死を見る令嬢は義弟に困惑しています

れもんぴーる

文字の大きさ
14 / 51

シリルは特別? 1

しおりを挟む
「姉上!!」
 王宮の夜会での発作と同じだった。
 どうしたら・・・一瞬、動揺したが父親のしていることを思い出した。
 力いっぱいシャルロットを抱きしめ、大丈夫だと背中をさすった。
「・・・・え?」
 シャルロットが驚いたように顔を上げてシリルを見た。
「噓でしょ・・・」
「姉上、大丈夫ですか?すぐに医者を呼んでもらいます!」
「お医者様は必要ないわ。それよりもあなた・・・どういうこと?」

 シリルが抱きしめてくれたとたん、触れ合った場所から暖かい光のようなものが流れ込み、痛みや恐怖を一気に消し去ってくれたのだ。いつもはもっと長時間苦しみ、痛みが取れても恐怖や不安はいつまでもくすぶっていた。それが今はすぐに楽になった。

 シャルロットは身を離すとシリルの手を包みぎゅっと握ると、シリルを涙で潤んだ瞳で見つめた。
 シリルの方はどぎまぎして言われてることが頭に入らなかった。姉上も僕の事好きとか・・・と見当違いのことで胸を高鳴らせていた。
 いや、と、我に返ると
「あ、姉上、本当に医者は呼ばなくていいのですか?ひどい苦し・・・」
 再び、今度はシャルロットの手がシリルの体に回された。
「お願い・・・もうしばらくこうさせて」
「・・・はい」

 シリルはゆっくりと背中をさすった。
 撫でながら、メイドが入ってきたとたんに発作が起きたことに思い当たった。シャルロットが人を異常なほど避けるのは、発作と関係があるのだろう。
 なぜ、あのメイドらは入ってきたのだ。あのニコラがそんな指示をするはずがない。主人がいないからと勝手をしたか。おかげでシャルロットが苦しむことになった。

 いら立ちは募るが、今回の発作は軽く済んだようですぐに落ち着いてくれた。
「ありがとう、もう大丈夫。でも少し休むわ。」
 青い顔をしてベッドに向かった。
 ベッドに横になったシャルロットの手を握った。
「こうしててもいい?」
「・・・ほっとするわ、ありがとう。」

 しばらく見守っていたが、眠りについたのを見届けると机に向かい何か書きつけた。
 そしてワゴンに乗せると、食事や飲み物にも一切手を付けず廊下に出した。その後は誰も入れないように内鍵をかけた。
 その後何度かノックがあったようだがすべて放置し、シリルはシャルロットのそばについていた。
 少し日が陰るころ、目を覚ましたシャルロットはシリルに詫びた。そしてつながれたままの手を見て、ぎゅっと握り返した。
「・・・姉上。」
「貴方のおかげでよく眠れたわ。」
「もう頭痛くない?」
「ええ。」
 しかし、顔色は悪いままだった。
「ニコラ様はまだお戻りになってない?」
「まだです。姉上、メイドを見て倒れましたよね」
 シャルロットはびくっとつないでいた手を揺らした。
「・・・今晩、ゆっくり話を聞いてくれる?先にニコラ様とお話したいことがあるの。」
「はい。」
 ニコラの後かと少々悲しくなったが、ようやく話をしてくれそうだと胸のもやもやがとれそうな気分だった。

 しばらくして扉が強めに叩かれた。
「シャルロット様、シリル様!私です、ニコラです。大変な粗相をいたしまして申し訳ありません!」
 シリルは鍵を開けてニコラを受け入れた。
「メイドが部屋に入ったと執事に聞きました。そのあと食事もお茶もご遠慮されていると。本当に申し訳ありません、もしかしてシャルロット様に何か・・・」
「・・・ええ。まだ横になっていますが、こちらに呼んできます。」
ニコラは顔を辛そうにしかめた。

 シリルに手を引かれてソファーに座るシャルロットにニコラは頭を下げて謝罪した。
 しかしシャルロットはそんなことはどうでもいいというふうに、ニコラを見つめた。

「それよりもニコラ様はご無事みたい・・・ということは・・・ああ、ニコラ様、内密でお話したいことがあります。」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

【12月末日公開終了】婚約破棄された令嬢は何度も時を遡る

たぬきち25番
恋愛
侯爵令嬢ビアンカは婚約破棄と同時に冤罪で投獄が言い渡された。 だが…… 気が付けば時を遡っていた。 この運命を変えたいビアンカは足搔こうとするが……?  時間を遡った先で必ず出会う謎の男性とは? ビアンカはやはり婚約破棄されてしまうのか? ※ずっとリベンジしたかった時間逆行&婚約破棄ものに挑戦しました。 短編ですので、お気楽に読んで下さったら嬉しいです♪ ※エンディング分岐します。 お好きなエンディングを選んで下さい。 ・ギルベルトエンド ・アルバートエンド(賛否両論お気をつけて!!) ※申し訳ございません。何を勘違いしていたのか…… まだギルベルトエンドをお届けしていないのに非公開にしていました……

【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。 女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。 私は自立して、商会を立ち上げるんだから!! しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・? 勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。 ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。 果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。 完結しました。

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

藍生蕗
恋愛
 子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。  しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。  いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。 ※ 本編は4万字くらいのお話です ※ 他のサイトでも公開してます ※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。 ※ ご都合主義 ※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!) ※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。  →同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー 「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」 微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。 正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

処理中です...