スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの

文字の大きさ
32 / 70
第4章 町の名はワィーン。ウィーンじゃないです。

4-2 ワィーンのコーヒーは不味いです。

しおりを挟む
 何の操作もしていないのに、幾つかの舟の間を縫って、小舟は船着き場に着いた。さあさあ、ワィーンの町のこれが一歩目です。小舟から足を下ろす。んー、ここがワィーン。何だか建物からして、豪華じゃありませんか。……ドナワ川沿いに並ぶ建物は、宮殿と呼ぶに相応しい壮麗さがあるじゃありませんか。180度首を回して、初めての町を堪能していると、年配の男が声をかけて来た。

「おい、舟をここに停めるなら、停泊料を払いな! 10サラだ!」

 停泊料? サラ? 確かこの国の通貨はスリングだと、ハル君は言っていたけど、サラって何だ?

「サラって、スリングで言うと?」

「何を言ってんだ。10サラは銀貨1枚だろ。100サラで1スリングだ。金貨1枚」

 んーーー。サラってのが、スリングの補助通貨的なのは分かったけど、今はスリングもサラも持っていない。んーーー。こう言う時は、チョコサンドビスケット! サービスして5箱いきましょう。はい、390円お買い上げ!

「すみません。お金持ってないんで、これじゃダメですか?」

「何じゃ? これは?」

「とても美味しい異世界のお菓子です。……とりあえず一枚食べてみてください」

「どれどれ。んっ! なんじゃこの上品な甘さは。美味い! 美味すぎる!」

「よかった。これ全てお渡しするんで、停泊料の代わりにしてもらえないですか?」

「え! 全部とな。金は要らん! 好きなだけ停めておけ!」

「ありがとうございます!」

 やっぱりチョコサンドビスケットは最高ですね。1箱、78円なのに無敵ですよ。……で、これで後はカフェだ。とりあえずコーヒー飲んでいいって、ハル君言ってたから、まずはコーヒーいただきましょう。

 さてさて、カフェはどこでしょうか? って、探す必要はないんですね。ドナワ川沿いの通り、宮殿のような建物の前に、テラス席が並んでいる。あの雰囲気でカフェじゃなかったら、なんだって言うんでしょう? それくらい、見るからのカフェが目に飛び込んできた。

「……コーヒーお願いします」

「あんた1人かい?」

「そうですけど」

「ふっ」

 え? 今、鼻で笑いました? 俺、笑われちゃいました? 何で? 店員の男はそれ以上、何も言わず奥に引っ込んだ。……そう言えば、冷ややかな視線を感じなくもない。

 あれ? 周りの席を見回すと、着飾った紳士淑女の皆さんが、カップルで席に着いているじゃありませんか。……もしかしてデートスポット的なとこなんでしょうか?

 くそっ。俺だって、来れるものなら、美弥と来たかった。

「……コーヒーどうぞ」

 さっきの店員がテーブルに、コーヒーの入ったカップを運んで来た。

「どうも」

「50サラね」

 えっ? 50サラ? コーヒー1杯、5,000円って事? 高っ! って、俺、金持ってないから、早く商売しないと、コーヒー代も払えない。ハル君、遠隔で操作してなんて言ってたけど、一体何を売らされるんだろう。……ぼんやりと商売の事を浮かべながら、コーヒーを口に含む。

 ブーーーーーーッ! 何じゃ、これ?

 確かにコーヒーの味だけど、苦すぎる。それに口の中いっぱいに残る、このザラザラは……。これって豆? もしかしてしてない? ……不味すぎる。こんな不味いコーヒー飲んだことない。

 不味いコーヒーに顔をしかめた時。ボンッ! テーブルの上にダンボールが2箱現れた。

 ぶるっ。スマホが震える。

(店長、今届いたでしょ? それをそのカフェで売ってください。1箱、1スリング。200箱丸々売れ残っていたんで、200スリングですよ)

 ダンボールを開けなくても、ハル君に送られた物が何かは分かる。ユウキのバックヤードで何年も積まれたままのダンボール。親父とお袋とハル君の嫌味を聞かされながら、何度も目にした、ダンボールに書かれたロゴ。

 コーヒーフィルター"ビッグ3000"50枚入り。

 ビッグ3000の名前の通り、3000ml、要は3リットル用のコーヒーフィルターなんです。大は小を兼ねると思ったんだけど、全くダメでした。そもそも3リットル用のコーヒーメーカーがないのに、何でコーヒーフィルターが売れると思ったんだと、散々こき下ろされた代物です。……はい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム) 目を覚ますとそこは石畳の町だった 異世界の中世ヨーロッパの街並み 僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた 案の定この世界はステータスのある世界 村スキルというもの以外は平凡なステータス 終わったと思ったら村スキルがスタートする

裏スキルで最強異世界攻略~異世界召喚されたのだが、勇者じゃないと追い出されたので新しい国を造りました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
いつものようにヤンキーに絡まれて逃げていたら、いつの間にか異世界召喚されてました。でも、スキルが『農民』しかなかったから、いらないと追放されました。 エブリスタ、カクヨム、ノベリズム、ノベルアップ、小説家になろうにも掲載しています。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

処理中です...