【完結】婚約破棄に感謝します。貴方のおかげで今私は幸せです

コトミ

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第四話

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 キャサリンとの生活が始まって、もうすでに五年という月日がたった。成功の人生が続くと思っていたら、なぜだかすべて悪い方へ動いている。両親はキャサリンの事を嫌い始めているし、キャサリンの父親でモンタギュー伯爵には毎月仕送りをしている。王宮に勤めていると聞いていたのに全くモンタギュー伯爵はお金を持っていなかった。キャサリンから聞いたところによると、モンタギュー伯爵は家族にしか言っていない借金があった。その借金は裏社会から借りたもので、返済に目途などつかなかった。
 子供を産みたがらないキャサリンとはもう3年近く同じベッドで寝ていない。顔を合わせるたびに父上から母上から子供の事を聞かれる。その話にうんざりしたキャサリンはとうとう僕の両親と顔を合わせなくなった。

 そして、最初の一、二年は全然気にしていなかったキャサリンの言動が気になり始めた。キャサリンは最低限のマナーはあるにせよ。上流階級の会話の仕方、お辞儀の仕方、様々な教養が欠けていた。僕の従妹の結婚式の日、新婦よりも目立つ真っ赤なドレスを着てきたときは顔から血の気が引いた。
 いくら注意してもキャサリンに悪気はないから太刀が悪い。まるでこの世界は自分を中心に回っているような口ぶりばかりをして、相手を気遣うという事が全くできない。様々な女性に会うとまるで自分の方が立場が上であるかのように、顎も引かず胸を張っている。
 出会った頃はそれでもよかった。アンナと違いハキハキとしていて、自分に自信を持っていたから。でもマナーや教養で言えば、アンナの方があった。アンナは男より前に出るような事をしなかったし、確かに上の空の時も多かったが、それでも別に問題はなかった。

 アンナは僕より一歳年下だった。今は二十二。まだまだ結婚できる年齢だ。もしかしたらまだ結婚していない可能性が全然あり得る。今ならまだ引き返せる。まだ僕は二十三だし、アンナは二十二。これからだって上手くやっていける。キャサリンのおかげで子供は出来ていないし、離婚だってしようと思えばできる。
 きっとアンナは結婚していない。きっと父親であるハミルトン男爵と一緒に宮廷魔法使いとして、王宮に勤めていたはずだ。

 王宮に国王陛下の身の回りの世話として勤めている友人のカルロスに連絡を付けた。そいつは王宮の中でも長く勤めている。会うのは本当に久しぶりだけれど、騎士団に所属していたころよく会って話していた。
 週末、僕の屋敷へ来てもらう事となった。

「久しぶりだな。エリック。大人びたじゃないか」
「ああ、五年もたてば嫌でも大人になる」

 軽くハグをして、リビングへ案内した。廊下でキャサリンが通りかかった。金髪の髪をなびかせながらにっこりと笑った。来客用に見せる笑顔だ。もうずいぶん僕はそういう顔を見ていない。

「どうも奥様。エリックの友人のカルロス・アルバートンです」
「ごゆっくりして行ってくださいね」

 優雅に階段を上っていった。その動作一つ一つにカルロは食い入るように見ていた。男たちは皆キャサリンの事に夢中だ。どこへ行っても。

「お前本当にラッキーだったな。あんな美女と結婚できて」
「まあ、良いことばかりじゃないさ。それより入ってくれ。ワインを用意してある」
「ありがとうよ」

 お互いに今までの事を話しながら、ワインをちびちびと飲んだ。そこまで昔でもない昔話にも花を咲かせ、お互いに楽しんだ。

「酔う前に聞いておきたいことがあるんだ」
「なんだ?何でも聞いてくれ。俺が応えられる範囲で」

 予想ではまだアンナは王宮で働いているだろう。恋愛が好きという風でもないし、男と話しているところも見たことが無かった。

「宮廷魔法使いのハミルトン男爵知ってるか?」
「ああ、知ってる。あの人ちゃんとすごいよ。王宮の政治家より断然役に立つ。器用だし、謙虚だし、国王も信頼してるみたいだぜ。国王陛下の暗殺を二度も助けたとか」
「え?そうなのか?」

 そんな話一度も聞いたことが無かった。国王の命を救うなんて英雄じゃないか。なぜそんな人がこの国で有名じゃないんだ。

「自分から優秀さを見せびらかす人じゃないし、良い噂ってのは広まりにくいものだからな」
「ああ、それでそのハミルトン男爵の娘。アンナ・マリー・ハミルトン。知ってるか?」

 しばらく唸り声を上げながら額を親指でトントンとしていた。

「あ、ああ、思い出した!王女様の面倒見てた。娘の方も優秀でさ。花畑は出すわ。花火は打ち上げるわ。あの泣き虫で乳母を困らせてた王女様を手懐けてたよ」
「それで、そのアンナは今も王宮で働いてるのか?」

 やっぱりそうだ。王宮で働いていた。

「いや、隣国の公爵と結婚したんだよ。エリックも知ってると思う。ウィンチェスター公爵っていう。騎士団の団長やってる男と」
「は?」
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