最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~大陸横断汽車編 第2章~

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[駅]

 「わぁ・・・凄い人の数・・・これ全部汽車に乗ろうとしてる人達なの?」

 フォルト達がスティームミストの中央区に構えている駅へと到着すると、フォルトは驚嘆の声を上げながら駅を見上げた。ロメリアとシャーロットもフォルトと同じく口を小さく開けて驚きを顔に表す。

 駅は鮮やかな赤色のレンガ造りの建物で、建物の中央には巨大な時計塔が聳える。フォルト達が見上げた瞬間長針と短針が頂点で重なり、鐘が12回鳴って午後0時を告げる。

 重々しい鐘の音が街全体を包み込み、外に広がる荒野へと轟いていく。

 「凄い・・・まるでお城みたいな建物・・・ですね。」

 「汽車が作られて初めて出来た駅がここだからな。古都から多額の資金を援助してもらい、多くの有名な建築家が合同で作り上げたもはや国の遺産レベルの建築物だ。まぁ、この大陸の技術力、工業力の高さを世界に発信する目的もあるだろうけどな。」

 ケストレルはそう言うと、フォルト達に視線を移す。

 「それじゃ、何時までも外で見てないで早く中に入ろうぜ。因みに・・・中も凄ぇから度肝抜かれてチビるなよ?」

 ケストレルの言葉にフォルト達は激しく好奇心を掻き立てられると、ケストレルの後ろを軽い足取りで追いかける。駅の前には人の海が広がっていて、駅の入口を中心に渦巻いている。

 駅の中に入ると、まるで巨人が大手を振って歩けるような巨大な通路があって、両側には服屋や飲食店、薬屋などの多種多様な店がそれぞれ構えていた。どうやら汽車に乗らなくても、買い物をするだけでも十分以上に楽しめるような造りとなっているようだ。

 人の波をかいくぐり、駅の中心へ到着するとそこは巨大な十字路となっており、上を見上げると蜜柑色に明るく包み込むような灯りがステンドグラスから降り注いでいた。そのステンドグラス越しに先程街に時刻を伝えていた巨大な深緑色の鐘が確認できる。

 「見て見てフォルト!さっき鳴ってた鐘が見えるよ!大きいねぇ~、どうやって吊り上げたんだろうね?」

 「ホント、凄いよね・・・ケストレル、あの鐘はどうやって吊り上げたの?」

 「あの鐘は吊り上げたんじゃなくて、複数のパーツに分けてそれを組み立てることで作り上げたんだぜ。初めからあんな巨大な鐘があった訳じゃないんだよ。」

 「成程・・・大きすぎて運べないから・・・その場で組み合わせることで・・・あそこに配置できているん・・・ですね。・・・でもあんな高い場所で作業なんて・・・私だったら怖くてできません・・・」

 「俺も出来ねぇな。だから、こんな建築物や物を作る人達は凄ぇなって毎回思うよ。」

 ケストレル達は真上に吊り下がっている複雑な彫刻が刻まれた鐘を畏怖と敬意の視線で見上げた。

 その後、ケストレル達は切符売り場へと向かうと、早速古都行きの汽車の切符を購入する。今日と明日の切符は全て売り切れてしまっていた為、明後日の午前10時発の旅客汽車に乗ることになった。

 ケストレル曰く、『この街には博物館等があるがそこまで見て回る所も無いから今日と明日の2日あれば街全体を遊びつくせる』と言っていたので、丁度いい切符が取れたとフォルト達は満足する。

 料金は1人10万5千カーツということだったので、4人で42万カーツとなった。フォルトはケストレルが言った金額より少し高かったので不安になったが、ロメリアの財布には49万カーツ入っていたので、問題なく切符を購入することが出来た。切符を購入した後、ロメリアが財布の形が元に戻らないと呟いて、何度も両手で財布を圧し潰していた。

 切符は汽車に乗るまでケストレルが管理するということになった。初めはロメリアが管理すると言ってきたのだったが、フォルトとシャーロットは『汽車の乗り方というかこの大陸の文化に精通しているケストレルに切符を預ける方がいいのでは?』とケストレルに切符を預けるよう進言した。ケストレルもその方がいいとロメリアから切符を取り上げようとすると、ロメリアは少し名残惜しそうに切符を眺めて渋々手渡した。

 フォルト達は切符を買うと、今日と明日泊まる宿を探しに駅の外へと出た。再び来た道を戻る様に町を歩きながら、フォルトはケストレル達に話しかける。

 「今宿に向かっているけどさ・・・その後何する?」

 「う~ん・・・丁度時間もお昼時だから昼ご飯でも食べに行こっか?」

 「ですね・・・私、お腹空いて来ちゃいました・・・」

 「じゃあ宿をとった後は昼ご飯を食べるとして・・・その後は?」

 フォルトが再び投げかけると、ケストレルが話しかけてきた。

 「なぁ、飯食い終わったら武器屋行っていいか?この前の戦いで俺の大剣折れちまったんだよ。」

 「あ・・・そうでしたね・・・ケストレル・・・八重紅狼に斬られていましたもんね・・・すっかり忘れていました・・・」

 「じゃあケストレルは今折れてる大剣背負っているの?」

 「ああ、見るか?」

 ケストレルは大剣の柄に右手をかけると、一気に引き抜いてフォルト達に見せる。確かに大剣の刃は綺麗に真ん中で両断されていた。ケストレルは直ぐに大剣を背中の鞘に収納すると言葉を付け加える。

 「折れた武器とかってよく直ぐに捨てたりする人が多いんだけどな、武器屋に行くとしっかりと買い取ってくれるんだぜ?もう一度綺麗に溶かして別の武器に変えたり・・・その他色々なものに加工できるからな。・・・勿論、買取値はぐんっと下がっちまうが、それでも金がもらえないよりはマシだ。」

 ケストレルがそう言い終えると、フォルト達はいつの間にか宿の前に到着していた。宿もレンガ造りの建物なのだが、赤色ではなく漆黒に塗られていて、ドアや窓は鮮やかな薄緑色に塗られている為、周りの建物と比べて落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 フォルトが入口のドアに手をかけて開けようとしたその時、急に反対側からドアが開いてフォルトは思わず斜め後ろに退いた。開いたドアから1つの黒い人影がすっと出てくる。

 「きゃあ!」

 その人影がドアの傍にいたシャーロットの肩に当たると、シャーロットは体勢を崩して尻もちをついた。その人影はシャーロットを転倒させてしまうと、直ぐに立ち止まって彼女に手を差し出した。

 「済まない。肩がぶつかってしまったようだな。・・・立てるか?」

 凛々しく堂々とした女性の声がフォルト達の耳に入ってきた。シャーロットは彼女の手を握って一気に立ち上がると、その女性に返事をする。

 「は・・・はい・・・ごめんなさい、呆けてて・・・」

 「いや、君が謝る必要は無い。私の方こそ、もう少し周りに気を配るべきだったからな。」

 その女性はシャーロットに優しく微笑むと、フォルト達を見渡した。

 女性の顔は非常に整っていて、目が鋭かったのでロメリアやシャーロットと比べたら非常に『男』らしかった。胸元がはだけた白のYシャツに、黒の薄いコート、黒のスキニーパンツを履いていて、非常に引き締まった体のラインがはっきりと確認できる。はだけた胸元からは豊満な胸が見えている。

 胴には茶色のベルトが幾つも巻き付いており、両脇の下には何やら銃が収納されているホルスターが1つずつ存在した。

 だが服や銃よりもフォルトは彼女の髪を見た瞬間、息が止まった。

 ・・・彼女の髪の色はフォルトと同じ、『勿忘草色』で、癖毛があった。彼女は髪が長いのか、自身の髪をおさげでまとめている。

 『彼女の髪・・・僕と同じだ・・・まさか彼女・・・僕と同じ『ジャッカル』の・・・』

 フォルトがその女性を見ていると、彼女はフォルトに話しかける。

 「迷惑をかけてしまったな。・・・君達は見た所旅の者のように見えるが・・・観光をしに来たのか?」

 「は、はい・・・」

 「そうか。では、ゆっくりと楽しんでくれ。もし蒸気機関やこの大陸の工業に興味があるのならこの街の博物館に一度は行っておくことをお勧めするぞ。」

 その女性はフォルトとロメリアを見て軽く微笑んだ。そしてその女性はフォルトの横にいるケストレルの方に顔を向けた。

 するとその女性は驚いたかのように目を見開くと、急に顔色を暗くさせる。・・・いや、彼女の鋭い目がより険しくなり、その目に憎悪と思わしき炎を宿らせる。フォルト達はケストレルとその女性に交互に視線を向ける

 「・・・では失礼する。時間を取って済まない。」

 彼女はそう告げると、フォルト達から離れて行く、彼女の背中は直ぐに見えなくなり、フォルト達は彼女の方をしばらく見続けた。

 フォルトは彼女が消えていった方をただ真っ直ぐ見つめているケストレルに声をかける。

 「ケストレル・・・あの女の人と知り合いなの?」

 「・・・いいや、知らねぇな。初めて会う女だよ。」

 ・・・ピクッ・・・

 ケストレルの左の方が僅かに痙攣した。フォルトは少し悲しそうに目を細めると、ケストレルに言葉を付け加える。

 「・・・でもあの人、ケストレルの事ずっと睨みつけていたよね?」

 「俺は元『コーラス・ブリッツ』にいたからな・・・それに八重紅狼として前線で戦ってたし・・・恨みを持っている奴も多少はいるんだろ。」

 「・・・そう。」

 フォルトが小さく呟くと、ロメリアがフォルトに話しかける。

 「ねぇ、フォルト・・・さっきの人の髪の色・・・」

 「うん・・・僕と同じだったね。」

 「あの人も・・・『ジャッカル』の血を引いているのかな?『勿忘草色』の髪は『ジャッカル』の血筋にしか現れないんだったよね?」

 ロメリアの言葉にフォルトは小さく頷いて答えた。

 街の上を覆っていた雲は大分薄れていったが、まだ分厚い雲が所々残っていた。
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