愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり

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第四章 守りたいもの

5.宰相視点2

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ミリア様の夫になりたい男は私の知る限り存在しない。王族の結婚相手は王族だが、あんな我儘な王女様、誰が好きになるというのだ。あとは国内の高位貴族だが……国から逃げた貴族も多い。残っているのは欲にまみれた下位貴族と、死を覚悟した国を憂う貴族だけ。残ると言った若い者は、ほとんど逃がした。有事の際、命が残っていれば国を救えるかもしれぬからな。……残っている未婚の高位貴族は、十五歳になる私の息子だけだ。

王妃はどうなっても良いが、ミリア様だけは守らねば上に立てる者がいなくなる。私は、控えていた息子に目配せをした。

悲痛な顔をした息子は、そっと部屋を出て行った。打ち合わせ通り、ミリア様を避難させてくれるだろう。その時、ミリア様が少しでも息子を好いてくれれば良いが。

息子に想い人や恋人がいなかった事だけが救いか……。すまん、息子よ。国の為に……犠牲になってくれ。お前にだけ抱えさせはしない。死ぬ時は私が先に死ぬ。

妻と娘は、国外に逃した。泣いて縋る家族との別れは辛かった。彼女達が幸せになってくれる事を祈ろう。

覚悟を決めて、愚王に向き合う。どうやら愚王は、私の言葉を理解できていないようだ。

「……は?!」

「こちらの手紙をご覧下さい」

「これは……アメリアの字……なんだ……これは……!」

手紙には淫らな愛の言葉が書いてある。宛名は、愚王ではない。

「王妃様の恋人だそうです。宛名の男を調べましたが、国から逃走しておりました。王妃様は側妃の頃から多くの男と浮き名を流しておられたようです。ビオレッタ様も、ミリア様も貴方様のお子ではありません」

「……そんな……まさか……。おい、宰相を捕えろ! 不敬罪だ!!!」

腰の剣を抜く愚王。私はまだ、死ねない。大声で叫んだ。

「嘘だと思うなら、王妃様にお確かめ下さい! 私も参ります! 証拠はたくさんあるのです! 私は、国の為に申し上げているのです!」

この男は、私の価値を分かっている。まだ、私は殺されない。案の定、愚王は剣から手を離した。

「分かった。虚偽であれば……即、そなたの首を刎ねる」

「……国王陛下のお心のままに」

証拠があるという嘘に引っかかったな。この手紙を入手したのは昨日。他に証拠らしい証拠はない。だが、この手紙で充分だ。王妃を問い詰めればボロを出す。もし失敗して私が死んでも、宰相を手打ちにした王はその場で拘束され、裁かれる。

そう、法律を変えた。この男も知っている筈だが、この様子では忘れているようだな。

裁判をせず、処刑した場合……例え王族でも捕えられ罪に問われる。それでこの男は終わりだ。私を逃がそうとする衛兵と目が合ったが、私は逃げずに静かに首を振った。
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