婚約破棄されたから、執事と家出いたします

編端みどり

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15. 終わり ☆

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それは、突然だった。城に侵略者が現れたのだ。

「だ、誰だ?!」

国王は叫んだ。

「使者を送っただろ。期限までに説明がなかったから、宣戦布告に来た」

国王の前には、武装した屈強な男と大量の兵士達。

明らかに兵力が違う。
負けは確実だった。

「待ってくれ! 説明とはなんだ?! 聞いてない! 聞いてないんだ!!!」

「知るかよ。書類がこの城にあるのは確実だぜ。追跡魔法をかけてあるからな。城にあるんだからあとはそっちの問題だろ」

「……申し訳ない。すぐに調べるので、お待ち頂けないだろうか?」

「30分だけやる。追跡魔法のマーカーも教えてやる。だから早くしろ」

書類は、王太子の部屋で見つかった。

「王太子の部屋にあるんなら知ってて当然だよな? 流石に知らないってのはなしだぜ」

「……仰る通りです。だが、恥ずかしながら我が息子は無能でして……1ヶ月前から仕事を放棄して逃げ出しておるのです」

「そんなの言い訳になるかよ! そこに書かれてる通り、今すぐ我が国の魔法使い達を監禁した理由を説明しろ!」

「我々は、魔法使いを監禁などしておりません!」

「へぇ……堂々と嘘を吐くのか。もういい、交渉は決裂だ」

「お待ち下さい! 本当に知らないのです!!! 犯罪者とは、違うのでしょう? 我々は、人間を監禁などしていない!」

「……まさか……魔族の血を引く奴は人間じゃねぇなんて、言わねえよな?」

「当然でしょう? 彼等は人間ではない。我々の便利な道具、家畜だ」

その瞬間、国王の首が飛んだ。

辺りは騒然となり、たくさんの者達が逃げ出した。誰も国王に寄り添う事はなかった。

国王を切り捨てた男は、遺体を足で踏みつけた。

「テメェが家畜と呼んだうちの1人は、俺の大事な妻だ。散々傷つけられて、今でも夜中に飛び起きるんだ。……くっそ、フォッグに出来るだけ苦しめてくれって頼まれてたのに、腹が立ちすぎて楽な死に方をさせちまった。おい、王妃を捕らえろ。今度こそフォッグの願いを叶えなくては」

王妃は、リリーに行った所業が自らに課せられると醜く泣き叫んだ。だが、許される事はなく、繰り返し責め苦を受けている。期間は、リリーが苦しんだ10年。

逃げ出した王太子は間もなく捕らえられ、母と同じ刑罰か処刑かを選ばされた。

処刑を選んだ王太子は公開処刑され、国は終わりを迎えた。

魔族の血を引く者を捕らえ、監禁していた事実は重く受け止められ、侵略は正当化された。魔法を正しく使うにはある程度の教育が必要。魔族の血を引いていればフォッグのように迫害されるので、魔法をしっかり使える者は少ない。城に捕らえられていた者達は、他国の貴族が多数含まれていたのだ。だが、国王は話も聞かずに魔族の血を引いているというだけで捕らえ、監禁し、利用した。

知らなかったんだと叫ぶ国王は、もうこの世に存在しない。

新しい国王は、善政を敷いた。ただし、魔族の血を引く者の迫害は厳しく禁じた。

リリーを悪女と呼んだ者の中には、差別意識が強い者も多く、新しい法律を受け入れられず罰せられた者も多く居たそうだ。

だが、人は慣れる。

いつの間にか、魔族の血を引いていてもいなくても関係なく、人々は手を取り合うようになった。

フォッグのような子どもが産まれても、親は気にせず可愛がる。

市民達は、過去に統治していた者達の事など忘れて平穏に暮らしている。
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