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改稿版
6.不安
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「んじゃ、これで仕事終了だな。弾んでくれてありがとよ。エルザ、暇だし冒険者の登録教えてやるよ。ギルドまで案内する」
「本当ですか?! ありがとうございます!」
「んじゃ、またよろしくな」
「はい、急ぎでしたので本当に助かりました。エルザ様、宿が決まったら教えて下さい」
「宿ですか?」
商会にしばらく留まらないかと誘われましたが、申し訳ないのでお断りしたのです。嫌な予感もしましたしね。
「ああ、なら先に宿に行くか。案内してやるよ。だから、約束の本見せてくれよな」
「分かりました。それではまた」
「必ず! 必ず連絡を下さいよ!」
なんでしょうか? なんだか違和感を感じます。マックス様も先程とは違い、なんだか険しい表情をされているような……?
「先に宿に行こう。ギルドは後だ」
「はい。よろしくお願いします。マックス様。ああ、違った。うん。よろしく」
「急には無理だよな。無理しなくて良いぜ。けどよ、俺に様を付けるのはやめてくれよ。なんかむず痒いんだよ」
「分かったわ。マックス、色々ありがとう」
「お代は貰うから安心しな」
「え! いくら?」
「金じゃねぇよ。エルザが見せてくれるって言ってた魔法の本がお代だ。なかなか手に入らなくてな。読めるのが楽しみだぜ」
「いくらでも読んで。なんならあげるけど?」
「それは勿体ないからやめとけ。魔力がなくても魔法の本には利用価値がある。後で宿に着いたら教えてやるよ」
そう言って、マックスは宿に案内してくれました。
「ここは値段はそこそこだし、メシも美味い。今日はもう終わっちまったから後でどっかから調達して来よう。何より部屋に鍵がかかるのが良い」
「部屋に鍵がないってあり得るの?!」
「普通にある。特に安宿は鍵なんてない。慣れないうちは、冒険者ギルドで鍵のつく宿を紹介して貰うと良い。ギルド紹介の宿なら安心だ。あとは、街ごとに定宿を決めると楽だな。慣れた場所は疲れも取れるしな」
「そっか、冒険者はひとつの街に留まるなんて事ないものね」
マックスも今日はここに泊まるそうです。部屋は隣です。私は一泊分の料金を払いました。思いの外安かったし、連泊すれば割引があると聞いたので何泊かしようと思いましたが、マックスに止められたのです。
約束の本を見せる為、私の部屋に来ています。男女で2人きりなんて、部屋のドアを開けるのが基本だと思っておりましたが、マックスはさっさと部屋の鍵を閉めてしまわれました。
「まぁ、街から出ない冒険者も居るけどな。ただ……」
部屋に入った途端マックスが急に小声になりました。
「エルザは、この街に定住すんのはやめた方が良い」
「どうして?」
「あの商会はエルザの居場所を把握したがってる。宿まで尾行されてた。好意的に考えれば、お得意様の妹であるエルザを心配してるって位だろうけど、俺にはそんな理由だとは思えねぇ」
「……そうですか。仕方ありませんね」
「驚かねぇんだな?」
「商会に泊まるよう勧めてきたし怪しいとは思ってたわ。商会の方は、お姉様の紹介状があって、今のところ問題がないから手を貸してくれただけ。王家や公爵家が私を探し始めたら、すぐ情報を売るだろうとは思ってましたわ」
「なんだ、結構しっかりしてんだな。悪い、エルザの事舐めてたわ」
「舐めて当然よ。敬語はまだ出ちゃうし、商会の事も疑ってはいたけどどう対処して良いか分からなくて困ったしね。尾行も気がつかなかったわ。教えてくれてありがとう」
「言葉はそのうち慣れる。尾行は訓練すりゃ良いだけだ。なぁ、エルザに提案があるんだ。エルザが持ってる本、どんくらいある?」
「これで半分くらいかしら?」
部屋が本で埋まりました。
「……マジか……」
「私が持っててもしょうがないし、マックスにあげましょうか?」
「だからそれは勿体ねぇって! 頼みがあるんだ。これを写させてくれねぇか?」
「いいわよ」
「よっしゃ! じゃあちょっと待ってろ。あ、なんか飯も買って来てやるよ。何が良い?」
「えっと、何が良いのかしら?」
「庶民の飯なんて分からねぇか。適当に買って来るよ。苦手なモンあるか? 辛いのが嫌とか、甘いモンが好きとか」
「苦手なものはないわ。王妃教育でなんでも食べられるよう鍛えられたし、多少の毒なら耐えられるわよ。あまり食べる機会はなかったけど、甘いものは好き」
「苦労したんだな。庶民向けだけど、うまいモンいっぱい買って来てやるよ。あと、写本用の本も買って来る。しばらく待っててくれ。ついでに偵察もして来る」
「分かったわ。ありがとう」
私は本を読んで過ごす事にします。魔法の本は覚えてしまいましたし、今は娯楽小説が読みたいですわ。
一旦本をしまって、目当ての本を取り出します。そうだ、お姉様に連絡をしておきましょう。
「お姉様、ひとまず国は脱出出来ましたわ」
「良かったわ! さっき、ジェラール王子が来たのよ。貴方を心配していたようだけど、確かシモン様と仲が良かったわよね? お父様が貴方を勘当したって言ったら驚いておられたわ」
「ジェラール様は、魔力検査の時にわたくしを庇って下さったのです。シモン様に婚約破棄された時も、考え直せとシモン様を諫めて下さいました」
「そうなの? それならシモン様から言われてエルザの行方を探しに来たわけではないのかしらね。わたくしはてっきり、エルザを捕まえてシモン様の仕事をさせるつもりかと思っていたわ」
「どうしてわたくしがシモン様の仕事をしていたとご存知なのですか?!」
秘密にしていた筈なのですが……。
「さっき、通信魔具で彼と話をしたの。エルザを心配していたわ。……それから、わたくしがシモン様の婚約者にさせられるのではないかと言ってたわ」
そうか、お姉様の恋人は宰相様の助手だわ。知っていて当たり前じゃない。
お姉様が……シモン様の婚約者……。マリアンヌかと思っていたけど、確かにお姉様の方が魔力が高いわ。しかも、お姉様に婚約者は居ない。
ああ! どうしましょう! どうして気がつかなかったの?!
「本当ですか?! ありがとうございます!」
「んじゃ、またよろしくな」
「はい、急ぎでしたので本当に助かりました。エルザ様、宿が決まったら教えて下さい」
「宿ですか?」
商会にしばらく留まらないかと誘われましたが、申し訳ないのでお断りしたのです。嫌な予感もしましたしね。
「ああ、なら先に宿に行くか。案内してやるよ。だから、約束の本見せてくれよな」
「分かりました。それではまた」
「必ず! 必ず連絡を下さいよ!」
なんでしょうか? なんだか違和感を感じます。マックス様も先程とは違い、なんだか険しい表情をされているような……?
「先に宿に行こう。ギルドは後だ」
「はい。よろしくお願いします。マックス様。ああ、違った。うん。よろしく」
「急には無理だよな。無理しなくて良いぜ。けどよ、俺に様を付けるのはやめてくれよ。なんかむず痒いんだよ」
「分かったわ。マックス、色々ありがとう」
「お代は貰うから安心しな」
「え! いくら?」
「金じゃねぇよ。エルザが見せてくれるって言ってた魔法の本がお代だ。なかなか手に入らなくてな。読めるのが楽しみだぜ」
「いくらでも読んで。なんならあげるけど?」
「それは勿体ないからやめとけ。魔力がなくても魔法の本には利用価値がある。後で宿に着いたら教えてやるよ」
そう言って、マックスは宿に案内してくれました。
「ここは値段はそこそこだし、メシも美味い。今日はもう終わっちまったから後でどっかから調達して来よう。何より部屋に鍵がかかるのが良い」
「部屋に鍵がないってあり得るの?!」
「普通にある。特に安宿は鍵なんてない。慣れないうちは、冒険者ギルドで鍵のつく宿を紹介して貰うと良い。ギルド紹介の宿なら安心だ。あとは、街ごとに定宿を決めると楽だな。慣れた場所は疲れも取れるしな」
「そっか、冒険者はひとつの街に留まるなんて事ないものね」
マックスも今日はここに泊まるそうです。部屋は隣です。私は一泊分の料金を払いました。思いの外安かったし、連泊すれば割引があると聞いたので何泊かしようと思いましたが、マックスに止められたのです。
約束の本を見せる為、私の部屋に来ています。男女で2人きりなんて、部屋のドアを開けるのが基本だと思っておりましたが、マックスはさっさと部屋の鍵を閉めてしまわれました。
「まぁ、街から出ない冒険者も居るけどな。ただ……」
部屋に入った途端マックスが急に小声になりました。
「エルザは、この街に定住すんのはやめた方が良い」
「どうして?」
「あの商会はエルザの居場所を把握したがってる。宿まで尾行されてた。好意的に考えれば、お得意様の妹であるエルザを心配してるって位だろうけど、俺にはそんな理由だとは思えねぇ」
「……そうですか。仕方ありませんね」
「驚かねぇんだな?」
「商会に泊まるよう勧めてきたし怪しいとは思ってたわ。商会の方は、お姉様の紹介状があって、今のところ問題がないから手を貸してくれただけ。王家や公爵家が私を探し始めたら、すぐ情報を売るだろうとは思ってましたわ」
「なんだ、結構しっかりしてんだな。悪い、エルザの事舐めてたわ」
「舐めて当然よ。敬語はまだ出ちゃうし、商会の事も疑ってはいたけどどう対処して良いか分からなくて困ったしね。尾行も気がつかなかったわ。教えてくれてありがとう」
「言葉はそのうち慣れる。尾行は訓練すりゃ良いだけだ。なぁ、エルザに提案があるんだ。エルザが持ってる本、どんくらいある?」
「これで半分くらいかしら?」
部屋が本で埋まりました。
「……マジか……」
「私が持っててもしょうがないし、マックスにあげましょうか?」
「だからそれは勿体ねぇって! 頼みがあるんだ。これを写させてくれねぇか?」
「いいわよ」
「よっしゃ! じゃあちょっと待ってろ。あ、なんか飯も買って来てやるよ。何が良い?」
「えっと、何が良いのかしら?」
「庶民の飯なんて分からねぇか。適当に買って来るよ。苦手なモンあるか? 辛いのが嫌とか、甘いモンが好きとか」
「苦手なものはないわ。王妃教育でなんでも食べられるよう鍛えられたし、多少の毒なら耐えられるわよ。あまり食べる機会はなかったけど、甘いものは好き」
「苦労したんだな。庶民向けだけど、うまいモンいっぱい買って来てやるよ。あと、写本用の本も買って来る。しばらく待っててくれ。ついでに偵察もして来る」
「分かったわ。ありがとう」
私は本を読んで過ごす事にします。魔法の本は覚えてしまいましたし、今は娯楽小説が読みたいですわ。
一旦本をしまって、目当ての本を取り出します。そうだ、お姉様に連絡をしておきましょう。
「お姉様、ひとまず国は脱出出来ましたわ」
「良かったわ! さっき、ジェラール王子が来たのよ。貴方を心配していたようだけど、確かシモン様と仲が良かったわよね? お父様が貴方を勘当したって言ったら驚いておられたわ」
「ジェラール様は、魔力検査の時にわたくしを庇って下さったのです。シモン様に婚約破棄された時も、考え直せとシモン様を諫めて下さいました」
「そうなの? それならシモン様から言われてエルザの行方を探しに来たわけではないのかしらね。わたくしはてっきり、エルザを捕まえてシモン様の仕事をさせるつもりかと思っていたわ」
「どうしてわたくしがシモン様の仕事をしていたとご存知なのですか?!」
秘密にしていた筈なのですが……。
「さっき、通信魔具で彼と話をしたの。エルザを心配していたわ。……それから、わたくしがシモン様の婚約者にさせられるのではないかと言ってたわ」
そうか、お姉様の恋人は宰相様の助手だわ。知っていて当たり前じゃない。
お姉様が……シモン様の婚約者……。マリアンヌかと思っていたけど、確かにお姉様の方が魔力が高いわ。しかも、お姉様に婚約者は居ない。
ああ! どうしましょう! どうして気がつかなかったの?!
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