死を見る令嬢は義弟に困惑しています

れもんぴーる

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元男爵令嬢の行く末 2

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 そして、元ブトナ男爵令嬢は今、罪人を収監している牢屋の下働きをさせられている。
 その牢屋のうちの一つが現在の寝床だ。毎朝、牢屋から出て、同じく牢屋に囚われている者たちの世話をする。食事を運び、掃除、洗濯もさせる。

 その作業自体は娼館でたたき込まれたおかげで苦も無くできる。辛いのがここにいる者たちは極刑が決まっている者たちであるということ。わめくもの、命乞いするもの、観念してうずくまるものと色々だ。そして自暴自棄で世話をしている元男爵令嬢に襲い掛かろうとするものがいる。

 そして何より精神に堪えるのが、刑に処された現場の清掃。初めてその場所に連れてこられた時は嘔吐してしまった。牢屋で世話をして顔見知りになった者たちが、頚部を切られ絶命している。その遺体が運び出されあとの血だまりをきれいにさせられるのだ。

 耐えられないと懇願したが、それではすぐにでも血を流す側に回るかと脅され、この役目を担っている。
 毎日、身体と精神をすり減らし、自分の牢屋に戻る。粗末な食事だけが唯一の楽しみなのだ。
 先ほど配り終えたはずの食事が自分の牢屋から消えている。

(まさか、まさか、まさか!!そんなはずはない!一年耐えたら解放してくれると約束したではないか!)
 夜食が与えられない。すなわち明日の処刑を意味する。処刑後の状況を考えた上での対応だ。
 震える声で
「あの・・・私の食事が・・・ありません。」
と監視に声をかける。
「先ほど、食事の取り消し命令が来た。」
「いやあ!嘘よ!モーリア侯爵を呼んで!助けてくれると言ったの!」
「何を言ってるんだ。平民が貴族の令嬢を殺害しようとしたんだ。令嬢は瀕死の重体で奇跡的に命を取り留めた。本来なら即、極刑のところを慈悲で反省する時間をいただけたのではないか!これは正式な手続きで決められた刑罰だ、一貴族の意見で変更されるものではない!」
「そんなの・・・嘘でしょ?ねえ!助けて!何でもするわ!ここから出して!」
 わめく女に、周りの牢からうるさいと罵声が飛んでくる。

「うるさいわね!こっちは命がかかってるのよ!ねえ、看守さん!私をあなたの好きにしてもいいわ!だからお願い、助けて!」
「静かにしろ。」
 看守は顔をしかめると看守室へと入っていった。

 元男爵令嬢は朝、牢から出されるまで叫び続けたという。

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