死を見る令嬢は義弟に困惑しています

れもんぴーる

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不穏な手紙 2

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 再び一通の手紙がシャルロットに届いた。

 手紙の仕分けやチェックをする執事がそれを見て眉をひそめた。
「ジェラルド様、シャルロット様への手紙の件でご相談があります。」
 シャルロットに届ける前にジェラルドに渡した。
「この手紙を見て思い出したのですが、シャルロット様のご様子がおかしくなる前にもある令嬢から手紙が届いていたのです。」
「この手紙と同一人物か?」
「いいえ、差出人は違います。ですが、筆跡が同じなのです。」
「確かに。令嬢とは思えないほど乱れた・・・いや、個性のある文字だな。」
「そうなのです、それで私も記憶に残っておりました。それなのに同じ筆跡で名前が違うということはこれらの手紙は誰かが他人の名を騙り、お嬢様に送ってきたのではないかと。」
「その手紙でおかしくなったというわけか・・・。よく気が付いてくれた、恩に着る。」
「もったいないお言葉でございます。」
 執事が下がった後、ためらわずに封を切った。

 夜会で出会った男とシャルロットが情を交わしたくせに義弟もたぶらかす最低な人間だと罵倒の言葉が並んでいた。そんな下劣な人間は侯爵家にふさわしくなく、婚約を解消して侯爵家を出て行けと書かれていた。
 ジェラルドはその手紙を思わず握りつぶした。

 シリルは学院から帰宅してすぐ、父親に呼び出された。
「シャルロットは大丈夫でしたか?」
「食事を摂らない、このままではもたない。」
「そんな・・・」
 シリルはジェラルドの険しい表情に気が付いた。怒りを必死に押さえ込んでいるようだ。
「シリル、あの夜会の時、シャルロットが連れ込まれたことを知っている人間は誰だ?」
「え?ずいぶん前の事なので・・・」
「思い出せ!」
 ジェラルドは手紙を机にたたきつけた。
 日頃見たことのないジェラルドの態度に驚いた。
「これを読め!」
 突き出された手紙を読んだシリルはわなわなと震え
「一体こんなもの・・・どうして・・・」
「シャルロットがおかしくなる前にも手紙が届いていたそうだ。おそらく同じようなことが書かれていたんだろう。」
「そんな・・・じゃあっシャルロットは!」
「だからあの事を知っているやつを全員思い出せ!」
 必死であの日のことを思い出す。

 シャルロットの行方を探すときに、使用人の何人かには居場所を聞いた。あとは、声をかけてきた令嬢だ。おそらく貴族で知っていたのはあの女だけのはず。
「ブトナ・・・ブトナ男爵令嬢です。シャルロットが男と部屋で楽しんでるとわざわざ言ってきたのは。あの時は知らせてくれて助かったと思いましたが・・・。」
「そうか。即刻ブトナ男爵家を調査する。」
「・・・父上。シャルロットに真実を告げさせてください。僕を許してくれないかもしれません、婚約も・・・駄目になるかもしれません。でも誰かわからない男に乱暴されたと思い込んでいるとしたら・・・僕がもっと早く真実を告げていればこんな目に合わすことはなかった・・・」
「真実告げる必要はない。危ないところを助けたと言えばそれでよい。」
「ですが、それでは・・・」
「お前の罪悪感の為にシャルロットに負担を強いる気か?」
「僕もずっとそれを考えてきました。でもやはり卑怯だと・・・。シャルロットは王太子殿下にも望まれるような女性なのに・・・なのに僕のせいでその道は潰えました。死を見抜く力があるから嫁げないと言っても、その方と結ばれたら僕と同じようにシャルロットを助けることができたかもしれない。僕は卑怯にも先んじて彼女を助ける力を持ってしまったのです。」
「だから?それを伝えて、なかった事になるのか?シャルロットが本心では殿下に嫁ぎたかったとしたら、それを聞かされてどう思うんだ?お前を恨むだけで済むと思うのか?お前はさらにシャルロットを傷つけるつもりか?」
「・・・そんなつもりはありません。」
「そんなつもりはなくてもお前がしようとしていることはそういうことだ。お前がシャルロットに誠実でありたいという気持ちは尊重する。しかし小さなころから苦しんできた彼女をこれ以上苦しめたくはない私の気持ちも分かって欲しい。お前の気持ちをないがしろにする私を許してほしい。」
「父上・・・。父上の気持ちもよくわかりました。もう少し・・・考えます。今はシャルロットを助ける事だけを考えます。」
「手紙のことは私に任せてくれ。もし、シャルロットが最初の手紙を残しているようならそれも預かってきて欲しい。」
「わかりました。」
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