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始まりの森編
何とか無事に初日を終える
しおりを挟むまずは不意打ちで、蜂の群れへとこっそり忍び寄って後ろからフルスイングをお見舞いしてやる。案の定、連中は3匹揃ってこちらをターゲットに指定した。
嫌な滑りを帯びた針先が、一斉にこちらに向く。それに怯んでなどいられない俺は、素早く真ん中の戦闘蜂に《Dタッチ》の呪文をお見舞い。
魔法は見事に掛かって、これで1匹の視界は暗闇状態になった筈。さらにソイツが邪魔で、端っこの蜂はこちらに接敵するのに右往左往。
ただし、こっちも当然ながら無傷では済まなかった。お返しの針攻撃を、こちらの初撃で手傷を負った蜂から返されてしまったのだ。
浅くないダメージはまぁ当然だ、こっちの防御は紙切れ同然なのだから。ただし次の攻撃は、何とかバックステップで凌ぐ事に成功する。
こちらも攻撃を返して、最初の蜂はもはや瀕死の状態に追い込めた。その次の瞬間に、奥の元気な蜂も勢い良くこちらに突撃して来た。
それを何とか、地面に飛び込んで躱す俺。
闇魔法をもう1度使いたいが、何しろMPが心許ない。盾でもあればもう少し作戦の幅が広がっていたが、今更無い物ねだりをしても仕方が無い。
今の最善の手は、瀕死の1匹を素早く倒す事だ。揃って突進して来る戦闘蜂から、俺はもう1度転がって棍棒を振り回すのに適正な距離を取る。
ようやく片膝立ちになって、迎撃態勢は何とか完了した。それから敵の一刺しとのカウンター攻撃で、何とか念願の1匹目の撃沈に成功!
こちらのHPも半分を割ってしまったが、幸い盲目状態の敵はまだ回復していない様子。近くの樹木を簡易盾に、華麗に近くの戦闘蜂の攻撃を避ける。
目論見通り、その樹の根元に置いてあったポーションを手にしての全回復。どうやらこの作戦は、当初思っていた以上に嵌まってくれそう。
余裕の笑みを浮かべた俺の、血の気が引くのはそれから2秒後だった。
何かいる、俺のアバターの視線の先に! 向こう集団もこっちに気づいた様子で、派手な羽音を立てて宙を滑空して接近して来た。
連帯飛行のその中央に居座るのは、戦闘蜂より確実に2廻り以上大きい体躯をしていた。名前の色も違うし、表示ネームも実際『女王蜂』と読めた。
ソイツは手下を2匹ほど引き連れて、俺が巡らせた戦闘エリアに勝手に割り込んで来た。あはははっ、これはデスゲームの始まりですか!?
後ろからの接敵は、何とか気付けて返り討ちに。そう言えば戦闘の途中でした、幸い女王チームが合流するまでほんの少しだけ時間的余裕がある。
その間に何とか、打開策を考えなければ。
要するに、1対3の戦闘を2回連続でこなすのだと割り切れば良いのだ。残った2匹の戦闘蜂を、すぐさま片付けられればの話だけど。
って、そんなの確実に無理に決まってんだろっ! 半ば自棄っパチになった俺は、取り出した木槍を女王蜂に投げ付けてやった。
これが思わぬ効果を生んだのは、半分以上まぐれだった。運が良かったとでも言おうか、投げ槍の要領で勢い良く飛んでった木槍は戦闘蜂にクリティカルヒット!
狙ったのは女王蜂だったのだが、まぁ結果オーライである。その結果、何とその一撃で戦闘蜂を1匹仕留める事に成功したのだった。
こちらもそれを目にして暫く呆けていたせいで、近くの蜂に思い切り刺されてしまったけれど。そのお陰で、特殊技の《毒撃刺》を喰らったみたいで毒状態のバッドステータスを喰らったとの表示が!?
気を抜くとこうなると言う良い例だ、気を引き締め直して今度はこちらの攻撃の番。もっとも、奥の戦闘蜂は既に盲目状態から回復してるっぽい。
それより肝心の毒消し薬は、どの場所に置いておいたっけ? 蜂と言えば毒は当然なので、こうなるのも一応は織り込み済みである。
慌てる必要は無……うわっ、女王蜂ってば思ったより巨大だなっ! いやそれより毒状態を治さないと、毒消し薬どこに置いたっ!?
完全にテン張り気味な俺だが、幸い五感と第六感は良好な様子。近くの敵の気配に、両手で思い切り振りまわした棍棒が敵にヒット。
更に追加で、女王蜂に背を向けながら手負いの戦闘蜂を倒す事に成功した。体力が半減したのと交換に、敵の数は女王蜂を合わせて3匹となった。
そして走り回りながらも、何とか地面に置いてあった毒消し薬を回収に成功。毒状態は解消出来たけど、今度はポーションを取って飲まないと……。
気付けばスタミナも半減、だけど飯を食ってる暇など無い! こちらが走り回ったお陰で、幸いにも向こうの蜂集団はばらけて追跡してくれていた様子。
とは言え、各個撃破の余裕までは無い感じ。戦っている最中に、高確率で囲まれてしまうだろう。贅沢は言ってられないので、ポーションの場所に向かいながら戦うしかない。
覚悟を決めつつ、俺は最初に相手をしていた手負いの戦闘蜂に向かう。
これを倒しても、まだ無傷の戦闘蜂と女王蜂のペアが健在なのか……木の根元に置いたポーションは、あとたった2つしか無かった筈。
これで何とか凌げるかは、レア種の女王蜂の強さ次第だろうか。半減した自分のHPに焦りつつ、何とか手負いの相手を倒し切るプランを脳内で組み立てる。
途中参加して来た2匹の大蜂には、かなり痛い目にあってしまったのは紛れもない事実。お陰でこちらのHPは、残り2割に突入してしまっている。
やはりレア種の女王様は、普通の奴よりかなり手強いのは間違いない。束の間迷いつつ、最後の《Dタッチ》はお供の戦闘蜂に使う事に。
魔法はレジストとか、強い相手には効きが悪かったりとか普通にあるらしい。HPの吸収が少なかったら、この状況下では泣くに泣けない。
安全策を取ったのは、この際仕方が無いってか良かったと思いたい。結果、俺の魔法を受けた盲目のお供は、あらぬ方向へ攻撃を仕掛けて混乱中。
こちらはHPがようやく半分に回復、これでポーション補充まで凌げそう。安心する間も無く、レア種女王蜂の攻撃を受けて再びダメージを浴びる破目に。
こちらも反撃しつつ、森の木立ちを縫っての場所移動。先ほど慌てて闇雲に走り回ったせいで、次にポーションを置いた場所を失念したかと思われたけど。
2本目も何とか発見出来て、回収からの回復には成功した。だけど攻撃を受けての回復は、結局はジリ貧なのだと今更ながら気付いてしまった。
幸い盲目の従者蜂は引き離したし、勝つには攻撃に出るしか手は無い。
そんな訳で、半ばヤケクソ気味な棍棒の振り回しでの反撃開始だ。遅まきながらも、その威力は相手をたじろがせるには充分だった様子。
基本は昆虫ベースの敵なので、ただ単にそう見えただけなのかも知れないが。“蒼空パイレーツ”の元5番打者を舐めんなとばかりに、俺はフルスイングを見舞う。
ちなみに“蒼空パイレーツ”は、小学校の頃に所属してた野球チームだ。俺達の代はそこそこ強くて、俺は5番でサードを守っていた。
自棄っパチの気迫が通じたのかは不明だが、こちらの打撃が2連発でヒット! 長打コースの感触と、怒りの女王蜂の反撃《ニードル弾》とのエフェクト告知。
いきなりのHPレッドゾーン突入だが、俺は意外と冷静だった。敵のHPもあと一押しで、消失する事実を瞬時に読み取れたせいかも知れない。
恐れ知らずの踏み込みで、俺はインコースを捌く如きの巻き込み打撃を女王に見舞う。結果、これがトドメの一撃となったようだ。
さすが女王は強かった、こちらの瀕死のHPを眺めながらそう思う。ってか、感慨に耽る俺の背後から不意打ちの《毒針弾》が。
しまった、もう1匹戦闘蜂がいるのを忘れてたっ!
最後は殴り殴られの泥試合……締まらない結果になったが、何とかアバターの死亡ロストは免れた。いや、毒が抜けずに危うく頓死する所だったけど。
残りHPが2とか、絶対に琴音には黙っていよう……何か色々とスキルPを貰えたとかドロップ報告があった気がしたけど、今は無事に安全地帯に帰る事が優先だ。
しかし初日からキツかった、ちょっと無理をし過ぎたかも?
――こんな感想で、ログイン初日を終えた俺でしたとさ。
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