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第4章 町の名はワィーン。ウィーンじゃないです。
4-2 ワィーンのコーヒーは不味いです。
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何の操作もしていないのに、幾つかの舟の間を縫って、小舟は船着き場に着いた。さあさあ、ワィーンの町のこれが一歩目です。小舟から足を下ろす。んー、ここがワィーン。何だか建物からして、豪華じゃありませんか。……ドナワ川沿いに並ぶ建物は、宮殿と呼ぶに相応しい壮麗さがあるじゃありませんか。180度首を回して、初めての町を堪能していると、年配の男が声をかけて来た。
「おい、舟をここに停めるなら、停泊料を払いな! 10サラだ!」
停泊料? サラ? 確かこの国の通貨はスリングだと、ハル君は言っていたけど、サラって何だ?
「サラって、スリングで言うと?」
「何を言ってんだ。10サラは銀貨1枚だろ。100サラで1スリングだ。金貨1枚」
んーーー。サラってのが、スリングの補助通貨的なのは分かったけど、今はスリングもサラも持っていない。んーーー。こう言う時は、チョコサンドビスケット! サービスして5箱いきましょう。はい、390円お買い上げ!
「すみません。お金持ってないんで、これじゃダメですか?」
「何じゃ? これは?」
「とても美味しい異世界のお菓子です。……とりあえず一枚食べてみてください」
「どれどれ。んっ! なんじゃこの上品な甘さは。美味い! 美味すぎる!」
「よかった。これ全てお渡しするんで、停泊料の代わりにしてもらえないですか?」
「え! 全部とな。金は要らん! 好きなだけ停めておけ!」
「ありがとうございます!」
やっぱりチョコサンドビスケットは最高ですね。1箱、78円なのに無敵ですよ。……で、これで後はカフェだ。とりあえずコーヒー飲んでいいって、ハル君言ってたから、まずはコーヒーいただきましょう。
さてさて、カフェはどこでしょうか? って、探す必要はないんですね。ドナワ川沿いの通り、宮殿のような建物の前に、テラス席が並んでいる。あの雰囲気でカフェじゃなかったら、なんだって言うんでしょう? それくらい、見るからのカフェが目に飛び込んできた。
「……コーヒーお願いします」
「あんた1人かい?」
「そうですけど」
「ふっ」
え? 今、鼻で笑いました? 俺、笑われちゃいました? 何で? 店員の男はそれ以上、何も言わず奥に引っ込んだ。……そう言えば、冷ややかな視線を感じなくもない。
あれ? 周りの席を見回すと、着飾った紳士淑女の皆さんが、カップルで席に着いているじゃありませんか。……もしかしてデートスポット的なとこなんでしょうか?
くそっ。俺だって、来れるものなら、美弥と来たかった。
「……コーヒーどうぞ」
さっきの店員がテーブルに、コーヒーの入ったカップを運んで来た。
「どうも」
「50サラね」
えっ? 50サラ? コーヒー1杯、5,000円って事? 高っ! って、俺、金持ってないから、早く商売しないと、コーヒー代も払えない。ハル君、遠隔で操作してなんて言ってたけど、一体何を売らされるんだろう。……ぼんやりと商売の事を浮かべながら、コーヒーを口に含む。
ブーーーーーーッ! 何じゃ、これ?
確かにコーヒーの味だけど、苦すぎる。それに口の中いっぱいに残る、このザラザラは……。これって豆? もしかして濾してない? ……不味すぎる。こんな不味いコーヒー飲んだことない。
不味いコーヒーに顔を顰めた時。ボンッ! テーブルの上にダンボールが2箱現れた。
ぶるっ。スマホが震える。
(店長、今届いたでしょ? それをそのカフェで売ってください。1箱、1スリング。200箱丸々売れ残っていたんで、200スリングですよ)
ダンボールを開けなくても、ハル君に送られた物が何かは分かる。ユウキのバックヤードで何年も積まれたままのダンボール。親父とお袋とハル君の嫌味を聞かされながら、何度も目にした、ダンボールに書かれたロゴ。
コーヒーフィルター"ビッグ3000"50枚入り。
ビッグ3000の名前の通り、3000ml、要は3リットル用のコーヒーフィルターなんです。大は小を兼ねると思ったんだけど、全くダメでした。そもそも3リットル用のコーヒーメーカーがないのに、何でコーヒーフィルターが売れると思ったんだと、散々こき下ろされた代物です。……はい。
「おい、舟をここに停めるなら、停泊料を払いな! 10サラだ!」
停泊料? サラ? 確かこの国の通貨はスリングだと、ハル君は言っていたけど、サラって何だ?
「サラって、スリングで言うと?」
「何を言ってんだ。10サラは銀貨1枚だろ。100サラで1スリングだ。金貨1枚」
んーーー。サラってのが、スリングの補助通貨的なのは分かったけど、今はスリングもサラも持っていない。んーーー。こう言う時は、チョコサンドビスケット! サービスして5箱いきましょう。はい、390円お買い上げ!
「すみません。お金持ってないんで、これじゃダメですか?」
「何じゃ? これは?」
「とても美味しい異世界のお菓子です。……とりあえず一枚食べてみてください」
「どれどれ。んっ! なんじゃこの上品な甘さは。美味い! 美味すぎる!」
「よかった。これ全てお渡しするんで、停泊料の代わりにしてもらえないですか?」
「え! 全部とな。金は要らん! 好きなだけ停めておけ!」
「ありがとうございます!」
やっぱりチョコサンドビスケットは最高ですね。1箱、78円なのに無敵ですよ。……で、これで後はカフェだ。とりあえずコーヒー飲んでいいって、ハル君言ってたから、まずはコーヒーいただきましょう。
さてさて、カフェはどこでしょうか? って、探す必要はないんですね。ドナワ川沿いの通り、宮殿のような建物の前に、テラス席が並んでいる。あの雰囲気でカフェじゃなかったら、なんだって言うんでしょう? それくらい、見るからのカフェが目に飛び込んできた。
「……コーヒーお願いします」
「あんた1人かい?」
「そうですけど」
「ふっ」
え? 今、鼻で笑いました? 俺、笑われちゃいました? 何で? 店員の男はそれ以上、何も言わず奥に引っ込んだ。……そう言えば、冷ややかな視線を感じなくもない。
あれ? 周りの席を見回すと、着飾った紳士淑女の皆さんが、カップルで席に着いているじゃありませんか。……もしかしてデートスポット的なとこなんでしょうか?
くそっ。俺だって、来れるものなら、美弥と来たかった。
「……コーヒーどうぞ」
さっきの店員がテーブルに、コーヒーの入ったカップを運んで来た。
「どうも」
「50サラね」
えっ? 50サラ? コーヒー1杯、5,000円って事? 高っ! って、俺、金持ってないから、早く商売しないと、コーヒー代も払えない。ハル君、遠隔で操作してなんて言ってたけど、一体何を売らされるんだろう。……ぼんやりと商売の事を浮かべながら、コーヒーを口に含む。
ブーーーーーーッ! 何じゃ、これ?
確かにコーヒーの味だけど、苦すぎる。それに口の中いっぱいに残る、このザラザラは……。これって豆? もしかして濾してない? ……不味すぎる。こんな不味いコーヒー飲んだことない。
不味いコーヒーに顔を顰めた時。ボンッ! テーブルの上にダンボールが2箱現れた。
ぶるっ。スマホが震える。
(店長、今届いたでしょ? それをそのカフェで売ってください。1箱、1スリング。200箱丸々売れ残っていたんで、200スリングですよ)
ダンボールを開けなくても、ハル君に送られた物が何かは分かる。ユウキのバックヤードで何年も積まれたままのダンボール。親父とお袋とハル君の嫌味を聞かされながら、何度も目にした、ダンボールに書かれたロゴ。
コーヒーフィルター"ビッグ3000"50枚入り。
ビッグ3000の名前の通り、3000ml、要は3リットル用のコーヒーフィルターなんです。大は小を兼ねると思ったんだけど、全くダメでした。そもそも3リットル用のコーヒーメーカーがないのに、何でコーヒーフィルターが売れると思ったんだと、散々こき下ろされた代物です。……はい。
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