魔力なしの役立たずだと婚約破棄されました

編端みどり

文字の大きさ
47 / 55
改稿版

35-2 マックス視点1

しおりを挟む
エルザは、俺達の許可を取るとリリィさんに丁寧に自分の特殊能力を説明した。怖いのだろう。エルザは微かに震えている。そっと手を握ると、嬉しそうに微笑んだ。

俺を頼ってくれてるのが嬉しい。

今までも、頼っては貰えてたと思う。けど、エルザは自分でなんとかしないといけないと思う気持ちが強い。俺に頼み事をする時も、どこか遠慮があった。

けど、昨日気持ちを確かめ合ってからは見えない壁がなくなってきた気がする。

リリィさんはエルザを責めたりしなかった。むしろエルザを気遣ってくれた。失礼だと分かっていたが、お願いして魔力を測らせて欲しいと頼むと笑顔で受け入れてくれた。

リリィさんの魔力は、エルザの特殊能力を聞いても変わらず高いままだった。エルザは、すげぇ嬉しそうに笑った。これで、エルザの特殊能力を知っていてもエルザを大事だと思ってくれてる人が増えた。本当に、彼女を助けられて良かった。

間に合って、良かった。

エルザからリストを貰ってすぐにジェラールと協力して全員の調査をした。リリィさんはジェラールが間違いなく良い人だと言うから真っ先に調べたけど行方が分からなかった。

勘当されたと分かり、慌ててジェラールと二人で探しまくった。使える限りの魔法を駆使して、なんとか見つけた彼女は国境の森でぶっ倒れていた。

助けた後はジェラールに任せたが、いつの間にか貴族の養子にしていた。王太子の行動力、やべえ。

エルザがジェラールの国で貴族になれば、伯爵家の養女になったリリィさんと会う事もあっただろう。けど、エルザは俺の手を取ってくれた。このままじゃ貴族のリリィさんと会う機会はない。そう思ってジェラールに頼んで会う機会を作って貰った。

リリィさん以外にもエルザの事を心配してる人は居たし、そんな人達はジェラールの説得で魔力を計らせて貰うと魔力が上がっていた。ジェラールは凄くて、魔力が下がったり上がったりして不思議がる人達をうまく誤魔化してくれた。みんな良い人だったけど、エルザの特殊能力を話しても大丈夫だろうと思えたのはリリィさんだけだった。

他の人は勘当なんてされてねぇし、元気にしてるから説明しねぇ方が良いだろう。エルザ達に経緯を説明して、魔力が上がったままの人も居ると説明するとエルザはとても喜んだ。

リリィさんの魔力が下がったのは自分のせいだと言うエルザに、違うとリリィさんは言い切った。魔力が上がっているのだから、エルザ様はわたくしを好きでしょう! そう言い切り、俺達を驚かせた。

リリィさんや、エルザ、ジェラールの話を照らし合わせると、魔力検査の後少しずつリリィさん達の魔力が下がったんだと思う。けどそれは、エルザがリリィさん達に嫌われたからでも、エルザがリリィさん達を嫌ったからでもない。仲良く話すエルザとリリィさんを見れば、嫌ってないのは明らかだった。

俺は必死で頭を働かせ、理由を考えた。

師匠が残してくれた資料は全部覚えてる。けど、魔力が下がった人が再び上がったなんて記述はひとつもなかった。下がったヤツは下がりっぱなしだ。エルザの特殊能力は、師匠と同じ。

リリィさん達の魔力が下がったのも上がったのもエルザの特殊能力が影響してる筈だ。

だから俺は、エルザと師匠の違いを徹底的に考えた。そして、ようやく気が付いたんだ。

師匠は、気が強くて一度嫌った人を再び好きになる事は絶対にない。悪意を向けられればどんなに好きでも即相手に興味がなくなる。どれだけ相手が好意を向けても、必ず好意を向けてくれるとは限らない。

けど、エルザは違う。

エルザは自分から人を嫌う事はない。ジェラールがエルザを訪ねて来たあの日、みんな大嫌いだと叫んだエルザの心は私を嫌わないでと叫んでいた。エルザ自身すら気が付かない本音を、魔法は暴き出してしまう。

エルザに問いかけると、真っ赤な顔で認めた。気が付いていなかったけど、その通りだと言った。エルザは魔力検査に居合わせた人達を信じられなくなったのだろう。例外は、ジェラールだけ。けど、違うかもしれないと思い直した。だから魔力が戻ったんだ。

師匠とエルザの特殊能力は心を読む魔法と関連があると思う。あの魔法は、心を読んで相手の本質が分かり、この人は信じられる。そう思うと温かな気持ちになり幸福感が増す。エルザとジェラールの心を読むとすげぇ温かくて幸せな気持ちになった。その時、一瞬だけ身体中に魔力が溢れた。あの時感じた幸福感が、魔力を上げる鍵なのだろう。

師匠は好き嫌いがハッキリしている。好きな人間しか、信じない。

エルザは、大抵の人間に対して好意的だが、信頼する人は少ない。

好意だけじゃなく、ある程度相手を信頼しないと特殊能力は発動しない。心を読む魔法の事は言わずに、俺の仮説を伝えるとみんな納得してくれた。エルザは、みんなを信じられなくなったけど俺からリストを渡されて自分の考えは間違っていたのではないかと思うようになったと言ってた。魔力が増減したタイミングと一致する。

つまり、一度下がった魔力もエルザの信頼を取り戻せれば上がるって事だ。もちろん、相手がリリィさんみたいにちゃんとしてる場合だけだがな。

シモン様の魔力は高かった。シモン様はエルザを好いていたし、信頼してもいたのだろう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結済】どうして無能な私を愛してくれるの?~双子の妹に全て劣り、婚約者を奪われた男爵令嬢は、侯爵子息様に溺愛される~

ゆうき
恋愛
優秀な双子の妹の足元にも及ばない男爵令嬢のアメリアは、屋敷ではいない者として扱われ、話しかけてくる数少ない人間である妹には馬鹿にされ、母には早く出て行けと怒鳴られ、学園ではいじめられて生活していた。 長年に渡って酷い仕打ちを受けていたアメリアには、侯爵子息の婚約者がいたが、妹に奪われて婚約破棄をされてしまい、一人ぼっちになってしまっていた。 心が冷え切ったアメリアは、今の生活を受け入れてしまっていた。 そんな彼女には魔法薬師になりたいという目標があり、虐げられながらも勉強を頑張る毎日を送っていた。 そんな彼女のクラスに、一人の侯爵子息が転校してきた。 レオと名乗った男子生徒は、何故かアメリアを気にかけて、アメリアに積極的に話しかけてくるようになった。 毎日のように話しかけられるようになるアメリア。その溺愛っぷりにアメリアは戸惑い、少々困っていたが、段々と自分で気づかないうちに、彼の優しさに惹かれていく。 レオと一緒にいるようになり、次第に打ち解けて心を許すアメリアは、レオと親密な関係になっていくが、アメリアを馬鹿にしている妹と、その友人がそれを許すはずもなく―― これは男爵令嬢であるアメリアが、とある秘密を抱える侯爵子息と幸せになるまでの物語。 ※こちらの作品はなろう様にも投稿しております!3/8に女性ホットランキング二位になりました。読んでくださった方々、ありがとうございます!

婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!

山田 バルス
恋愛
 この屋敷は、わたしの居場所じゃない。  薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。  かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。 「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」 「ごめんなさい、すぐに……」 「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」 「……すみません」 トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。 この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。 彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。 「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」 「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」 「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」 三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。  夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。  それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。 「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」  声が震える。けれど、涙は流さなかった。  屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。 だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。  いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。  そう、小さく、けれど確かに誓った。

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている

ユウ
恋愛
銀髪に紫の瞳を持つ伯爵令嬢のフローレンスには社交界の華と呼ばれる絶世の美女の妹がいた。 ジェネットは幼少期の頃に病弱だったので両親から溺愛され甘やかされ育つ。 婚約者ですらジェネットを愛し、婚約破棄を突きつけられてしまう。 そして何もかも奪われ社交界でも醜聞を流され両親に罵倒され没落令嬢として捨てられたフローレンスはジェネットの身代わりとして東南を統べる公爵家の子息、アリシェの婚約者となる。 褐色の肌と黒髪を持つ風貌で口数の少ないアリシェは令嬢からも嫌われていたが、伯爵家の侮辱にも顔色を変えず婚約者の交換を受け入れるのだが…。 大富豪侯爵家に迎えられ、これまでの生活が一変する。 対する伯爵家でフローレンスがいなくなった所為で領地経営が上手くいかず借金まみれとなり、再び婚約者の交換を要求するが… 「お断りいたします」 裏切った婚約者も自分を捨てた家族も拒絶するのだった。

私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います

***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。 しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。 彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。 ※タイトル変更しました  小説家になろうでも掲載してます

【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】

暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」 高らかに宣言された婚約破棄の言葉。 ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。 でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか? ********* 以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。 内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

処理中です...