには絶対バレないようにしろ」
「分かってますよ。私はお嬢様が幸せに笑ってるならそれでいい。あんなに嬉しそうなお嬢様を見るのは初めてです。最初は疑ったけど、ここに来て良かった。今はもう、あんな国なくなっちゃえば良いと思ってます。血が流れるのはお嬢様も嫌がるでしょうから、穏便に上だけ挿げ変わりませんかねぇ」
「気が合うな。オレも同じ気持ちだ。だがオレは穏便じゃなくても良いと思ってる。レナみたいにマトモなやつらはともかく、あとは知らん」
「喜んで。わたくし、フォッグと夫婦になれるのね。こんなに幸せな結婚が出来るなんて思わなかったわ。フォッグ、愛してるわ」
「オレもリリーを愛してる。早速届けを出そうぜ!」
フォッグがベルを鳴らすと、リリーも見覚えのある侍女が現れた。
「え……! なんで?! レナは1ヶ月前に辞めたんじゃ……?」
「使用人の中で、見込みのあるヤツはオレが雇ったんだ。リリーだって、知らない国で知らないヤツに世話されたくねぇだろ? レナはリリーの侍女だったし、監視さえなきゃもっとリリーの世話をしたいってよくぼやいてたからな。リリーも、なんだかんだでレナは信用してただろ?」
「そうね。城に連れて行くくらいは信用してたわ。けど、監視されてたしあまり話せなかったし、突然辞めてしまったからやっぱりレナもわたくしの事を嫌いなんだと思っていたの」
「フォッグ、説明しといてくれるって言ったじゃないの! お嬢様、誤解しないで下さいね! 私はお嬢様が大好きですよ。お嬢様の担当で、ラッキーだって思ってましたから! ただその……お嬢様は常に王家に監視されていましたから……侍女と仲良く話すとお嬢様が王妃様に……叱られるので……」
レナは、青い顔で震え出した。
「どういう事だ。叱られるって怯え方じゃねぇぞ」
「あ……そうか! レナはわたくしが王妃様に叱られてるのを見たのね! フォッグが来る少し前からレナが冷たくなったのは、わたくしの為だったのね。レナ、気が付かなくて、ごめんなさい」
「私はフォッグみたいにお嬢様を守る力はありませんでした。あの日だって、必死で仕事をするお嬢様のお側に行く事すら出来ませんでした。私が余計な事をすれば……またお嬢様が酷い目にあうと思って……。城で働くお嬢様に、食事や飲み物すら用意出来なくて……だけど、フォッグが来るようになってからはお嬢様は王妃様に叱られなくなって、私も、お世話を許されるようになって嬉しかったです。これからは監視に怯えずに心置きなくお嬢様にお仕え出来ます! しかも、前よりお給金は良いんですよっ! 嫌な上司も居ないし、最高です! だから、これからもよろしくお願いしますね! お嬢様に似合いそうなドレスをたくさんご用意したんです。面倒なしがらみもありませんし、いーっぱいおしゃれしましょうねっ!」
「え……レナってこんなに明るいの?!」
「そうですよ。本当はお嬢様ともっと話したかったんですけど、我慢してました。これからはいっぱいお話ししましょうね!」
「こんな感じで、リリーに好意的で、国に未練がないヤツらは何人か連れて来てる。料理人も居るから、前と似たようなモノは食べられる。城で食べるような豪華な食事じゃねえけど、美味いぜ。使用人を雇っても大丈夫なくらいは稼いでるから安心してくれ」
「新しいご主人様は気前が良いんで嬉しいです! お嬢様も、いっぱいおねだりしちゃいましょ!」
「お、おねだり?!」
「そうですよー! お嬢様がちょっと甘えれば、何でも買ってくれますよ」
「とりあえず、リリーはコレに署名な。あ、魔力も込めてくれ。そしたらなんでも買ってやるよ」
ポカンとしているリリーは、フォッグの勧めるままに婚姻届に署名し、魔力を込めると書類が光り輝き消えていった。届出が認められた証だ。
魔法が発達しているこの国は、婚姻すると夫婦の手の甲に同じ模様が入る。模様はひとつとして同じものはなく、普段は見えないが魔力を込めると現れ、夫婦が手を繋げば模様が光る。
フォッグの説明を聞いて、模様が光るのを確認するとリリーは無邪気にはしゃぎ始めた。
「よし、これでリリーの夫はオレだから」
「嬉しいわ! フォッグ、大好き!」
「きゃー! お嬢様可愛いっ!」
「あ、そうだ。リリー、その服脱いでくれ。あっちで手に入れたモノは何ひとつ置いておきたくない。リリーがその服を気に入ってるなら残すけど……」
「要らないわ。確かに、盗んだとか言われたら癪だものね。着替えが用意してあるなら脱ぐわ。アクセサリーも、要らないし」
「だよな。なぁ、レナに用意してもらったけどモノが足りてるか分らねぇんだ。クローゼットを確認してくれるか? 特にその……下着とかさ。オレ、ちょっとレナと今後の話をしておくから」
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「分かってますよ。私はお嬢様が幸せに笑ってるならそれでいい。あんなに嬉しそうなお嬢様を見るのは初めてです。最初は疑ったけど、ここに来て良かった。今はもう、あんな国なくなっちゃえば良いと思ってます。血が流れるのはお嬢様も嫌がるでしょうから、穏便に上だけ挿げ変わりませんかねぇ」
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