愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり

文字の大きさ
33 / 46
第四章 守りたいもの

2.モーリス視点1

しおりを挟む
「ビオ! 会いたかった!」

可愛い可愛い、僕の唯一。世界一、愛しい人。一カ月会わないだけで、益々綺麗になった。

ビオは震えながらハンカチを渡してくれた。美しい花と、僕の名前が刺してある。

「モーリス様、お久しぶりです。あの、この間はあまり上手く出来なくて……練習をしてみたんです。良かったら、受け取って下さい」

「前より上手になったね。さすがビオだ」

「褒めて頂けて嬉しいです。なかなかお母様のように上手にできなくて、いっぱい練習したんです」

可愛い、可愛すぎる。
出会った時からビオレッタは可愛かった。

まだ上手く喋れないのに、必死で挨拶をしてくれたビオに惹かれるまで時間はかからなかった。父上も母上と会った瞬間に運命を感じたと言っていたから、僕らは似ているのだろう。

僕は王族だ。だから、結婚相手は王族でないといけない。ビオの母上のように再婚であれば貴族と婚姻する事も可能だろうが、基本的に王族の結婚相手は王族。そういうものだ。まぁ、例外もあるにはあるがな。ビオの実母のような異物は、例外中の例外だ。

うちは例外なんて許されない。王妃様の采配のおかげで問題なくビオと婚姻できる僕は、幸運だ。

けど、僕は欲張りなんだ。

僕も父上と同じ、いや、父上より欲深くて……こんな気持ちを持つなんて、王族失格なんだ。僕は、ビオレッタだけを愛したい。余計な異物は要らない。

父上は側妃が二人いる。王妃様を味方にして側妃が増えなくなった父上は、とても幸せそうだ。だけど……大事にされない側妃達はどうなのだろう。贈り物をしたり、里帰りさせたりと大事にしているように見せかけているけど、父上が一人で側妃達の部屋を訪ねる事はない。訪ねる時は、いつも母上を連れて行く。

つまり、父上は側妃達と子作りをしていないという事だ。

別に子が産まれなくても結婚した時点で彼女達の役割は果たされている。父上には継承権がないから子が産まれなくても良い。けど、結婚したのに夫に相手にされないって嫌だろ。いくら側妃でも、腹が立つに決まってる。それなのに……側妃達はとても幸せそうだ。父上と結婚して良かったといつも言っている。彼女達が嘘を吐いてるようには見えない。

気になって理由を調べようとしたら、父上から笑顔で警告されたので諦めた。あの顔の父上はヤバい。人に言えない理由で、側妃達を納得させているんだ。

どうやって側妃達を操っているのか分からないけど、僕は父上のように側妃を操るなんて出来ない。ビオは僕に側妃ができると思ってるし、早く結婚すれば若い頃だけは僕を独り占めできると笑ってるけど……ビオの笑顔を見るたびに、側妃は絶対に嫌だと思ってしまう。

だが、僕は王族で国の駒だ。自分の意思を貫くには、父上のような功績が要る。役に立てば褒賞を得られる。役に立たない駒は放置され、邪魔をする駒は捨てられるか、壊される。それが帝国だ。ビオとの婚姻を急いだのも、側妃を取れと命じられるのは二十歳を過ぎてからだからだ。ビオだけを愛する為に、あと五年で功績を挙げる。その為には、ビオが近くにいないと無理。毎日ビオに会えないと、頑張れない。

「ビオ、あいつらは来なかった?」
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...