最強暗殺者の末裔と王族の勘当娘 ~偶々出会った2人は新たな家族として世界を放浪します~

黄昏詩人

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~帝都決戦編 第15章~

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[少女の責任と意志]

 フォルト達がウルフェンと交戦していた同時刻___貧民街、アストライオス付近。

 「や、やった!」

 シャーロットは核を包んでいた保護結界を解除し、思わず歓喜の声を上げた。持てる知識と勘を総動員して挑んだことで不安でしょうがなかったが、無事解除することが出来て安堵の息をふと漏らす。シャーロットの様子を見守っていたヴァンパイア達も喜ぶ。

 「やりましたね、シャーロット様!これでアストライオスを止められますよ!」

 「はい!・・・よし、これで___」

 シャーロットが剥き出しになった核に手を伸ばした___が、

 「シャアァァァァァッ!」

 「きゃッ!」

 突然ムカデの様な多足生物がマナの核に纏わりつき、魔力を放出してシャーロットの手を弾く。静電気を溜め込んだ手すりに触れたような感覚を手に受けたシャーロットは、思わず伸ばした腕を引っ込めた。ヒリヒリとした痛みを受け、手を見ると掌の皮が少し向けていた。その謎の生き物は核を覆い尽くすと、マナの魔力で生成した雷を放電し始めた。

 「シャーロット様、大丈夫ですか⁉」

 「はいっ・・・」

 シャーロットは再び手を伸ばそうとするが、謎の生物の放電で核を取り除くことが出来ない。すぐ横にいたヴァンパイアが持っているレイピアでその生物を突き刺そうとするが、レイピアがその生物に当たる前に粉々に砕け散る。

 「くっ、レイピアが・・・」

 「退いて!私がやるわ!」

 「待ってください!多分他の人がやっても無駄だと思います!この生き物に物理的な攻撃は恐らく・・・通用しません。」

 シャーロットは代わりに突き刺そうとした女性ヴァンパイアを制止すると、魔力を込めて詠唱を始める。周囲のヴァンパイア達が察してシャーロットから距離を取る。

 『物理攻撃が効かないのなら・・・これならどうです⁉』

 「『烈火の炎よ!想い焦がれる恋心のように敵を燃やし尽くせ!』」

 詠唱を終えると、彼女の頭上に大きな円形の紋章が現れる。赤く妖しげに光る紋章から、一筋の光線がその化物へ照射されると、強力な炎がその化物目掛けて発射され、目の前が猛火に包まれる。

 離れていても肌が焦げそうな程の炎に思わず顔を覆いながら、燃え盛る炎を見続ける。だが確かな手ごたえは感じたものの、燃え盛る炎の中でその生物はシャーロットを嘲笑うかのように、奇妙な声を放つ。

 「シャーロット様の術を受けて無傷とは・・・何て奴だ!核を収めているアストライオスでさえ、少し溶けているのにッ・・・」

 「シャーロット様!もう一度やりましょう!きっと次は上手く行きますからッ!」

 周りのヴァンパイア達から困惑と焦りの声が上がる。シャーロットも意地になり、幾つもの術をその化物と核に向かってぶつける。しかし何度行っても結果が変わることは無かった。核は勿論のこと、謎の生物は無傷のままだった。

 「キシャァァァァァァッ!」

 化物は奇怪な鳴き声を上げると、アストライオス全体に魔力をどんどん供給していく。アストライオスは輝きを帯び、稼働音がより激しくなっていく。

 『一体・・・どうしたら・・・』

 シャーロットが焦りながら考えていると、アストライオスから謎の声が発せられた。

 《アストライオス、87%のマナの供給完了。発射可能まで、残り1分。》

 「シャーロット様!もう時間が___」

 「分かってます!」

 シャーロットは拳をぎゅっと強く握る。発射までもう猶予が無い上に、対処法が分からない・・・シャーロットは半ばパニック状態になっていた。

 『どうしよう、どうしよう、どうしようッ・・・』

 自分が止めなければこの星が滅ぶ上に、フォルト達の努力が無駄になってしまう・・・彼女の身に想像を絶するプレッシャーが容赦なく襲い掛かり、胃の中のものを吐き出しそうな感覚に襲われ、咄嗟に口を抑えてその場に蹲る。周りにいたヴァンパイア達がシャーロットに駆け寄り、その内の一人がシャーロットの背中を摩る。

 「シャーロット様、しっかりして下さい!」

 「うっ・・・ううっ・・・」

 シャーロットは懸命に逆流してきた胃の中のものを再度飲み込む。喉が焼けるような感覚に襲われながら、アストライオスの核と核に纏わりつく生き物を見る。ムカデの様な謎の生き物は変わらずシャーロットを挑発するように奇妙な鳴き声を放ち続けている。

 万事休すか・・・もう何も打つ手は無いのか・・・シャーロット達が途方に暮れていたその時、フォルエンシュテュール城の方からまた強烈な魔力の波動を感じた。シャーロット達はその魔力がウルフェンのものだと直ぐに理解した。

 ところがこの時、シャーロットはふと遠くから感じた魔力の感覚に違和感を覚えた。確かにあれほどの魔力を出せるのはウルフェンしかいない上に、今感じた魔力もウルフェンのものだと容易に想像できる。

 だが今さっき感じた魔力は今まで感じていたウルフェンの魔力とは違っていること気が付いた。正確に言えば、『元々持っているウルフェンの魔力に別の魔力が上書きされている』といった感じだろうか。

 「・・・」

 「シャーロット様?どういたしましたか?」

 周りのヴァンパイア達がシャーロットに尋ねる。彼女は返事をせずに、目を瞑り城の方から感じるウルフェンの魔力を深く感じ取る。すると、城の方から肉眼では視認できない糸がアストライオスの中・・・マナの核に纏わりつている生き物に繋がっていた。この糸は、魔的なモノ・・・霊的な繋がりのようなものだろう。

 更に深く観察すると、その糸を媒体としてマナの核からウルフェンへと魔力が供給されていた。これを発見した瞬間、シャーロットは膨れ上がっていくウルフェンの魔力の理由を突き止めた。

 「そういうこと・・・だったんですね!」

 シャーロットはゆっくりと立ち上がる。ヴァンパイア達がシャーロットの体を支える。

 「何か分かったんですか⁉」

 「はいッ・・・ウルフェンの魔力が上がり続ける理由がようやく・・・分かりました!」

 シャーロットは核に巻き付いている生き物を指差す。

 「どういう訳かは分かりませんが、あの化け物を通してウルフェンに魔力が供給されているんです。だからどんどん魔力が上がり続けるんです。」

 シャーロットはそう告げると、アストライオスの方へ歩き出した。周りのヴァンパイア達もシャーロットの後に続こうとしたが、シャーロットが皆の方に腕を伸ばして来ないよう合図を送る。

 「シャーロット様?何をなさるつもり___」

 ヴァンパイア達が不思議に思い尋ねると、シャーロットは全身に膨大な魔力を漲らせる。そして紫色に妖しく輝き始めた魔術書を開き、更に魔力を上昇させる。彼女から放たれる暴風の如き魔力の波は凄まじく、ヴァンパイア達は近づくことすら出来なかった。
 
 《マナ供給量、100%。発射準備完了。発射シークエンス開始・・・発射まで、5・・・4・・・3・・・》

 アストライオスのカウントが始まり、砲口が眩い光を発し始める。シャーロットは右腕を振り上げ、魔力を練る。シャーロットのスカートが魔力でふわりと舞い上がる。

 《2・・・》

 シャーロットは目を大きく開くと、アストライオスの核と核に巻き付いている生物を見つめる。

 《1・・・》

 「皆さん、私から離れて下さい!巻き込まれても・・・知りませんよ!」

 シャーロットがそう言うと、赤黒いオーラがシャーロットを包む。ヴァンパイア達が後ろへ大きく退くと、シャーロットが叫んだ。

 「リミテッド・バースト・・・冥天紅月!」

 シャーロットが叫ぶと、明るくなっていた空が一瞬で暗転し、空を駆け抜ける流れ星の中に巨大な深紅の満月が出現する。ヴァンパイア達が古都で見た現象だと理解すると、アストライオスの輝きが碧色からシャーロットの放つ魔力のオーラと同じ、深紅色に変化する。アストライオスはシャーロットが術を発動した後、今までとは明らかに違う音を発しだした。全体が軋み、壊れそうな音だった。

 《異常発生・・・供給されたマナの減少を確認・・・カウントダウンを中断します・・・》

 「と・・・止まった⁉」

 ヴァンパイア達が驚きの声を上げる。一方シャーロットはアストライオスからの膨大な魔力を吸収しており、体全体が悲鳴を上げていた。その余りの魔力量に膝をつくが、シャーロットは頬を大きく吊り上げて微笑んだ。

 『ふ・・・ふふふ・・・やりました・・・破壊出来ないなら足止めをするだけ・・・これでアストライオスの発射を遅らせることが出来ました・・・それに___』

 シャーロットは顔を上げて核に巻き付いている生き物を見る。謎の生き物は苦しそうな声を上げてのたうち回っている。辛うじて核にしがみついて入るものの、大分剥がれていた。

 シャーロットは右腕を伸ばし、その生き物に意識を集中させる。そしてその生き物を通してウルフェンへ魔力を供給していた経路を利用し、逆にウルフェンから魔力を吸収し始めた。アストライオスの魔力とウルフェンの魔力を一気に吸収している影響か、頭が焼けそうな痛みに襲われる。

 「くっ・・・うっ!」

 でもシャーロットは一切手を緩めることはない___城で戦っているフォルトと仲間の為・・・自分に今できることをしようとする強靭な意志が彼女の心を燃やしていた。

 「フォルト・・・お願い・・・しますねッ・・・」

 シャーロットはフォルトの名を小さく呟き、魔力の吸収に専念する。城から感じていた魔力は大幅に減少していた。
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