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プロローグ
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たった一カ月。
領地に戻っていた間に、婚約者のセドリックが彼女の手に落ちるとは思わなかった。
私、アリエル・ワトーはコベール国のワトー侯爵家の一人娘。
父であるジョルジュ・ワトー侯爵は国王の懐刀とも呼ばれ、外交においてもその手腕を発揮していた。
周辺国と次々と条約を結んで友好関係を築き、この国の平和、貿易など国政の安定に大きく寄与する人物だった。
そして母は天候を読むのが得意で、領民への的確なアドバイス、采配で領地にめぐみをもたらしていた。夫婦は手を携えて領地の繁栄に尽力し、領民からの信頼も絶大だった。
そんな両親に私はとても大切に育てられた。
ただ甘やかされるばかりではなく、貴族としての知識やマナーに加え、教養、政治、領地経営なども厳しく教わった。
父は、他家の令嬢が婚約者探しや、ドレス宝石、パーティやお茶会ばかりに現を抜かすのを批判はしなかったが、一人の人間として自信を持って自立できる力をつけるようにとたくさんの事を教えてくれた。
おかげで、優秀で優しい令嬢だと評判となり、早いうちから縁談の話がたくさん舞い込むようになった。その中で、小さいころから取引でワトー家と顔見知りであったルブラン侯爵家の次男セドリックと婚約がきまり、公私ともに順調で幸せな日々を送っていた。
しかしそんな皆が憧れるような一家が壊れるのは一瞬だった。
父が急死し、直後に母は行方不明。
大混乱の中、侯爵家は父の弟が継いだ。
本来なら父の死後、アリエルが婿を取るか、アリエルが貴族学院を卒業し、成人して家督を継ぐまで、叔父のダニエルがアリエルの後見人となるはずだった。
しかし母の行方不明で混乱している間にダニエルが、「兄から万が一の時は頼むと言われて書類を預かっていた」と、すべての手続きを済ませてしまっていた。
ダニエルが侯爵となり、後継者はその息子となって、アリエルの立場は生まれ育った我が家だというのに居候になってしまった。
ダニエルの家族は両親を失ったアリエルを大事にはしてくれたが、両親のみならず、両親から受け継ぐはずだった大切な侯爵家まで失ったアリエルの苦しみや悲しみは大きく、虚無感に襲われた。
しかし、婿に入る予定が無くなっても変わらず、アリエルを気遣い、支えてくれていたセドリックのおかげで少しずつ再び顔を上げられるようになったのに。
それなのに・・・
なのに、一カ月ぶりに見かけた婚約者の腕には別の令嬢がいた。
領地に戻っていた間に、婚約者のセドリックが彼女の手に落ちるとは思わなかった。
私、アリエル・ワトーはコベール国のワトー侯爵家の一人娘。
父であるジョルジュ・ワトー侯爵は国王の懐刀とも呼ばれ、外交においてもその手腕を発揮していた。
周辺国と次々と条約を結んで友好関係を築き、この国の平和、貿易など国政の安定に大きく寄与する人物だった。
そして母は天候を読むのが得意で、領民への的確なアドバイス、采配で領地にめぐみをもたらしていた。夫婦は手を携えて領地の繁栄に尽力し、領民からの信頼も絶大だった。
そんな両親に私はとても大切に育てられた。
ただ甘やかされるばかりではなく、貴族としての知識やマナーに加え、教養、政治、領地経営なども厳しく教わった。
父は、他家の令嬢が婚約者探しや、ドレス宝石、パーティやお茶会ばかりに現を抜かすのを批判はしなかったが、一人の人間として自信を持って自立できる力をつけるようにとたくさんの事を教えてくれた。
おかげで、優秀で優しい令嬢だと評判となり、早いうちから縁談の話がたくさん舞い込むようになった。その中で、小さいころから取引でワトー家と顔見知りであったルブラン侯爵家の次男セドリックと婚約がきまり、公私ともに順調で幸せな日々を送っていた。
しかしそんな皆が憧れるような一家が壊れるのは一瞬だった。
父が急死し、直後に母は行方不明。
大混乱の中、侯爵家は父の弟が継いだ。
本来なら父の死後、アリエルが婿を取るか、アリエルが貴族学院を卒業し、成人して家督を継ぐまで、叔父のダニエルがアリエルの後見人となるはずだった。
しかし母の行方不明で混乱している間にダニエルが、「兄から万が一の時は頼むと言われて書類を預かっていた」と、すべての手続きを済ませてしまっていた。
ダニエルが侯爵となり、後継者はその息子となって、アリエルの立場は生まれ育った我が家だというのに居候になってしまった。
ダニエルの家族は両親を失ったアリエルを大事にはしてくれたが、両親のみならず、両親から受け継ぐはずだった大切な侯爵家まで失ったアリエルの苦しみや悲しみは大きく、虚無感に襲われた。
しかし、婿に入る予定が無くなっても変わらず、アリエルを気遣い、支えてくれていたセドリックのおかげで少しずつ再び顔を上げられるようになったのに。
それなのに・・・
なのに、一カ月ぶりに見かけた婚約者の腕には別の令嬢がいた。
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