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始まりの森編
妖精付き
しおりを挟むさて、日本ではあまり馴染みの無い“妖精”と言う架空生物なんだけど。有名なのは、やっぱり童話の『ピーターパン』の“ティンカーベル”あたりだろうか?
物語の中では主人公のピーターパンの相棒であり、完全なトラブルメーカーな存在だけど。焼き餅焼きで意地悪なのは、別に妖精のテンプレでは無いと思う。
だからと言って、妖精の定番など誰も知らない訳で。特に日本人には、あまり馴染みのない架空生物なのではなかろうかと推測してみたり。
日本で生まれた作品で妖精と言えば、やはり某有名アニメ監督の作品だろうか。その筋では有名で、アニメのヒット作は数知れずなのだが。
意外にも、そのアニメ監督は小説も何冊か出している。その中に妖精の出て来る代表的な作品も何点かあって、それはアニメ作品にも共通する。
“バイストン・ウェル”と言う、共通の異世界での物語がそれだ。その作品内では、妖精は蓮っ葉で気紛れと言うイメージで書かれいてたような。
有名なアニメ作品の方では、割とマスコット的な立ち位置で愛嬌のあった妖精だけど。小説内での扱われ方は、何と言うか割と酷かった。
羽虫みたいな感じで、悪さする前に股を割いて捨ててしまえ的な、何とも野蛮な現地の風習とか書かれていたり。悪い組織では、小さな暗殺者として飼われて仕込まれていたり。
まぁ、どちらも人間の身勝手な扱いが前提にあったりするんだけど。そんな小説の中はともかく、現実? の妖精の評価はそれぞれだ。
幸運を運ぶと考えられていたり、グレムリンみたいに悉く機械を壊す厄介者として認識されていたり。
考えてみれば、黒猫だって不吉の象徴だったり幸運のシンボルだったり、地域によって扱いは違うのだ。架空の存在の妖精に、どちらが当て嵌まるのかなんて誰にもわかりやしない。
つまり問題なのは、この籠の中にいる妖精のゲームでの性質って事になる。まぁ、見た目としては可憐で小っちゃくて普通に可愛いと思う。
薄い葉っぱで出来たような衣装を着ていて、光を放つ虫の様な羽根を持っている。それから独特な髪の毛の色で、他に目立つ点と言えば全く喋らないと言う事だろうか。
喋れないのかな、取り敢えず籠から出してあげたんだけど。森へお帰りとの、優しい言葉を添えたのだが通じていない可能性も出て来た。
そう、こちらの意に反して妖精は森に戻ってくれなかった。近くをフワフワと浮遊して、挙げ句の果てに俺の肩に気安くとまったのだ。
ちなみに、コレを押し付けた例の商人は既にこの場にはいない。取り引きが終わるや否や、逃げる様に去って行ってしまった。
まるで厄介事の元凶から逃げて行くようで、いっその事清々しかったけどね。うん、どう見ても厄介事の押し付け案件だよね、コレって?
どうしよう、肝心の妖精が俺から離れてくれないんだが。タダで譲ると言われた時点で、既に取り引きは充分に怪しかったんだけど。
そんな訳にもいかないと、さっき手に入れた獣人の硬貨を見せた所。やつれた顔をした商人は、それをひったくるようにして去って行ったと言う。
出来れば他の商品も、一通り見せて欲しかったんだけどなぁ。まぁ、こちらがお金を持ってない時点で言っても詮無い事ではある。
しかし本当に、この俺に懐いてしまった妖精をどうしよう。今の所、こちらに不都合は無いんだけど、幼女をかどわかしてる様に見られたら嫌かも。
いや待て、本当に不都合は無いのか……!?
名前:ヤスケ 初心者Lv4 種族:ミックスB
筋力 11 体力 12 HP 35
器用 13 敏捷 10 MP 26
知力 11 精神 10(-4) SP 22
幸運 13(+8) 魅力 5(+3) スタミナ**
職業(1):『新米冒険者』Lv4
武器(3):《ブン回し》《》《》
補正(3):《》《》《》
武器:弓矢1P
:短剣1P
:短槍0P
:両手棍4P《ブン回し》
:投擲1P
魔法:『闇』(4)《Dタッチ》
種族:『ミックスB』(幸運+2、魅力-1)
スキルP:1
***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***
武器 :粗末な手製の木槍(3) 攻+3
武器2:粗末な木の棍棒(4) 攻+4(両手時+6)
予備 :女王蜂の短槍(4) 攻+6、時々毒(微少)
上着 :初心者の服(5) 防+2
アクセ:妖精(-) 防+0、幸運+6、魅力+4、精神-4
腕 :粗末な革の腕輪(2) 防+1
下肢 :初心者のズボン(5) 防+2
靴 :粗末な革の靴(2) 防+1
鞄:魔法の鞄(初心者用)
アイテム:ポーション(小)×8、毒消し×3、木の蔦×2、木の実(雑多)
:風の術書×1、潤いの蜂蜜×3、魔石(小)、コボルト武具(雑多)
:花粉の団子、兎の肉、兎の皮、山鳥の羽根、山鳥の肉、狼の毛皮
:狼の牙、虫の翅、木編みの鳥籠
おっと、せっかく手に入れた兜を装備するのを忘れていた。さっそく被って、何となく肩に座ってる妖精に「似合うか?」と訊ねてみる。
妖精は身振り手振りで、どうやらバッチグー☆ 的なニュアンスを伝えて来た。それに取り敢えず満足する俺、これでまた1つ強くなった筈である。
って違う、アクセサリーの欄に『妖精』って何だっ!? あまりの不自然さに、俺はその項目を思わず2度見してしまった。
装備欄に無理矢理突っ込まれたソレは、どうやら取り外し不可能らしい。いや、本当に困ったモノだ……あの商人、客を嵌めやがったな!
いや、別に空欄が埋まっただけで、俺のアバターに今の所不都合は無いのだが。って言うか、逆に幸運と魅力の上昇振りが凄まじい事に。
幸運値など、補正を足すと20を超えてしまって他のステの倍の数値だ。オマケに魅力値も、種族のマイナス分をプラスにしてくれている。
その代わり精神値は下がったけれど、まぁ致し方が無いとこれは諦める事に。そして俺は溜息を1つついて、再び獣道を歩き始める。
そうして歩き出した俺と、歩調を合わせる様に飛び立つ妖精。そこからは小道を微妙に外れつつ、俺はやっぱり西を目指して進む事に。
そして程無く見えて来た、目の前に聳え立つ立派な断崖の威容。……これは、登って頂きを拝むのは無理そうな気配がプンプン。
そこまでの道中、妖精は実にこまめに働いてくれた。ふいっと木陰に飛び立ったかと思ったら、果実や木の実を収穫して戻って来てくれるのだ。
何と言う勤勉な娘だろう……おっと、妖精の性別を言うのを忘れていた。もちろん♀だ、その性格を想像するに蓮っ葉でも意地悪でも無さそうで何より。
収集のお礼を言うと、こちらにニッコリと笑ってくれて愛らしい事この上ない。ちょっと癒されるかも、それよりもう少し断崖に近付いてみようか。
忍び足になる俺を見て、妖精も何かを悟ったらしい。サッと肩にとまって、一緒に息を潜めている。もっとも、この娘はまだ一度も喋ってないんだけどね。
断崖の下は大きな木立ちは生えておらず、ゴツゴツした岩や低い灌木が茂るのみ。もうすぐ森の切れ端に到着、そこを過ぎると隠れる場所が無くなって目立ってしまう。
さっきの小道での二の舞は御免なので、ここは慎重に行かねばなるまい。そんな事を考えながら、俺は視線を鋭く周囲に飛ばしての敵の確認作業。
案の定、割と簡単に手強そうな敵を発見した。まず地上には大きな体躯の熊が、そして飛竜みたいな飛翔する影が空中に1体窺える。
ちなみに崖の至る所に、白い山羊と岩と同じ色のトカゲがへばり付いている。トカゲはモンスターサイズ、大型犬程度はゆうにありそう。
アクティブかどうかは判然としないが、熊と飛竜は確実にこちらを見たら襲って来そう。
――不味いな、これは簡単に森から抜け出せないぞ?
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