最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~大陸横断汽車編 第1章~

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[蒸気都市 スティームミスト]

 「クソっ!降ってきやがった!」

 ケストレルは吐き捨てるように声を出すと、激しく降りしきる雨の中、荒野を走る。フォルト達も雨に体を濡らしながら全力で走っていた。

 フォルトは左手を顔の前で掲げて雨が当たらないようにしながら、大声で話す。

 「何かどんどん激しくなってない⁉シャーロット、大丈夫?」

 「ドレスが・・・雨に濡れて・・・とても・・・重い・・・」

 シャーロットは厚いドレスを着ているので、雨水を大量に吸い込んでしまって非常に重くなってしまっていた。どんどんフォルト達と離されていっている。

 すると、ケストレルがシャーロットの前に屈んで背中を向ける。

 「シャーロット、おんぶしてやるから背中に乗れ。キツイだろ?」

 「い・・・いいえ・・・大丈夫・・・です・・・」

 「何が大丈夫だ。さっきとうって変わって走るスピードが大分遅くなっちまってるじゃねぇか。顔も辛そうだし、無理すんな。体壊したら元も子もねえぞ。」

 「・・・ごめんなさい。ありがとう・・・ケストレル・・・」

 ケストレルはシャーロットを背中に担ぐと、立ち上がって待っているフォルトとロメリアの下へと走り出す。ケストレルが近づいてきたのを確認すると、フォルトとロメリアも走り出した。雨はさらに勢いを増し、乾いた大地はすっかり湿地の様になった。

 ロメリアは走りながらフォルトに話しかける。

 「ねぇ、フォルト・・・思い返してみたらさ・・・この大陸に来て初めての雨じゃない?今までずっと天気よかったよね?」

 「そうだね。ずっと晴れだったし・・・雲もあんまりなかったからね。グリュンバルド大陸は結構な頻度で雨が降ったりしてたからね・・・」

 フォルト達の会話にケストレルが加わる。

 「この大陸は滅多に雨降らねぇんだよ。大陸の大半が砂漠地域、または乾燥地域だからな・・・でも一度雨が降るとこの様だ。一度に降る雨の量は馬鹿みたいに多いし、遮るものがないせいで直接大量の雨が地面に落ちる・・・それで地盤が緩くなって様々な災害が起こったりしちまうんだよ。」

 「この大陸で過ごすのは大変そうだね。」

 「ああ、全くその通りだ。ずっと住んでいる俺もそう思っているよ。」

 ケストレルは激しく息を吸ったり吐いたりしながら笑みを浮かべてフォルトに話す。

 その時、ロメリアが前の方を見て大声を上げた。

 「あ、見て、皆!前に街らしきのが見えてきたよ!」

 「ホントだ!何か大きな筒が街からいっぱい生えてるね・・・何だろう、あれ?」

 「あれは『煙突』って言ってな、モノを燃やす過程で出てくる『ガス』っていう体に悪いモノが持っている上昇気流を外から流れてくる風から守って、より燃えやすいようにするものだ。他にも、俺達人間に有害な煙を撒き散らさない目的もあったりする。・・・しかし、あの煙突群が見えてくるってことは・・・ようやく着いたな、『スティームミスト』に・・・」

 ケストレルはフォルト達に煙突について解説をする。フォルトとロメリアは分かったような分からないような神妙な顔をしながら雨の中を走り抜けていく。暫く走っていくと、どんどん街の全貌が明確に見えてきて、フォルト達は街の入口から中に入って行った。街の煙突からは雨の中でも大量の煙を噴出している。

 フォルト達は街の中に入ると、直ぐに近くの建物の屋根の下に入って雨宿りをする。フォルト達が服を絞ると、ジャバジャバジャバ・・・と大量の水が地面へと落ちていく。足元に水溜りが出来ていき、体が少しずつ軽くなっていく。

 特にシャーロットの服から出てくる水の量はフォルト達とは比べ物にならない程多く、いくら絞っても滝の様に流れ出てきた。

 ロメリアが自分の服を絞り終えて、羽織を軽く手ではためかせると、フォルトに声をかける。

 「うはぁ~!凄い水の量だよ、フォルト!服がしわくちゃになっちゃった!」

 「そ・・・そう・・・だね・・・」

 フォルトは頬を薄っすらと桃色に染めるとロメリアから視線を逸らす。ロメリアはフォルトの異変に一切気が付かなかったようで、大きく背伸びをして胸を張った。

 顔を俯けているフォルトの視線が頻繁にロメリアの方へと向く。だがそれも仕方が無い事だった・・・何故なら、ロメリアのブラウスは雨によって透けており、白のブラジャーをつけた胸がはっきりと見えてしまっていたからだ。ロメリアは自分の服が透けていることに気が付いていないようで、思いっきり背伸びをしてしまったのでより胸が透けてしまい、フォルトの煩悩が烈火の如く燃え上がる。

 フォルトはロメリアに抱いている邪な気持ちを振り払うために街の方に視線を向ける。街は悪天候により視界が悪くなってはいたが、辛うじて街の様子を眺めることは出来た。

 フォルト達がいる所は赤褐色のレンガ造りの建物が乱立しており、飲食店、宿、商店といった居住区のようだ。だが天を貫く煙突に・・・銀色に輝く大きな建物が奥に沢山広がっていることから、恐らくあそこで『蒸気車』といったこの大陸でのみ製造されているものが作られているのだろう。

 ケストレルがフォルトの下へと近づいてこの街について説明をし始めた。

 「この街・・・『スティームミスト』は工業が盛んな街で、この大陸で製造されている工業製品の8割以上を賄っている。軍事的にも非常に戦略的価値のある街でもあるから、この街には古都から多くの兵士が派遣されていて、防衛を任されている。」

 「古都?」

 「この大陸の首都だ。グリュンバルド大陸でいう、『帝都』のようなところだぜ。」

 ケストレルがそう言った瞬間、急にフォルト達の耳に今まで聞き覚えの無い音が入ってきた。

 ポォォォォォォォ~ッ!

 鳥が鳴いたかのような鋭い音・・・しかし何処か太い音が聞こえてきて、フォルト達はその音の方へと顔を向ける。すると、街の上部にかかっている巨大な橋の上を何か得体の知れない黒い物体が無数の車輪を回転させ、先頭部からは灰色の煙を吹き出しながら渡っていた。

 「わぁ!あれ何⁉動いてる!」

 「あれは『汽車』っていって、事前に作られたレールの上を通って人やモノを運ぶ鉄で作られた乗り物だ。あの汽車は・・・旅客用だな。個室で食事も出て来るし、ベッドまでついてくる・・・内部は豪華な造りになっているはずだ。」

 「へぇ~・・・乗ってみたいなぁ・・・」

 「そうだな、誰もが一度はあれに乗って古都まで行ってみたいもんだ・・・ただ、1つ問題があってな。」

 「問題?」

 「・・・あの汽車、滅茶苦茶高いんだよな。1人乗るだけでいくらかかったって言ってたっけ・・・確か10万カーツ・・・だったかな?」

 「10万・・・ということは4人だから40万カーツ・・・高すぎるね・・・」

 「ですね・・・私達・・・そんな大金・・・持ってない・・・ですよね・・・」

 「・・・残念だが、今回は諦めるしかねぇな。そんな大金、一気に稼げないからな。」

 ケストレルの言葉にフォルトとシャーロットが残念そうに顔を俯ける。そこにロメリアがフォルトの肩を叩いて優しく話しかけてくる。

 「フォルト、あの汽車に乗りたい?」

 「・・・うん・・・」

 「そっか・・・そうだよね。折角来たんだもんね・・・乗りたいよね。私も・・・乗ってみたい・・・」

 ロメリアはそう呟くと向日葵のような満面の笑みを浮かべた。

 「じゃあ乗ろうよ、汽車に!この大陸にしかないんでしょ?なら乗る以外に道は無いじゃん!」

 「待て待て、ロメリア。乗るって言ったって金はどうすんだ?まさか無賃で乗る訳じゃねえよな?」

 「そんなことはしないよ!」

 ロメリアはそう言って自分の財布を皆に見えるように広げる。フォルト達がロメリアの財布を覗き込むと中には大量の札が入っていた。シャーロットは口元を両手で押さえて恐る恐る話しかける。

 「ロメリア・・・こんな大金・・・どうしたんですか?」

 「このお金は昔、私とフォルトとケストレルの3人で葡萄畑に出てきた魔物を倒した時に貰った報奨金なんだけど、意外と使って無くてね・・・多分40万カーツ以上は残ってると思うよ。」

 「そうだった・・・あの時のお金が残っていたんだ!・・・でもロメリア・・・一気に使っちゃうの?」

 「勿論!お金なんてまた稼いだらいいんだし?折角の思い出作りにお金を渋っていたんじゃあつまらないでしょ?」

 ロメリアは片目を瞑ってフォルトに微笑む。フォルトは年相応の子供の様に無邪気に勢い良く返事をした。

 「ロメリア・・・うん!そうだね!そうだよね!」

 「じゃあ早速、汽車に乗る準備をしようよ!ケストレル、どうやったら汽車に乗れるの?」

 「まずは駅に行って切符を買わないとな。駅はこっちだぜ、はぐれないように付いて来いよ。」

 ケストレルはそう言って汽車が止まっている駅の方へと歩きだした。フォルト達はケストレルから離れないようぴったりと後ろに付いていく。

 その時のフォルト達の足取りは軽やかだった。そして彼らの心を表しているかのように、雨が止み、青空が暗雲の隙間から見えるようになっていった。
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