スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの

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第2章 町の名はコイロ。カイロじゃないです。

2-4 金貨95枚、銀貨1枚です。

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 飛ぶように売れた、ネコ型霧吹き"ニャンシュッシュ"。150パンダ×1。200パンダ×47で、売り上げ、9,550パンダになりました。

 金貨95枚と、銀貨1枚をアイテムボックスに収納して、モーハンの店に戻ります。

「おお、イスケ。やっと戻ったか。で、これからここで商売だよな? 準備は出来たのか?」

「それが……。ニイル川のほとりで、全部売り切れてしまって」

「そうか。まぁ、売れたならいいじゃないか。で、お前は何を売っていたんだ」

 モーハンにキープしておいた、ニャンシュッシュを手渡す。

「これは涼を取るための魔道具で、こうやって、シュッシュと」

 モーハン目掛けて、霧を吹く。

「何だ、これは? 涼しいじゃないか。こんな魔道具なら、売り切れてしまっても仕方ないな。で、これは幾らで売ったんだ?」

「えっ、ああ。一つ、200パンダだよ」

「ああ、すまない。そんな貴重な魔道具だったなんて、知らないから、何度も涼んでしまった。申し訳ない」

「気にしないで。それはモーハンのために残しておいたやつだから」

「俺のために?」

「そのニャンシュッシュは、モーハンにあげるよ。俺用にもう一つキープしてるし」

「えっ? いいのか?」

「もちろん」

 モーハンの物になったと分かったからか、モーハンの父さんと叔父さんが、ニャンシュッシュで霧をかけ合い始めた。

「ああ、忘れていた。お茶を飲んでいってくれ」

「ありがとう」

 差し出されたお茶に口を付ける。暑い国で、熱いお茶も悪くない。紅茶によく似た味のお茶は、何だか気持ちを落ち着かせてくれる。

「モーハン、一つ聞いていいか?」

「何だ?」

 200パンダは金貨2枚と言われても、正直その価値が分からなかった。金貨を95枚も稼いで、金持ちになった気分だけど、ポリでの失敗もある。

「200パンダあれば、何が出来る?」

「何って、何でも出来るさ」

「じゃあ、あの扇子は幾ら?」

「ああ、あの羽の扇子は5パンダだ。あんな物が欲しいなら、好きなだけ持っていっていいぞ」

 好きなだけと言われても。貰うなら一つで充分だ。

「他には? この店で売っている物の値段が知りたい」

「ああ、そうだな。例えばこの燭台しょくだいは20パンダだ。で、そのランプは25パンダだ。この店で一番高いあの銀の食器だって全部で80パンダだ」

 何となく価値が分かってきた。高級そうな銀の食器セットと燭台とランプを全部買っても、125パンダだ。680円のニャンシュッシュの方が価値が高いなんて、やっぱりボロ儲けだったんじゃないだろうか。

「……イスケは旅の露天商だろ? もう宿は取っているのか?」

 ニャンシュッシュに興奮して、すっかり宿の事を忘れていた。

「いや、まだ決めていないけど」

「それなら早く決めた方がいい。あと1時間もすれば日没だからな」

「えっ? 日没が何か?」

「もしかして今日、コイロに着いたばかりなのか? このコイロでは日没後の外出は禁止だ。もう何年も戒厳令が敷かれているんだ」

「……戒厳令?」

「昔の王様達の呪いだよ」

「呪い? 詳しく聞かせてくれないか?」

「詳しく聞かせてやりたいが、もう時間がない。この店を閉めて、俺達も帰らないといけないし。イスケも早く宿を決めないといけないだろ?」

 そうだった。まずは宿だ。日没まで、後どれくらいの時間があるんだろう。

「モーハン。この近くで、適当な宿知らないか?」

「そうだな。ここからすぐって訳じゃないが、俺の家のすぐ近くになら宿はある。食堂はないけど、飯なら母さんに作らせるから、問題はないかな」

「良かった。出来たらその宿まで連れて行って欲しいんだけど。あっ、ちなみにその宿幾らくらい?」

 咄嗟に頭に浮かんだ、ロイヤル・ポリ。あれは本当に苦い思い出だ。

「あの魔道具を売って、儲けてきたんじゃないのか? 心配しなくても、イスケにとっては微々たる金だ。どんなに高くても、50パンダってとこかな? いや、50パンダなんて言って来たらボッタクリだな。その時は俺が交渉してやるさ」

「分かった。ありがとう」

「そうと決まったら、急ごう。日没になる前に」

「ああ」

「……父さん達は先に帰っててくれ」

 店の片付けを急ぐモーハンを、店の前で待つ。日が傾き始めて、通りを行く人達も急ぎ足だ。……戒厳令。いったいこのコイロの町には、何があるんだろう。
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