愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり

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第二章 新しい生活

4.再会

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「キャスリーン王女……? どうしてうちに……?」

「兄さん、キャスリーン様と会った事があるの?」

「あ、ああ。以前少しだけな。まさか……ピーターのお見合い相手がキャスリーン王女とは思わなかった」

「まだお見合いじゃないよ。今日はお会いしただけ。内密なんだから誰にも言っちゃ駄目だよ。だから兄さんがいない時にしたのに、なんで帰ってくるのさ」

「すまん。王太子殿下の予定が変わって……」

「キャスリーン様、ビオレッタ様、兄が失礼しました。こう見えても兄は王太子殿下に仕える騎士ですから、王家に忠実です。本日のことは誰にも他言しません。ね、兄さん」

「もちろんです。失礼しました。私は席を外しますので、弟とゆっくりなさって下さい」

「あ……いえ、もうお暇するところでしたので……」

「ふぇ、わぁああん! まっまー!」

「ビオレッタ、どうしたの?」

ビオレッタが急に泣き出した。ど、どうしましょう。これじゃ帰れない。いつもはマリーが抱けば泣き止むのに、マリーが宥めても泣き止まない。

「まっま、まっま!」

「ビオレッタ、大丈夫。大丈夫よ」

ビオレッタをわたくしを求めている。急いでマリーからビオレッタを受け取り、宥める。

「まっま、まっまー!」

「もしかして……ビオレッタ様、兄が怖いのですか?」

「む、そうかもしれん。俺は席を外す。キャスリーン様、ビオレッタ様、失礼します。乳母殿も怖がらせてすまなかった」

「あ……クリス様……!」

行ってしまわれた。もう会えないと思っていたのに。もっと、話がしたかったのに。

「まっま!」

「ビオレッタ、ごめん、ごめんね。大丈夫よ」

クリス様が部屋の奥に姿を消すと、ビオレッタは落ち着いた。

「兄は身体が大きいですからね。大丈夫ですよビオレッタ様。ああ見えて、兄は優しい人なんです」

知ってますわ。あの時も、クリス様はお優しかったですもの。まさか……貴族だったなんて。平民だと、思っていたのに。そう、言ってたのに。

「きゃう! きゃはは!」

ビオレッタは、ピーター様が宥めるとご機嫌になった。

「キャスリーン様。お時間は大丈夫ですか?」

「はい。まだ大丈夫ですわ」

「では、もう少しだけビオレッタ様と過ごしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、もちろんです」

「うちの庭園をご案内します。きっとビオレッタ様も気に入って頂けると思います。ビオレッタ様、参りましょう」

なかなか自分で歩こうとしないビオレッタが、ピーター様に手を引かれて歩き出した。庭園に行くと、クリス様がいらっしゃった。

「す、すいません! すぐ消えます!」

「大丈夫だよ兄さん。ビオレッタ様、うちの兄です。大きいけど、怖くないですよ。ほら、兄さん、笑って」

「む……こ、こうか?」

「きゃは! きゃー!」

ビオレッタがクリス様のほっぺたをペシペシと叩く。クリス様が、目を細めて笑っている。

「ビオレッタ様、あちらに珍しい花があるんです。見に行きましょう。キャスリーン様はお疲れでしょうし、少しお休み下さい。ここにお茶を持って来て。兄さんはキャスリーン様のお相手をよろしくね。乳母殿は、歩かせて申し訳ありませんがついて来て下さい」

テキパキと指示を出したピーター様は、ビオレッタとマリーを連れて庭園の奥へ消えて行った。
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