愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり

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第三章 再婚

1.母の庭園

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悩んで、悩んで、二日経ってしまった。
その間、仕事はしているけどクリス様にもピーター様にも会っていない。

ピーター様が訪ねてくれたのに、会えなかった。お兄様がクリス様を連れて来たのに、部屋に籠ってしまった。
あと五日で、決めないといけないのに。

昔のように我儘にと言われても、もう忘れてしまった。確かに、クリス様に出会う前のわたくしは我儘で、あんなに一生懸命教えてくれる先生方の授業を真面目に聞いていなかった。だから、大量の宿題を出されてしまい、ますますイライラしていた。

真面目に授業を聞くようになってからは、宿題も減り先生達は優しくなった。今になって思うと、王女の家庭教師はプレッシャーも大きかったことだろう。お姉様やお兄様はもっと早くから教育が始まっていた。ギリギリまで教育を遅らせたわたくしは、我儘な子どもだった。先生達が焦って厳しくするのも当たり前だと思う。

ビオレッタは、わたくしのようにならないように早くから教育を始めるわ。わたくしは、教育が始まってからあまりお兄様やお姉様に会えなくなり寂しかった。そんな事にならないように、家族の時間もたくさん取りたい。クリス様に連れられて城に戻った時、お母様が泣きながら抱きしめてくれた。それから、お母様は毎日わたくしに会いに来てくれるようになったわ。甘えるからと嫌がっていた先生達に、真面目に授業を受けるからとお願いしたら認めて貰えた。

「キャスリーン、仕事は終わった? お茶しましょ」

以前のようにお母様が訪ねて来てくれた。ビオレッタはお昼寝の時間ですやすや眠っている。お母様はいつも、悩んでいるとさりげなく声を掛けてくれる。マリー達にビオレッタを任せて、お母様と庭園でお茶をする事にしたわ。

「相変わらず、お母様の庭園は美しいですね」

「ふふ、嬉しいわ。ピットが頑張ってくれているからね」

ピットはお母様の庭園の世話を一手に担っている庭師。お母様の庭園はそこまで大きくないから、ピットが一人で世話をしている。国中で一番優秀な庭師だ。彼の作る庭園は美しくて、年中花が咲き乱れている。

以前のわたくしは、ピットのように支えてくれる人が沢山いることに気が付いていなかった。綺麗な服も、整えられた部屋も、わたくしが王女だから用意されているものだったのにそのことに気が付かず、義務を放棄しようとした。

「わたくしは……どうすればいいのでしょうか?」

お父様は自分で決めろと言った。そこには何か意味があるはずだ。ピーター様とクリス様、違いは何だろう?

「キャスリーン、あなたはピーターとクリス、どちらが好き?」

「どちらも、素晴らしい方だと思いますわ。ピーター様はビオレッタに優しく接してくださいましたし、お話するのも楽しかったです。クリス様は……」

どうしてでしょう。クリス様の顔を思い出すと、胸がとても痛いです。

「キャスリーンが城を抜け出した時、助けてくれたのがクリスだものね」

「知っていたのですね」

「ええ、お父様は怒ってクリスを処分しようとしたのよ」

「そんな! 悪いのは我儘を言ったわたくしなのに!」

「分かってるわ。けどね、クリスがキャスリーンを見つけたのは城の中。そのままキャスリーンをわたくしの元に戻す。それが騎士のあるべき姿よ」

今ならわかる。クリス様がわたくしを連れ出して下さったのは、相当の覚悟があったからなんだわ。もしかしたら、そのせいでクリス様は跡取りから外された……?

「わたくしの我儘のせいで、マクミラン侯爵家を振り回してしまったのでしょうか」

そしてまた、わたくしの我儘で振り回そうとしているの?

勉強する意味が分からなかったわたくしを変えてくれたのはクリス様。
そのせいで、クリス様は侯爵家を継げなくなった?
そのせいで、ピーター様は婚約者を決めることもできず、勉強に励んでおられたの?

衝撃を受けたわたくしの手を取り、お母様が歩き出す。

「キャスリーン。あなたはとっても優しい子に育ったわ。民の為に生きる。それが王族の務め。だけどね、自分を犠牲にする必要はないの。貴女の不安は分かるわ。だからこそ逃げては駄目。気になる事は直接本人達に聞きなさい」

お母様はそう言うと、薔薇の沢山咲いた秘密の場所に連れて来てくれた。美しい薔薇に囲まれた、真っ白なイスとテーブルのある小高い丘。
ここに来たのは二回だけ。城を抜け出して帰って来た時と、結婚する前。
ここは、お母様の特別な場所。許可のある者しか出入りできない。お父様も、お兄様もお母様と一緒でないと入れない。そんな場所に、クリス様とピーター様が立っていた。
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