最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~大陸横断汽車編 第14章~

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[乱入]

 『な、何だ⁉』

 フォルトは激しく揺れる列車の中、何とか体勢を保ちながら前方車両に顔を向けた。揺れは直ぐに収まったが、爆音の大きさからして相当なものであるのは間違いなく、長時間走行できるのも怪しいと感じた。

 『この袋に入っていなかったとすれば・・・ロメリアは汽車の前方へと何かの手段で運び出されたってことか・・・そして今の爆発・・・もしかしたら連結部分がやられているかもしれない・・・』

 フォルトは唇を噛み締めた。

 『そうかっ、車両を切り離せば追跡は厳しくなる・・・人の足で汽車に追い付くなんて絶対に無理だし・・・やらかしたっ・・・急いで前の車両に行かないとっ!』

 フォルトが前方の車両へと移動しようとした、その時だった。

 「おっと動くなよ、クソガキが。手前を前の車両に行かせる訳にはいかねぇ。」

 フォルトの後ろに尻をついて座っていた乗務員の態度が一変し、フォルトの背中に拳銃を突き付けていた。男はゆっくりと立ち上がると、フォルトの背中を添うように銃を移動させて、後頭部に銃口を突きつける。

 フォルトは身動きをすることなく、鎖鎌を握りながら男に話しかける。

 「・・・なぁんだ、結局お前も奴らの一味だったんだね?・・・ということはその袋を持って僕の横を通ったのは、僕の注意を引くため?」

 「正解。状況を直ぐに判断できる知的なガキは好きだぜ?」

 男は拳銃の撃鉄を一気に引く。

 「ま、まんまと目の前の餌に釣られて1人でノコノコとやってくるのは、馬鹿のすることだよな?・・・俺、馬鹿なガキは嫌いなんだよ。」

 「・・・そう。」

 「でさ、馬鹿って死ななきゃ治らねぇって言うだろ?・・・だから俺が『治して』やるよ。手前の脳みそ撒き散らしてな。」

 男は引き金に人差し指をかけてゆっくりと引いた。するとフォルトが呆れたように低い声で呟いた。

 「・・・無駄だよ。貴方には引き金は引けない。」

 「はぁ?何言ってんだお前?」

 男はフォルトの言葉を軽く流すと、引き金に付けている人差し指に力を込めた。・・・しかし、いくら力を込めた人差し指は全く動かない。それどころか体全体の身動きすら出来なくなっていた。

 「な、な、何だこれ・・・何で体が動かな・・・」

 「目を動かして頑張って自分の体を見てごらんよ?」

 男が目だけを動かして自分の腕を見てみると、何時の間にか鎖が腕に巻き付いていた。鎖は腕だけに留まらず、体全身にも巻き付いている。

 「い・・・いつの間に巻き付けたっ⁉それに・・・何で鎖が巻き付いているだけなのに体がビクともしないん・・・」

 男が急に慌てふためき始めて騒ぎ出すと、フォルトは両手に持っているそれぞれの鎌を体の前で交差させる。

 「ぇげ⁉」

 男の首が半回転し、無様な声を上げて男は絶命した。フォルトは男に絡ませていた鎖を解くと、短い溜息を漏らした。

 「・・・無駄な手間とらせやがって・・・」

 フォルトは糸が切れた人形の様に崩れ落ちた男の死体に一瞬視線を移すと、直ぐに前の車両へと顔を向けた。

 前方の車両には慌てふためき半ばパニック状態に陥っている乗客達が廊下に出ていた。また、汽車に乗っていた遠征部隊と思われる武装した人達が一般乗客に部屋で待つよう指示をしているがどうにも興奮しているようで全然言う事を聞いていなかった。そのせいで道は人で溢れており、その中を突破していくのには時間がかかるとフォルトは思った。

 『何処か・・・直ぐに前に行けるルートは・・・』

 フォルトは周囲を見渡しているとふと天井に視線が向いた。

 『そうだ!屋根を伝って行けば誰にも邪魔されることなく行けるっ!』

 フォルトは自分の傍にあったとある個室のドアを勢い良く開けた。個室の中には老夫婦がおり、鎖鎌を持ったフォルトを見て思わず声を上げながら後ろに下がって驚いた。

 「うわぁぁぁ・・・」

 「ひぃぃ・・・」

 「あっ・・・ごめんなさい・・・すぐに出て行きますので・・・」

 フォルトは老夫婦に頭を下げて懸命に誠意を見せると、机の上にのって窓を開けた。爆発の影響で黒煙が風に乗って部屋の中へと入ってくる。老夫婦が激しく咳き込むと、フォルトは謝罪の言葉を述べて窓の外に出ると屋根に上った。直ぐに窓を閉めて煙が老夫婦のいる部屋に入らないようにすると、燃えている車両に顔を向けた。

 焼け付く熱気が肌に張り付き、濁った黒煙が目と喉をじりじりと焼く。息も苦しくなっていき、意識が薄くなっていく。

 『・・・屋根に上るって言うのはいい考えだと思ったんだが・・・煙が凄いな・・・走って向こうに行くのは・・・厳しそうだっ!』

 フォルトは姿勢を低くしながら目を薄っすらと開けると、鎖を持って鎌を全力で振り回す。自分の2つ先にある車両に鎌を投げつけて絡ませると、強く引っ張って固定されている事を確認する。

 鎖を腕と手に何度も強く巻き付けると、迷うことなく列車から飛び降りた。時計の振り子のように激しい風を受けながら橋の下を移動していく。息は出来るようになったが突き刺さるような鋭い風にさらされてまともに目を開くことが出来ない。

 フォルトが何とか目を開けて前方を確認すると、突然目の前に列車の窓硝子が目に入り、咄嗟に腕で顔を守った。

 そのままフォルトは窓ガラスを突き破って車内に突入すると、鎖鎌を手元へ戻して顔を上げた。目の前にはフードの人達が奥で燃え盛っている車両に向かってボウガンを射ており、フォルトの姿を見ると慌ててボウガンの照準をフォルトの方へと向けた。

 フォルトは思わず苦笑いを浮かべる。

 『あっと・・・これはまずいね・・・』

 フードの人達が引き金を引いた瞬間、フォルトは猫の様に俊敏にボウガンの矢を回避していく。止むことなく撃ち込まれ続ける矢にフォルトは回避しながら思考を巡らせる。

 『このままだと埒が明かない・・・それに相手は全員ボウガン・・・ナイフもちらっと見えたけど・・・』

 フォルトは壁に足をつけると引き絞った弦から矢が放たれるが如く、フードの集団の懐へと一気に入り込んだ。

 『ナイフを引き抜く前に全員仕留める!』

 フォルトは彼らの死角に回り込みながら1人ずつ素早く首を掻き切っていく。10人ほど密集している為、迂闊に撃てば味方に当たってしまうとのことで彼らはボウガンを撃つことが出来なかった。だがナイフに手を伸ばした瞬間フォルトが飛び掛かり、確実に息の根を止めにかかってきた。

 フォルトが全員の首を斬った時にはフォルトの手と鎌には大量の血がべっとりと蜘蛛の巣の様に張り付いていた。フォルトは足元に広がる死体と血だまりの中、深呼吸をする。

 「・・・ふぅ・・・何とか始末できたな・・・ついでにこの部屋の制圧も完了っと・・・」

 フォルトが腕を振って鎌と手に付いた血を払っていると、燃え盛っている後方車両からケストレル達の声が聞こえてきた。フォルトが近づいてきているケストレルとガーヴェラを見ると2人共服に少し煤が付いていた。どうやら爆発現場に居合わせたようだ。

 「フォルト!」

 「ケストレル!さっきの爆発大丈夫だった⁉」

 「何とかな。・・・それにしても助かったぜ。お前が来るまではシャーロットの魔術とガーヴェラの銃で突破しようと思ってたが・・・まさか窓から突入してくるとはな。」

 「本当はこの車両の上に乗るはずだったんだけど・・・少し『高さ』が足りなくてね。部屋に入ったらいきなり目の前に敵がいた時はびっくりしちゃったよ。」

 「それにしても冷静に1人ずつ狩っていったな。・・・大人顔負けの手際だったぞ。」

 ガーヴェラの言葉にフォルトは少し頬を上げて微笑む。

 「ところでシャーロットは?」

 「シャーロットはゾーディンを連れて部屋に戻ってもらってる。あの間抜け・・・2本食らっちまってな。おまけに毒も塗ってあるとのことだ。」

 「大丈夫なの?」

 「シャーロットが解毒を含めた傷の治療をおこなってくれるから問題ない。・・・まだ小さいのにあいつの魔術にはお世話になるな。」

 ケストレルはそう言うと、フォルトに向かって少し声のトーンを落として話しかける。

 「・・・向こうはフェイクだったか?」

 「うん・・・袋の中に入ってたのは布団だったよ・・・」

 「そうか・・・だとしたら、あの台車の中に入っていたということが確定したな。・・・悪い、フォルト。気づくのが遅れてちまった・・・」

 「大丈夫だよ・・・僕も目の前の餌に釣られちゃったから・・・」

 フォルトはそう言うと先頭車両の方へと体を向ける。

 「でも絶対に返してもらう・・・誰だか知らないけど、ロメリアを奴らに渡したままにしておくものかっ・・・」

 フォルトが怒りを心の内に秘めた感じで声を押し殺しながら呟くと、ケストレルが背中にかけている大剣の柄を握る。

 「だな。行こうぜ、フォルト。奴ら全員潰して、『囚われのお姫様』を助けるとしましょうか。」

 「『囚われのお姫様』ねぇ・・・何かロメリアには似合わないなぁ・・・」

 「あっはっは!確かに、あいつの性格は全然お淑やかじゃねぇもんな。それに、大人しく捕まっているようなキャラじゃねぇし・・・」

 「うん・・・そうだね・・・」

 フォルトは小さく頬を上げて微笑むと、ケストレルと一緒に前の車両へと歩いていく。ガーヴェラは堂々と隠れもせず奥へと歩いていくフォルトとケストレルの背中を見ながら、2人の後を追った。

 先程爆発した車両には煙が充満し始めて何も見えなくなっていた。
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