愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり

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第四章 守りたいもの

1.ビオレッタの幸せ

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「お母様、見て下さい! 似合いますか?」

「とっても素敵よ。ビオレッタ」

花嫁衣装に身を包む娘を見ていると、思わず涙が溢れてくる。

あれから、長い時が過ぎた。ビオレッタは十二歳になり、わたくしは二人の子を産んだ。息子と娘が産まれたわ。あれだけ不安だったのに、ビオレッタを愛している気持ちは変わらなかった。ビオレッタは、弟や妹の面倒を見てくれる優しい子に育ったわ。

いささか優しすぎるのが気になるけど婚約者のモーリス様との仲はとても良好だ。ビオレッタはもうすぐ帝国に嫁ぐ。クリスはまだ十二歳なのだから待って欲しいと願い出たけど、モーリス様が一刻も早くビオレッタと夫婦になりたいと願っておられ、ビオレッタもモーリス様が好きだと言うので結婚を早める事になった。色々あったのでビオレッタを守る為でもあるし、なによりも帝国の意向を無視できなかった。王族は早い人なら十歳に満たない歳で結婚する事も多いので、民も祝ってくれている。

問題があるとすれば、クリスが寂しがっている事だけだ。正直、わたくしもとても寂しい。

「ビオレッタ……可愛い。ああ、やっぱり嫌だ! 結婚はまだ早いだろう!」

「お父様、そんな事仰らないで。望まれて結婚するのだから、わたくしは幸せよ。伯母様もいらっしゃるのだから、大丈夫」

「ビオレッタを大事にするなんて当たり前だ! いいか、嫌な事を言われたら帰って来て良いんだからな!」

「大丈夫よ。みなさんお優しいもの。それに、伯母様の怒りを買うような真似、なさらないわ」

お姉様はビオレッタを可愛がってくれている。だから、大丈夫。お姉様は帝国で絶大な権力がある。ビクター様も、お姉様には逆らえないと仰っていたわ。そんなお姉様の姪であるビオレッタに何かする人なんていない。わたくしの時のように、冷遇されたりはしない。

分かっている。それなのに……なんだか寂しくて仕方ない。ビオレッタと出会わなければ、わたくしは今頃クリスと結ばれていなかった。

ビオレッタと会えたから、強くなれた。

大切な娘が、来月にはいなくなってしまう。寂しくて仕方ない。だけど、ビオレッタを守るには早く結婚した方が良い。それも、分かってる。

ビオレッタの母親は、娘を産んだ。クリスが調べたところによると、また不貞をしたらしい。お相手は護衛騎士だそうだ。悪びれず堂々と王の子だと言い切る姿に恐れをなした護衛騎士は、頃合いをみて辺境に逃げたらしい。

元夫は、娘を溺愛しているらしくどんな我儘も許してしまうそうだ。おかげで王族の権威は失墜している。

この間、親子揃ってうちに来てビオレッタに無茶な要求をしようとしたから、国交を断絶したわ。うちは元々わたくしが帰ってから外交をしてなかったけど、正式に縁を切った。帝国が国交を断絶したのは大ダメージだと思う。

宰相達は頑張っているようだけど、そろそろ潰れるのではないかしら。この間元夫達を連れて帰る為に宰相が来たわ。久しぶりに顔を見たけど、ずいぶんやつれていた。もうこんな事しないと誓わせたけど、あの人が約束を守るとは思えない。だから、ビオレッタはここに置いておけない。あの国が潰れたら、領地の取り合いになる。戦争に発展する可能性は低いけれど、多少揉めるだろう。どこの国だって領地は欲しいのだから。

ビオレッタは、表向き元夫の子だ。だから、ビオレッタを担ごうとする者たちが絶対に現れる。その前に手出しできない帝国の妃として逃しておきたい。幸い、モーリス様はビオレッタを溺愛している。ビオレッタの事情も全てご存知だから、安心して娘を任せられる。

独自に調べ、ビオレッタに貴族や王族の血が流れていない可能性があると知っても、モーリス様はビオレッタを望まれた。ビオレッタと結婚しないなら、一生独身でいる。なんて言って周りを驚かせた。

ビオレッタも、モーリス様を慕っている。だから、大丈夫。

明日、モーリス様がビオレッタを迎えに来る。結婚式は来月だ。寂しいけれど、娘の幸せを見守りたいと思う。
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