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14. 2人の人形 ☆
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「どうして……どうしてわたくしが平民になるの? リリー……リリーは何処に行ったの?」
「リリーお嬢様は、家出なさいました」
フォッグが解雇された事も知らず、いつものように使用人として扱い、リリーの行方を必死で探す姿は滑稽だとフォッグは思った。
「どうして?! 親を捨てるなんて許さないわ!」
「王太子殿下の命令で、国外追放だそうですよ」
「じゃあ、わたくしが平民になるのも、リリーのせいなのねっ!」
支離滅裂な母親の言葉に、フォッグの言葉がキツくなっていく。
「いいえ、我儘娘を制御できなかった奥様の責任です。王太子を唆して、婚約破棄させたのはあなたの娘ですよ」
「やっぱりリリーのせいじゃないの! リリーはわたくしの娘よ!」
「リリーお嬢様を娘と呼びますか? リリーお嬢様はもう奥様の娘ではありません。奥様も笑いながら離縁状を叩きつけていたではありませんか。わざわざ脅す為に魔法契約までしましたよね?」
「あれは、ちゃんと処分していたじゃない!」
「すり替えてたんですよ。魔法契約ですから、リリーお嬢様の絶縁は覆りません。良かったですね。奥様は、リリーお嬢様を捨てようとしたのでしょう? 親戚にも、リリーお嬢様がお付き合いしていた方々にも、全てお知らせしてありますよ。平民になってしまった奥様の味方は居ないしでしょうし、頼る所はありませんよ。奥様のご実家から、絶縁するとの知らせも届きました。おめでとうございます」
「めでたくない! ふざけるな! リリーは何処よ!」
「リリーお嬢様は、二度とこちらに戻る事はありません。持ち物は全てお部屋に残っておりますから、勝手に処分して下さい。これは、国外追放された時に着ていたドレスとアクセサリーです。お嬢様のご希望で、お返しに参りました」
フォッグの差し出したドレスとアクセサリーを投げ捨て、叫び声を上げる。彼女は、自分の事しか考えていない。リリーを探すのも、自分の為だ。
「リリーは何処にいるんだ?! フォッグがリリーを見張ると言ったじゃないか! すぐに連れて来い! 拾って貰った恩を忘れたのか?!」
「あんなの、リリーお嬢様のお側に居る為の嘘に決まってるでしょう。私を拾って下さったのはリリーお嬢様です。奥様に恩などありません。恨みなら大量にありますけどね。ああそうだ、旦那様は既に愛人と逃げました。使用人達も、逃走しましたよ。もうすぐ王家の使いが来ますからね。平民にするだけじゃ足りなかったみたいです。色々な罪を被せるスケープゴートにでもしたいんじゃないですか?」
「……は……? な、なんで……?!」
「王妃の残酷な所業が公開されてたの、見ましたよね? このままじゃまずいですからね。奥様と王妃は顔も背格好も似てますから、なんとか王家の威信を守りたい国王は、奥様のせいにするつもりだそうです。実はアレは王妃じゃなかった、リリーの母親は悪魔だって言うつもりみたいです。その為なら、奥様以外は殺しても良いから奥様を連れて来いって命令してました。旦那様にお伝えしたらすぐ逃げましたよ。奥様を放置してね。使用人も同じです」
「なっ……! あんな事わたくしが出来る訳ないでしょ! あのドS王妃め! 今まで通りリリーだけを玩具にしていれば良いものを……! リリーを連れて来い! リリーを差し出して、わたくしは逃げるから!!!」
その瞬間、怒ったフォッグの瞳が光り輝いた。
リリーの母親は恐怖で気を失った。
リリーの部屋に荷物を置き、屋敷の鍵を全て開けると、玄関先に気絶した母親を放り投げてフォッグは消えた。
見たいものだけ見てきた夫婦は、片方は逃亡先で全てを奪われて路地に打ち捨てられた。愛人だと思っていた女は、男の持つ金しか興味がなかった。
片方は娘が受けた仕打ちを可愛がっていた妹と共に受けている。
王妃は罪をリリーの母親になすりつけ、実の母親がこんな酷い事をしていたなんて知らなかった。可哀想なリリーと涙を流した。リリーを探してくれと涙ながらに訴えた。王妃の嘘に半数以上の貴族が気が付いていたが、誰も口には出さなかった。
王太子に群がる令嬢は居なくなり、適齢期の貴族令嬢は急いで嫁ぎ先を見つけ始めた。婚約を打診する前に目星をつけた令嬢が結婚してしまうので、王太子の婚約者は見つかっていない。
純愛をアピールして婚約した筈の女性は、言葉を交わせないお人形になってしまった。王太子は、必死で母親から逃げている。
仕事をせず母から逃げる王太子。
目の前の事で精一杯の国王。
僅かに残っていた優秀な者は国に見切りをつけ、次々と国外に出た。
国王は焦り、王妃はストレスを新しいお人形で発散した。悍ましい道具が増えて、2人になったお人形の泣き叫ぶ声が王妃の部屋に響き渡った。
リリーの受けた仕打ちを知っていたのに、王妃にもっと厳しくしても構わないと言ったのは母親だった。
フォッグがそれを知っていれば、こんなものでは済まなかっただろう。
フォッグは、リリーの母親や妹を長く苦しめるつもりはなかった。少し、リリーの苦しみを味わえば良いと思っただけだ。
王家がこのまま安泰になる事はない。国王も王太子も、フォッグが残した物に気が付いていない。だから2人はそのうち助けて貰えるだろうと思っていた。
しかし、リリーと違い我儘放題だった2人は脆く、つまらなくなった王妃に捨てられた。
娘を拷問した母親と、姉を貶めた妹だと国中に顔が知られた2人の生活は……今までのように楽ではなかった。彼女達の行方を知る者は居ない。
「リリーお嬢様は、家出なさいました」
フォッグが解雇された事も知らず、いつものように使用人として扱い、リリーの行方を必死で探す姿は滑稽だとフォッグは思った。
「どうして?! 親を捨てるなんて許さないわ!」
「王太子殿下の命令で、国外追放だそうですよ」
「じゃあ、わたくしが平民になるのも、リリーのせいなのねっ!」
支離滅裂な母親の言葉に、フォッグの言葉がキツくなっていく。
「いいえ、我儘娘を制御できなかった奥様の責任です。王太子を唆して、婚約破棄させたのはあなたの娘ですよ」
「やっぱりリリーのせいじゃないの! リリーはわたくしの娘よ!」
「リリーお嬢様を娘と呼びますか? リリーお嬢様はもう奥様の娘ではありません。奥様も笑いながら離縁状を叩きつけていたではありませんか。わざわざ脅す為に魔法契約までしましたよね?」
「あれは、ちゃんと処分していたじゃない!」
「すり替えてたんですよ。魔法契約ですから、リリーお嬢様の絶縁は覆りません。良かったですね。奥様は、リリーお嬢様を捨てようとしたのでしょう? 親戚にも、リリーお嬢様がお付き合いしていた方々にも、全てお知らせしてありますよ。平民になってしまった奥様の味方は居ないしでしょうし、頼る所はありませんよ。奥様のご実家から、絶縁するとの知らせも届きました。おめでとうございます」
「めでたくない! ふざけるな! リリーは何処よ!」
「リリーお嬢様は、二度とこちらに戻る事はありません。持ち物は全てお部屋に残っておりますから、勝手に処分して下さい。これは、国外追放された時に着ていたドレスとアクセサリーです。お嬢様のご希望で、お返しに参りました」
フォッグの差し出したドレスとアクセサリーを投げ捨て、叫び声を上げる。彼女は、自分の事しか考えていない。リリーを探すのも、自分の為だ。
「リリーは何処にいるんだ?! フォッグがリリーを見張ると言ったじゃないか! すぐに連れて来い! 拾って貰った恩を忘れたのか?!」
「あんなの、リリーお嬢様のお側に居る為の嘘に決まってるでしょう。私を拾って下さったのはリリーお嬢様です。奥様に恩などありません。恨みなら大量にありますけどね。ああそうだ、旦那様は既に愛人と逃げました。使用人達も、逃走しましたよ。もうすぐ王家の使いが来ますからね。平民にするだけじゃ足りなかったみたいです。色々な罪を被せるスケープゴートにでもしたいんじゃないですか?」
「……は……? な、なんで……?!」
「王妃の残酷な所業が公開されてたの、見ましたよね? このままじゃまずいですからね。奥様と王妃は顔も背格好も似てますから、なんとか王家の威信を守りたい国王は、奥様のせいにするつもりだそうです。実はアレは王妃じゃなかった、リリーの母親は悪魔だって言うつもりみたいです。その為なら、奥様以外は殺しても良いから奥様を連れて来いって命令してました。旦那様にお伝えしたらすぐ逃げましたよ。奥様を放置してね。使用人も同じです」
「なっ……! あんな事わたくしが出来る訳ないでしょ! あのドS王妃め! 今まで通りリリーだけを玩具にしていれば良いものを……! リリーを連れて来い! リリーを差し出して、わたくしは逃げるから!!!」
その瞬間、怒ったフォッグの瞳が光り輝いた。
リリーの母親は恐怖で気を失った。
リリーの部屋に荷物を置き、屋敷の鍵を全て開けると、玄関先に気絶した母親を放り投げてフォッグは消えた。
見たいものだけ見てきた夫婦は、片方は逃亡先で全てを奪われて路地に打ち捨てられた。愛人だと思っていた女は、男の持つ金しか興味がなかった。
片方は娘が受けた仕打ちを可愛がっていた妹と共に受けている。
王妃は罪をリリーの母親になすりつけ、実の母親がこんな酷い事をしていたなんて知らなかった。可哀想なリリーと涙を流した。リリーを探してくれと涙ながらに訴えた。王妃の嘘に半数以上の貴族が気が付いていたが、誰も口には出さなかった。
王太子に群がる令嬢は居なくなり、適齢期の貴族令嬢は急いで嫁ぎ先を見つけ始めた。婚約を打診する前に目星をつけた令嬢が結婚してしまうので、王太子の婚約者は見つかっていない。
純愛をアピールして婚約した筈の女性は、言葉を交わせないお人形になってしまった。王太子は、必死で母親から逃げている。
仕事をせず母から逃げる王太子。
目の前の事で精一杯の国王。
僅かに残っていた優秀な者は国に見切りをつけ、次々と国外に出た。
国王は焦り、王妃はストレスを新しいお人形で発散した。悍ましい道具が増えて、2人になったお人形の泣き叫ぶ声が王妃の部屋に響き渡った。
リリーの受けた仕打ちを知っていたのに、王妃にもっと厳しくしても構わないと言ったのは母親だった。
フォッグがそれを知っていれば、こんなものでは済まなかっただろう。
フォッグは、リリーの母親や妹を長く苦しめるつもりはなかった。少し、リリーの苦しみを味わえば良いと思っただけだ。
王家がこのまま安泰になる事はない。国王も王太子も、フォッグが残した物に気が付いていない。だから2人はそのうち助けて貰えるだろうと思っていた。
しかし、リリーと違い我儘放題だった2人は脆く、つまらなくなった王妃に捨てられた。
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