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改稿版
33-1 ジェラール視点 シモンの本心
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「ふざけるな! エルザは私の物だ!」
「エルザは物じゃない。それに、婚約破棄は決定事項だとエルザを突き放したのはシモンだろう。僕がエルザと婚約すれば良いと言ったのも覚えているぞ。そうですよね? 国王陛下」
「……む、しかしだな……我が国はエルザの力が必要なんだ」
『我々の魔力は下がり続けている。間違いなく、エルザは特殊能力を持っている。以前王族を追放された魔力無しの出来損ないが魔力を上げる特殊能力を持っていたと聞いておる。だから、王家で魔力無しが現れてもすぐに殺すなと伝わっておるからな。特殊能力を持つ者に嫌われると魔力が上がらないらしいから、エルザに優しくしてやらねば。なぁに、エルザはシモンを慕っておる。ジェラール殿と婚約したのもシモンへの当てつけだろう。シモンに会わせさえすれば、エルザは帰って来る』
気持ち悪い。思慮深く、親切だと思っていた国王陛下の本心に吐き気がする。
「そうだ! エルザが必要なんだ!」
『あの女に魔力を上げさせて、私は魔力最高値の国王となるんだ!』
親友だと思っていた男が、化け物に見える。僕は今まで、シモンの何を見てきたんだろう。
「僕はエルザを愛してる。シモンのように魔力が無ければ要らないなんて言わない」
『ふざけるな……! 綺麗事ばかり言いやがって! ジェラールもエルザの特殊能力が欲しいに決まってる……! くそっ……! どうにかしてエルザを取り戻さないと! エルザに会えさえすれば、僕の顔さえ見れば……間違いなくエルザは僕を選んでくれる。そうすれば……また魔力が上がるんだ!』
シモンは、こんな身勝手な考えをする人だったんだな。吐き捨てるように王族を批判したマックスの顔を思い出す。ああ……そうか。マックスもこんな気持ちだったんだな。
僕は今、自分が彼等と同じ王族である事を恥ずかしいと思っている。親友を失う心の痛みは、無い。
僕がナタリーを亡くして落ち込んでいた時、シモンは僕を救ってくれた。そう、思っていた。だけど……エルザと過ごすうちに気が付いた。僕がシモンから貰っていた気遣いの大半は、エルザの気遣いだったんだ。
エルザが追放されてから、シモンの傲慢さが気になるようになった。
もう、僕はシモンを信じられない。
「エルザは家から追放されています。問題はないでしょう?」
「エルザは今でも公爵令嬢だ」
テレーズ様の仰る通りか。
確かに、そうなると僕は些か不利だな。
だけどね、シモン。
エルザは僕を選んでくれた。ようやく手に入れた大切な女性を伴侶にする為なら、多少は狡い手も使わせて貰うよ。
シモンは勘が良いし、頭の回転も早い。けど、心を読める僕の方が有利だ。
『こう言えば、真面目なジェラールはエルザを諦める』
無理だね。僕はエルザを諦められない。あんなに素晴らしい女性を要らないと捨てたのはお前だろう。そう、怒鳴りつけたい衝動を抑え冷静に会話を進める。
「しかし、間違いなくエルザは勘当されたと聞いております」
「それが間違いだったんだ。公爵、入れ」
「……はっ」
エルザの父親が現れた。テレーズ様が息を呑む。公爵は、美丈夫だった。だが、今は。
白髪は乱れ、目の下に隈が目立つ。
「エルザを勘当したのか?」
シモンの冷たい質問に、公爵がビクリと肩を強張らせた。次の瞬間、テレーズ様を睨みつけながら公爵が口を開いた。
「……いえ、しておりません。娘は、エルザは……自ら家を出て行ったのです。魔力無しでは、貴族として生きていけないと……我々は止めました! ですがエルザの意思は固く……テレーズが手引きをして出て行ってしまったのです!」
『ちゃんと嘘を言います……だから……取り潰しだけはこ勘弁下さい……お願いします……』
なるほど。取り潰しは貴族にとって最大級の恐怖。それを利用したのか。だがな、シモン。それは悪手だぞ。
「そうだったのですね。エルザはご両親に捨てられたと泣いておりましたので勘違いしておりました」
魔法を使い、公爵の耳にだけ言葉を届ける。
【愛するエルザのご両親やお兄様の為に爵位をご用意しようと思っていたのですが、無駄だったようですね】
「なっ……!」
「どうした? 公爵。もっと言ってやれ…娘を返せと訴えるんだ。そうすればジェラールは……」
『誘拐犯で、犯罪者だ!!!』
シモンの心の声が、僕を犯罪者に仕立てようとしている。以前の僕なら、シモンに詰め寄っていただろう。だが、今は違う。
「僕が、なんだい?」
冷静に返事をするんだ。愛しいエルザを、僕の伴侶とする為に。エルザがシモン達に煩わされないように。
「……なんでもない。とにかく、エルザは私の婚約者だ。返せ」
同時に何人もの心を読むのは頭が割れそうになる。だが、耐えろ。魔力はまだ保つ。もう少し、もう少しだ。
【エルザがシモンの婚約者に戻れば、安泰ですか? 僕なら、大切な婚約者のご両親が窮地に陥っていればお助けしますよ。だけど……このままでは僕はエルザと結婚出来ないかもしれませんね】
公爵が、エルザを勘当したと認めれば第一段階はクリアだ。心を読むと、物凄い勢いでどちらに付く方が得か計算している。あと少し、あと少しだ。
「ジェラール! 何をしている! 公爵に何を吹き込んだ!!! もう良い! 公爵、出て行け!」
ふぅ、やっぱりシモンは勘が良いな。
だけど、今ここで暴君になるのは悪手だよ。
もう魔法は要らない。言葉も、要らない。僕は優しく微笑むだけで良い。
その後、公爵はエルザを勘当したと認めた。シモンや国王陛下が真っ赤な顔で否定したが、僕は親が言うならそうだろうと突っぱねた。
「ジェラール……許さんぞ。こうなったら来月の国際会議で訴えてやる! エルザを連れて来い! エルザの意見を聞く!」
よし。うまく出来た。
多くの王族が集まる国際会議で、シモンを徹底的に叩きのめす。
今回はマックスから教わった魔法は使わなかった。だが次回までに訓練を積んで魔法を僕のものにしなくては。僕は、戻ってすぐにマックスに修行を頼んだ。
「エルザは物じゃない。それに、婚約破棄は決定事項だとエルザを突き放したのはシモンだろう。僕がエルザと婚約すれば良いと言ったのも覚えているぞ。そうですよね? 国王陛下」
「……む、しかしだな……我が国はエルザの力が必要なんだ」
『我々の魔力は下がり続けている。間違いなく、エルザは特殊能力を持っている。以前王族を追放された魔力無しの出来損ないが魔力を上げる特殊能力を持っていたと聞いておる。だから、王家で魔力無しが現れてもすぐに殺すなと伝わっておるからな。特殊能力を持つ者に嫌われると魔力が上がらないらしいから、エルザに優しくしてやらねば。なぁに、エルザはシモンを慕っておる。ジェラール殿と婚約したのもシモンへの当てつけだろう。シモンに会わせさえすれば、エルザは帰って来る』
気持ち悪い。思慮深く、親切だと思っていた国王陛下の本心に吐き気がする。
「そうだ! エルザが必要なんだ!」
『あの女に魔力を上げさせて、私は魔力最高値の国王となるんだ!』
親友だと思っていた男が、化け物に見える。僕は今まで、シモンの何を見てきたんだろう。
「僕はエルザを愛してる。シモンのように魔力が無ければ要らないなんて言わない」
『ふざけるな……! 綺麗事ばかり言いやがって! ジェラールもエルザの特殊能力が欲しいに決まってる……! くそっ……! どうにかしてエルザを取り戻さないと! エルザに会えさえすれば、僕の顔さえ見れば……間違いなくエルザは僕を選んでくれる。そうすれば……また魔力が上がるんだ!』
シモンは、こんな身勝手な考えをする人だったんだな。吐き捨てるように王族を批判したマックスの顔を思い出す。ああ……そうか。マックスもこんな気持ちだったんだな。
僕は今、自分が彼等と同じ王族である事を恥ずかしいと思っている。親友を失う心の痛みは、無い。
僕がナタリーを亡くして落ち込んでいた時、シモンは僕を救ってくれた。そう、思っていた。だけど……エルザと過ごすうちに気が付いた。僕がシモンから貰っていた気遣いの大半は、エルザの気遣いだったんだ。
エルザが追放されてから、シモンの傲慢さが気になるようになった。
もう、僕はシモンを信じられない。
「エルザは家から追放されています。問題はないでしょう?」
「エルザは今でも公爵令嬢だ」
テレーズ様の仰る通りか。
確かに、そうなると僕は些か不利だな。
だけどね、シモン。
エルザは僕を選んでくれた。ようやく手に入れた大切な女性を伴侶にする為なら、多少は狡い手も使わせて貰うよ。
シモンは勘が良いし、頭の回転も早い。けど、心を読める僕の方が有利だ。
『こう言えば、真面目なジェラールはエルザを諦める』
無理だね。僕はエルザを諦められない。あんなに素晴らしい女性を要らないと捨てたのはお前だろう。そう、怒鳴りつけたい衝動を抑え冷静に会話を進める。
「しかし、間違いなくエルザは勘当されたと聞いております」
「それが間違いだったんだ。公爵、入れ」
「……はっ」
エルザの父親が現れた。テレーズ様が息を呑む。公爵は、美丈夫だった。だが、今は。
白髪は乱れ、目の下に隈が目立つ。
「エルザを勘当したのか?」
シモンの冷たい質問に、公爵がビクリと肩を強張らせた。次の瞬間、テレーズ様を睨みつけながら公爵が口を開いた。
「……いえ、しておりません。娘は、エルザは……自ら家を出て行ったのです。魔力無しでは、貴族として生きていけないと……我々は止めました! ですがエルザの意思は固く……テレーズが手引きをして出て行ってしまったのです!」
『ちゃんと嘘を言います……だから……取り潰しだけはこ勘弁下さい……お願いします……』
なるほど。取り潰しは貴族にとって最大級の恐怖。それを利用したのか。だがな、シモン。それは悪手だぞ。
「そうだったのですね。エルザはご両親に捨てられたと泣いておりましたので勘違いしておりました」
魔法を使い、公爵の耳にだけ言葉を届ける。
【愛するエルザのご両親やお兄様の為に爵位をご用意しようと思っていたのですが、無駄だったようですね】
「なっ……!」
「どうした? 公爵。もっと言ってやれ…娘を返せと訴えるんだ。そうすればジェラールは……」
『誘拐犯で、犯罪者だ!!!』
シモンの心の声が、僕を犯罪者に仕立てようとしている。以前の僕なら、シモンに詰め寄っていただろう。だが、今は違う。
「僕が、なんだい?」
冷静に返事をするんだ。愛しいエルザを、僕の伴侶とする為に。エルザがシモン達に煩わされないように。
「……なんでもない。とにかく、エルザは私の婚約者だ。返せ」
同時に何人もの心を読むのは頭が割れそうになる。だが、耐えろ。魔力はまだ保つ。もう少し、もう少しだ。
【エルザがシモンの婚約者に戻れば、安泰ですか? 僕なら、大切な婚約者のご両親が窮地に陥っていればお助けしますよ。だけど……このままでは僕はエルザと結婚出来ないかもしれませんね】
公爵が、エルザを勘当したと認めれば第一段階はクリアだ。心を読むと、物凄い勢いでどちらに付く方が得か計算している。あと少し、あと少しだ。
「ジェラール! 何をしている! 公爵に何を吹き込んだ!!! もう良い! 公爵、出て行け!」
ふぅ、やっぱりシモンは勘が良いな。
だけど、今ここで暴君になるのは悪手だよ。
もう魔法は要らない。言葉も、要らない。僕は優しく微笑むだけで良い。
その後、公爵はエルザを勘当したと認めた。シモンや国王陛下が真っ赤な顔で否定したが、僕は親が言うならそうだろうと突っぱねた。
「ジェラール……許さんぞ。こうなったら来月の国際会議で訴えてやる! エルザを連れて来い! エルザの意見を聞く!」
よし。うまく出来た。
多くの王族が集まる国際会議で、シモンを徹底的に叩きのめす。
今回はマックスから教わった魔法は使わなかった。だが次回までに訓練を積んで魔法を僕のものにしなくては。僕は、戻ってすぐにマックスに修行を頼んだ。
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