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第2章 町の名はコイロ。カイロじゃないです。
2-6 王様の亡霊は3人です。
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グーロ金貨のチャージを終えて、ひと息吐いていた時。モーハンが食事を届けに来てくれた。
「イスケみたいに、金持ちじゃないから、大した物じゃないけど。母さんの飯は美味いから。さぁ、一緒に食おうぜ」
「ああ。ありがとう」
運ばれてきた食事は、トマトや見覚えのない葉っぱと豆を混ぜた、サラダのような物と。肉団子、そして薄いパンだった。最初にパンを手にしたモーハンは、袋のように広げてサラダと肉団子を詰めている。
あー、そうやって食べるのね。……モーハンの真似をして、袋にしたパンに、サラダと肉団子を詰める。
「あっ! めちゃくちゃ美味い!」
「そうだろ? 美味いだろ?」
お世辞ではなく、本当に美味い。サラダの酸味と、肉団子のスパイスが絶妙のバランスで、少し焦げたパンの香ばしさと相まって、何とも言えない美味さだ。これは、ユウキの惣菜部にも教えてやりたい。あまりの美味さに、二つ目のパンに手を伸ばす。するとモーハンが目を細めて笑った。
「どうしたんだ? 何かおかしいか?」
「いいや。イスケみたいな金持ちが、母さんが作った飯を食って喜んでるのが、嬉しくて」
「いや、マジで美味いから! マジ、最高!」
モーハンへと、笑い返す。そう言えば、こっちに飛ばされてから、誰かと一緒に飯を食うのは初めてだ。やっぱり一人より、誰かと食った方が飯は美味い。
「あ、そうだ。王様達の呪いの話だったよな?」
呪い? そうだ。忘れていた。コイロの町に戒厳令が敷かれたのは、王様達の呪いのせいだった。
「そうそう。その呪いの話を聞かせてくれないか?」
「ああ。夜になると昔の王様、3人が亡霊となって、コイロの町に現れるんだ。その王様達の亡霊に会った奴は必ず死ぬって。王様達の呪いだって。だから亡霊が現れるようになってから、夜の外出は禁止になった」
「王様3人の亡霊が出没するんだ」
「ああ。昔の王様だよ。コフ王とコフラー王とモンコウラー王だ。ニイル川の向こう側にパラマッドって言う王様達の墓があって、夜になると墓を抜け出してくるんだ」
あー。そう言う事ですね。分かりましたよ。
コフ王=クフ王。
コフラー王=カフラー王。
モンコウラー王=メンカウラー王。
パラマッド=ピラミッド。
って、事ですね。それは、分かったとして、まさか、ハル君。俺に亡霊退治をしろなんて、言い出さないだろうなあ。俺はオカルトが一番苦手なんだ!
「もうその王様達の亡霊に会って、何人も死んでいるのか?」
「多分ね。噂だけど、100人は死んでるって」
「怖い話だな」
「ああ。でも、一番辛いのは夜に外出できない事かな? さっきのラージュいただろ? あいつには兄貴がいたんだ。ロンって言う。俺の親友だった。でも、夜に熱を出してしまって、医者も来てくれなくて。死んだんだ」
「戒厳令がなかったら、死んでなかったかもしれないんだな」
「多分な。でも、医者にも診てもらえず、死ぬ事はなかった」
モーハンの目が遠くなる。親友の死を思い出させた事。なんだか申し訳ない。
「あ、ごめん。暗くさせてしまったな。……イスケも疲れているだろ? 俺も、もう行くから、ゆっくり休めよ」
「ああ、おやすみ」
空になった皿を手に、モーハンが部屋を出て行った。そのタイミングで、スマホがぶるっと震えた。えっ? 何、このタイミング。もしかして、俺、監視されてるの?
(店長。モーハンから亡霊の話、聞きました?)
(ああ、今聞いた。まさか俺に亡霊退治しろとか、言い出さないだろうな?)
(そんな事は言いませんよ。だって店長、商人でしょ?)
良かった。これで一安心だ。
(でも、亡霊を野放しにする訳にはいかないですよね?)
(まあ、そうだけど)
ハル君、いったい何を言い出すの?
ハル君、いったい何を考えているの?
言い回しが、亡霊より怖すぎるんですけど。
(明日なんですけど)
やっぱり。ほら、来た。嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 何が明日なんですか? 亡霊には関わりませんよ。
(店長、聞いてますかー? 生きてますかー?)
(一応まだ生きてます)
(LINEしか連絡手段ないんですから、すぐに反応してくださいよ)
(はい。分かりました)
(それで、明日です。コイロの町にも、町役場があるんで、モーハンを連れて行って来てください)
(町役場?)
(はい。そこにボルードって言う、亡霊対策本部長がいるんで、本部長に亡霊が出ないようにするんで、力を貸してくれって申し出てください)
(えっ? 申し出て、どうするの?)
(町の職員を20人くらい借りればいいです。本部長は快く受けてくれますから)
(それで? それで、どうするの?)
(後は明日の朝、言いますよ。じゃ、おやすみなさい)
どう言う事? 退治はしなくていいけど、これじゃ、がっつり関わらないといけないんじゃ? 亡霊対策本部長? ボルードさん? おやすみなさいって、言われても、これ、絶対寝れないやつだ。
「イスケみたいに、金持ちじゃないから、大した物じゃないけど。母さんの飯は美味いから。さぁ、一緒に食おうぜ」
「ああ。ありがとう」
運ばれてきた食事は、トマトや見覚えのない葉っぱと豆を混ぜた、サラダのような物と。肉団子、そして薄いパンだった。最初にパンを手にしたモーハンは、袋のように広げてサラダと肉団子を詰めている。
あー、そうやって食べるのね。……モーハンの真似をして、袋にしたパンに、サラダと肉団子を詰める。
「あっ! めちゃくちゃ美味い!」
「そうだろ? 美味いだろ?」
お世辞ではなく、本当に美味い。サラダの酸味と、肉団子のスパイスが絶妙のバランスで、少し焦げたパンの香ばしさと相まって、何とも言えない美味さだ。これは、ユウキの惣菜部にも教えてやりたい。あまりの美味さに、二つ目のパンに手を伸ばす。するとモーハンが目を細めて笑った。
「どうしたんだ? 何かおかしいか?」
「いいや。イスケみたいな金持ちが、母さんが作った飯を食って喜んでるのが、嬉しくて」
「いや、マジで美味いから! マジ、最高!」
モーハンへと、笑い返す。そう言えば、こっちに飛ばされてから、誰かと一緒に飯を食うのは初めてだ。やっぱり一人より、誰かと食った方が飯は美味い。
「あ、そうだ。王様達の呪いの話だったよな?」
呪い? そうだ。忘れていた。コイロの町に戒厳令が敷かれたのは、王様達の呪いのせいだった。
「そうそう。その呪いの話を聞かせてくれないか?」
「ああ。夜になると昔の王様、3人が亡霊となって、コイロの町に現れるんだ。その王様達の亡霊に会った奴は必ず死ぬって。王様達の呪いだって。だから亡霊が現れるようになってから、夜の外出は禁止になった」
「王様3人の亡霊が出没するんだ」
「ああ。昔の王様だよ。コフ王とコフラー王とモンコウラー王だ。ニイル川の向こう側にパラマッドって言う王様達の墓があって、夜になると墓を抜け出してくるんだ」
あー。そう言う事ですね。分かりましたよ。
コフ王=クフ王。
コフラー王=カフラー王。
モンコウラー王=メンカウラー王。
パラマッド=ピラミッド。
って、事ですね。それは、分かったとして、まさか、ハル君。俺に亡霊退治をしろなんて、言い出さないだろうなあ。俺はオカルトが一番苦手なんだ!
「もうその王様達の亡霊に会って、何人も死んでいるのか?」
「多分ね。噂だけど、100人は死んでるって」
「怖い話だな」
「ああ。でも、一番辛いのは夜に外出できない事かな? さっきのラージュいただろ? あいつには兄貴がいたんだ。ロンって言う。俺の親友だった。でも、夜に熱を出してしまって、医者も来てくれなくて。死んだんだ」
「戒厳令がなかったら、死んでなかったかもしれないんだな」
「多分な。でも、医者にも診てもらえず、死ぬ事はなかった」
モーハンの目が遠くなる。親友の死を思い出させた事。なんだか申し訳ない。
「あ、ごめん。暗くさせてしまったな。……イスケも疲れているだろ? 俺も、もう行くから、ゆっくり休めよ」
「ああ、おやすみ」
空になった皿を手に、モーハンが部屋を出て行った。そのタイミングで、スマホがぶるっと震えた。えっ? 何、このタイミング。もしかして、俺、監視されてるの?
(店長。モーハンから亡霊の話、聞きました?)
(ああ、今聞いた。まさか俺に亡霊退治しろとか、言い出さないだろうな?)
(そんな事は言いませんよ。だって店長、商人でしょ?)
良かった。これで一安心だ。
(でも、亡霊を野放しにする訳にはいかないですよね?)
(まあ、そうだけど)
ハル君、いったい何を言い出すの?
ハル君、いったい何を考えているの?
言い回しが、亡霊より怖すぎるんですけど。
(明日なんですけど)
やっぱり。ほら、来た。嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 何が明日なんですか? 亡霊には関わりませんよ。
(店長、聞いてますかー? 生きてますかー?)
(一応まだ生きてます)
(LINEしか連絡手段ないんですから、すぐに反応してくださいよ)
(はい。分かりました)
(それで、明日です。コイロの町にも、町役場があるんで、モーハンを連れて行って来てください)
(町役場?)
(はい。そこにボルードって言う、亡霊対策本部長がいるんで、本部長に亡霊が出ないようにするんで、力を貸してくれって申し出てください)
(えっ? 申し出て、どうするの?)
(町の職員を20人くらい借りればいいです。本部長は快く受けてくれますから)
(それで? それで、どうするの?)
(後は明日の朝、言いますよ。じゃ、おやすみなさい)
どう言う事? 退治はしなくていいけど、これじゃ、がっつり関わらないといけないんじゃ? 亡霊対策本部長? ボルードさん? おやすみなさいって、言われても、これ、絶対寝れないやつだ。
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