スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの

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第3章 町の名はオーグラ。アーグラじゃないです。

3-1 天国のようにキレイな所です。

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 んー、よく寝たかも。んっ? 真っ暗? ちょっと待って。起きれない。身動き取れない。これは、どうなってるの? えーっと、寝る前の事を思い出せば……。あ! 俺、まだモンコウラー王の石棺の中なの?!

 ここから、どうやって出ればいいの? あ、こんな時は、ハル君だ。

 狭い石棺の中で、何とかポケットに入れていたスマホを手にする。

(起きたらLINEくださいね)

 あ、ハル君。寝てて返信してませんでした。ごめん。

(ハル君。今、起きた。俺、まだモンコウラー王の墓の中にいて、閉じ込められてんの。どうやったら、ここから出れるの?)

(おはようございます。起きましたね。今、真っ暗で狭い所にいますよね?)

(うん。そうそう。モンコウラー王の石棺の中)

(違いますよ。モンコウラー王の石棺からは、もう出てます)

 えっ? どう言う事? どう考えても、この暗さ、この狭さは石棺だと思うんですけど。

(じゃ、ここどこ?またいつもみたいに、暗闇さん。ここはどこですか?って、聞けばいいんでしょうか?)

(店長はアホですか?暗闇に名前付いてないですから)

(じゃあ、ここはどこなんですか?どうやって出るんですか?)

(心配しなくて大丈夫です。もうすぐ墓荒らしが来て、出してくれますから)

 墓荒らし? って、事はやっぱり石棺の中?

 えっ? あっ! えっ? あっ! えっ?

 あっ、まぶしい。突然の光に目がくらむ。ゴォーーー。この音は石棺のフタ? あっ、でも、やっと腕を伸ばせる。よかった。……って、誰ですか? どちらさん?

「わっ! 動いたぞ! 王妃の呪いだ! 皆んな逃げろー!」

 呪い? また物騒な事を言ってる奴がいるけど、これで体を起こせる。

 あれ? ここは、モンコウラー王の墓じゃない。どこだ? すごくキレイだ! 真っ白な大理石に、螺鈿らでんなのかな? 一面キラキラ光っている。あっ、あっちは庭だ。噴水? 何だ、この美しい世界は? もしかして、俺は死んで、天国に来てしまったのか?

「天国さーん!」

 ………………。

 返事はないか。

「キレイな場所さーん!」

 ………………。

 返事はないんですね。ってか、コレで3回目だけど、32歳にもなって、俺は何をしているんだか……。

 あ、あ、あー! 庭に人がいるじゃないか。とりあえずあの人に聞いてみよう。

「あのぅ。すみません。ここは天国ですか?」

「何を馬鹿な事を言っているんだ? まぁ、天国みたいに美しい所だがな」

「天国じゃないんですね。それじゃ、ここは?」

「ここか? ここはマージ・タハルだ」

 マージ・タハル? 何か聞いた事がある。もしかして、タージ・マハルって事ですか。んじゃ、ここはインド?

「ここって、もしかしてインドですか? いや、違う。アンドとかウンドとかエンドとか? もしかしてオンド?」

「何を訳の分からん事を、べらべらと。ここはモガール帝国の都。オーグラじゃ」

 オーグラ? アーグラって事ですか?

 ああ……美弥。ごめんなさい。確か、新婚旅行にアーグラのタージ・マハルに行きたいって、言っていたよね。俺、一人で来ちゃったけど、抜けがけじゃないから。それに、オーグラのマージ・タハルらしいし。世界線が微妙に違うので、許してください!

 ぶるっ。

(店長、墓から出ましたか?すごくキレイな所でしょ?)

(うん。行った事ないけど、天国みたいにキレイ)

(でも、そこはもう町中なんで、商売も忘れないでくださいね。その町もめちゃくちゃ暑いんで、ワンシュッシュをお願いします。それとその街は魔王が囚われてますから、色んな意味で気をつけてください)

 えっ? また暑い所なの? あ、そうそうワンシュッシュね。忘れていません。覚えてますって、って。違うーーーーー! 魔王って、何なんですか?

 魔王って、魔王ですよね?

 絶対、悪い奴ですよね? 良い魔王なんて、聞いた事ないし。気になる。気になる。気になるー。でも、囚われているなら、大丈夫か。それに俺は、勇者でも、冒険者でもない! 俺は、商人だ! って、事で。まずは商売です。

 はい、ありました。ワンシュッシュ。しっかり売れ残っています。しかも、在庫50って。これも、一つも売れなかったって事ですね。仕方ない。

 イヌ型霧吹き"ワンシュッシュ"
 1個680円×50個で、34,000円!

 ここの噴水で水を汲んで、と。準備は整いました。えーっと。そうだ。モガール帝国のオーグラの町で、商売始めさせていただきます。
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