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第3章 町の名はオーグラ。アーグラじゃないです。
3-4 抜け道は前皇帝が作ったものです。
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大きな扉を引き開けて、薄暗く長い通路を行く、ジャイルの背中を追う。……長い通路と言っても、100メートルあるか、ないかの距離だ。こんな短い距離で、隣国と行ったり来たり出来るんだから、何らかの魔力が働いてたり、仕掛けがあるんだろうけど、……さっぱり分からない。
「……じゃあ、ここで山分けといこうぜ。金貨100枚ずつだ」
ジャイルが足を止めたのは、噴水のある小さな庭だった。
「ああ、分かった」
ジャイルに差し出された、もう一つの袋に金貨100枚を移していく。……1枚、2枚、3枚。
「時間もかけずに、あのワンシュッシュを全部捌いてやったんだから、俺に感謝しろよ!」
そう言って、笑うジャイルだったけど、感謝されたいのは、こっちの方だ。
「何がたよ。時間もかけずに、金貨100枚も稼がせてやったんだ。ジャイルこそ、俺に感謝しろよ!」
金貨を100枚入れた袋を、ジャイルに手渡す。この金貨100枚がどれだけの価値かは分からないけど、宿代には充分だろう。
「……で、後回しにした話は? 何で隣国のファブリーズなんて町に繋がってんだ?」
「ああ、あれは前皇帝が逃げるために、作った抜け道さ」
前皇帝? 抜け道? どう言う事なんだ?
「よく分からないけど、その前皇帝はさっきの抜け道で、隣国へ逃げたって事だな」
「いや、逃げてはいない」
全く話が見えてこない。それにジャイルはどうして、そんな抜け道を知っていたのだろう。
「……なぁ、イスケ。お前は魔道具を扱う行商だろ? 他にもまだ魔道具を持っているのか?」
「ん? そうだなぁ、まぁ、あるって言えばあるけど。……もしかして、また俺と商売して、半分抜くつもりじゃ?」
「それもいいかもな。でも、そうじゃない」
ジャイルが目を伏せた。
「なぁ、ジャイル。詳しく話してくれないか? 前皇帝が誰で、どうして隣国へ逃げる抜け道を作ったのか。どうして逃げていないのか。それと、お前がどう関係しているのかを」
伏せたいたはずのジャイルの目が、真っ直ぐこちらへと、向かってきた。何かを覚悟する時に見せる目だ。
「ああ、そうだな。イスケは信用に値する男だし、助けになるかもしれないしな。……ところで今日の宿は決めているのか?」
「いや、まだだけど」
「それなら俺の所に来い。充分稼がせて貰ったから、宿代はいらない」
それはすごく助かる。でも、ジャイルを信用し切っていいかは、まだ疑問が残る。だからと言って、これから宿を探すのも面倒だ。だけど宿代はいらないなんて、有り難い話だ。
んーーーーーー。
「じゃあ、これから俺の所に行こう」
まだ返事をしていないのに、歩き始めたジャイルに手を引かれる。……断る材料もそれ程ないし、ここは身を任せるしかないのかもしれない。
「……で、前皇帝って?」
「ああ、前皇帝はシャー・ジャランだ」
「シャー・ジャラン?」
「そうだ。兄……いや、現皇帝のアウランガの手で、今はオーグラ城に幽閉されている」
「幽閉?」
「ああ、囚われているって事だ」
えっ?! 囚われている? 何だかどこかで聞いた話だけど。……何だ? 何だ? 何だ? あっ! そうか! ハル君から聞かされていたんだ。そうそう! この町には魔王が囚われているって話だったじゃないか。
えっ! 魔王ーーーーーー! 急に心臓がバクバクしてきた。ああ、頭も物凄く混乱してきた。オーグラ城に囚われているのは、シャー・ジャランで、ハル君の話では魔王が囚われていると。って事は、シャー・ジャランか魔王って事ですか! って事は! って事は! ジャイルが魔王の手先だとも考えられるって言う、話じゃないんでしょうか?
「あのー、一つ聞いても?」
「何だ?」
恐る恐る聞いてみる。
「あのー、その囚われている、シャー・ジャランって、あのー、魔王だったりしたりする? いや、したりしますか?」
「魔王?」
「あ、何でもないです。お気になさらず」
「……それはアウランガが広めたデタラメだ。確かにシャー・ジャランは少しの魔力は使えるけど、その魔力を悪用する事はなかった。だけどアウランガはシャー・ジャランを幽閉するために、魔王に仕立て上げたのさ」
あれ? 何でだろう。ジャイルがとても寂しそうな目をしている。シャー・ジャランが魔王に仕立てられたって話に、嘘はないのかもしれない。
「……じゃあ、ここで山分けといこうぜ。金貨100枚ずつだ」
ジャイルが足を止めたのは、噴水のある小さな庭だった。
「ああ、分かった」
ジャイルに差し出された、もう一つの袋に金貨100枚を移していく。……1枚、2枚、3枚。
「時間もかけずに、あのワンシュッシュを全部捌いてやったんだから、俺に感謝しろよ!」
そう言って、笑うジャイルだったけど、感謝されたいのは、こっちの方だ。
「何がたよ。時間もかけずに、金貨100枚も稼がせてやったんだ。ジャイルこそ、俺に感謝しろよ!」
金貨を100枚入れた袋を、ジャイルに手渡す。この金貨100枚がどれだけの価値かは分からないけど、宿代には充分だろう。
「……で、後回しにした話は? 何で隣国のファブリーズなんて町に繋がってんだ?」
「ああ、あれは前皇帝が逃げるために、作った抜け道さ」
前皇帝? 抜け道? どう言う事なんだ?
「よく分からないけど、その前皇帝はさっきの抜け道で、隣国へ逃げたって事だな」
「いや、逃げてはいない」
全く話が見えてこない。それにジャイルはどうして、そんな抜け道を知っていたのだろう。
「……なぁ、イスケ。お前は魔道具を扱う行商だろ? 他にもまだ魔道具を持っているのか?」
「ん? そうだなぁ、まぁ、あるって言えばあるけど。……もしかして、また俺と商売して、半分抜くつもりじゃ?」
「それもいいかもな。でも、そうじゃない」
ジャイルが目を伏せた。
「なぁ、ジャイル。詳しく話してくれないか? 前皇帝が誰で、どうして隣国へ逃げる抜け道を作ったのか。どうして逃げていないのか。それと、お前がどう関係しているのかを」
伏せたいたはずのジャイルの目が、真っ直ぐこちらへと、向かってきた。何かを覚悟する時に見せる目だ。
「ああ、そうだな。イスケは信用に値する男だし、助けになるかもしれないしな。……ところで今日の宿は決めているのか?」
「いや、まだだけど」
「それなら俺の所に来い。充分稼がせて貰ったから、宿代はいらない」
それはすごく助かる。でも、ジャイルを信用し切っていいかは、まだ疑問が残る。だからと言って、これから宿を探すのも面倒だ。だけど宿代はいらないなんて、有り難い話だ。
んーーーーーー。
「じゃあ、これから俺の所に行こう」
まだ返事をしていないのに、歩き始めたジャイルに手を引かれる。……断る材料もそれ程ないし、ここは身を任せるしかないのかもしれない。
「……で、前皇帝って?」
「ああ、前皇帝はシャー・ジャランだ」
「シャー・ジャラン?」
「そうだ。兄……いや、現皇帝のアウランガの手で、今はオーグラ城に幽閉されている」
「幽閉?」
「ああ、囚われているって事だ」
えっ?! 囚われている? 何だかどこかで聞いた話だけど。……何だ? 何だ? 何だ? あっ! そうか! ハル君から聞かされていたんだ。そうそう! この町には魔王が囚われているって話だったじゃないか。
えっ! 魔王ーーーーーー! 急に心臓がバクバクしてきた。ああ、頭も物凄く混乱してきた。オーグラ城に囚われているのは、シャー・ジャランで、ハル君の話では魔王が囚われていると。って事は、シャー・ジャランか魔王って事ですか! って事は! って事は! ジャイルが魔王の手先だとも考えられるって言う、話じゃないんでしょうか?
「あのー、一つ聞いても?」
「何だ?」
恐る恐る聞いてみる。
「あのー、その囚われている、シャー・ジャランって、あのー、魔王だったりしたりする? いや、したりしますか?」
「魔王?」
「あ、何でもないです。お気になさらず」
「……それはアウランガが広めたデタラメだ。確かにシャー・ジャランは少しの魔力は使えるけど、その魔力を悪用する事はなかった。だけどアウランガはシャー・ジャランを幽閉するために、魔王に仕立て上げたのさ」
あれ? 何でだろう。ジャイルがとても寂しそうな目をしている。シャー・ジャランが魔王に仕立てられたって話に、嘘はないのかもしれない。
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