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16. 始まり
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「フォッグ! 見て見て! 今日はね、レナとお買い物に行ったの! 好きな物を買うなんて初めてでとっても楽しかったわ。これ、良かったら受け取ってくれる? この間、刺繍を売ったお金で買ったの。いつもありがとう。わたくし、もっと色々やってみるわ。自分の物くらい自分で稼いだお金で買いたいもの」
「……オレの妻が可愛すぎる。リリーは生きてるだけで価値があるんだから、無理して働かなくて良いんだぞ。リリーの刺繍は貴重なんだから、売るなんて勿体無いし……」
「旦那様は奥様の希望が最優先だと仰ったじゃありませんか。私だって、初めての給与で買った化粧水は無くなっても瓶を大事にしておりましたもの。奥様は、初めて稼いだお金で旦那様の物を買いたかったんですよ。旦那様がマカロンをご用意したのと同じように」
「あれは、本当に美味しかったわ。フォッグが綺麗なお皿に入れて持って来てくれたの」
「これだろ?」
「そう! これよ! どうしてここにあるの?」
「このお皿、旦那様が執事になった時にご自分のお給金で買われたそうですよ。1ヶ月分の給金を全部注ぎ込んだんですって」
「高いお皿だとは思っていたけど……フォッグが自分で買った物だったの?!」
「そうですよ。しかも、マカロンも大量に買ってきて私達に味見させたんですから! どれが美味しいかって必死で聞くから、誰か好きな子でもできたのかなってみんなで噂してました。まさかお相手がリリーお嬢様だとは思いませんでした! ああもう! 素敵過ぎますー!」
「レナ……ちょっと黙ろうか」
「はぁーい。お邪魔でしょうしお掃除でもして来ますね。ま、旦那様の魔法のおかげで、掃除も洗濯も必要無いんですけど。おかげで、お嬢様を着飾る事が私のメインの仕事です。最高ですよ!」
そう言って、レナは部屋を出て行った。
「あのね、フォッグに似合うと思って買ったの。あんまり高い物は買えなかったから、お仕事で使えそうなペンにしたんだけど、どうかしら?」
「一生大事にする」
「あ、あれ……なんで泣いてるの?! レナ、レナぁ! フォッグが泣いてるの!」
慌ててレナを呼ぼうとしたリリーだが、部屋を出る事は叶わなかった。大好きな夫に抱き締められて、動けなくなってしまったからだ。
「リリー……愛してる」
「わたくしも、フォッグを愛してるわ。これからもよろしくね。大好きな旦那様」
もうリリーお嬢様が悲しむ事はない。
いつも凛とされていたけど、どこか寂しそうだったリリーお嬢様。
冷たい婚約者や両親。
恐ろしい王妃や、利用する事しか考えていない国王。全てを奪おうとする愚かな女達。
私は何も出来なかった。だけど、フォッグがリリーお嬢様の執事になってからは明らかにお嬢様は元気になられた。いっそ2人で逃げれば良いのに。そう思っていたら、フォッグは上手にお嬢様を手に入れた。
自分勝手な者達は相応しい罰を受け、新たな道を歩んだ2人は穏やかな暮らしを営んでいる。
私は祈る。
どうか、幸せになったリリーお嬢様のお側にずっといれますように。
end
「……オレの妻が可愛すぎる。リリーは生きてるだけで価値があるんだから、無理して働かなくて良いんだぞ。リリーの刺繍は貴重なんだから、売るなんて勿体無いし……」
「旦那様は奥様の希望が最優先だと仰ったじゃありませんか。私だって、初めての給与で買った化粧水は無くなっても瓶を大事にしておりましたもの。奥様は、初めて稼いだお金で旦那様の物を買いたかったんですよ。旦那様がマカロンをご用意したのと同じように」
「あれは、本当に美味しかったわ。フォッグが綺麗なお皿に入れて持って来てくれたの」
「これだろ?」
「そう! これよ! どうしてここにあるの?」
「このお皿、旦那様が執事になった時にご自分のお給金で買われたそうですよ。1ヶ月分の給金を全部注ぎ込んだんですって」
「高いお皿だとは思っていたけど……フォッグが自分で買った物だったの?!」
「そうですよ。しかも、マカロンも大量に買ってきて私達に味見させたんですから! どれが美味しいかって必死で聞くから、誰か好きな子でもできたのかなってみんなで噂してました。まさかお相手がリリーお嬢様だとは思いませんでした! ああもう! 素敵過ぎますー!」
「レナ……ちょっと黙ろうか」
「はぁーい。お邪魔でしょうしお掃除でもして来ますね。ま、旦那様の魔法のおかげで、掃除も洗濯も必要無いんですけど。おかげで、お嬢様を着飾る事が私のメインの仕事です。最高ですよ!」
そう言って、レナは部屋を出て行った。
「あのね、フォッグに似合うと思って買ったの。あんまり高い物は買えなかったから、お仕事で使えそうなペンにしたんだけど、どうかしら?」
「一生大事にする」
「あ、あれ……なんで泣いてるの?! レナ、レナぁ! フォッグが泣いてるの!」
慌ててレナを呼ぼうとしたリリーだが、部屋を出る事は叶わなかった。大好きな夫に抱き締められて、動けなくなってしまったからだ。
「リリー……愛してる」
「わたくしも、フォッグを愛してるわ。これからもよろしくね。大好きな旦那様」
もうリリーお嬢様が悲しむ事はない。
いつも凛とされていたけど、どこか寂しそうだったリリーお嬢様。
冷たい婚約者や両親。
恐ろしい王妃や、利用する事しか考えていない国王。全てを奪おうとする愚かな女達。
私は何も出来なかった。だけど、フォッグがリリーお嬢様の執事になってからは明らかにお嬢様は元気になられた。いっそ2人で逃げれば良いのに。そう思っていたら、フォッグは上手にお嬢様を手に入れた。
自分勝手な者達は相応しい罰を受け、新たな道を歩んだ2人は穏やかな暮らしを営んでいる。
私は祈る。
どうか、幸せになったリリーお嬢様のお側にずっといれますように。
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