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第4章 町の名はワィーン。ウィーンじゃないです。
4-4 音楽の都で音楽家と遭遇です。
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「……それじゃぁ、これでコーヒー代を」
受け取った金貨から、1枚をリナンへと差し出す。「どうも!」と、一言、金貨を受け取ろうとしたリナンを、サネイルが遮る。
「あんたからお代は受け取れないよ。不味いコーヒーを飲ませてしまったんだしな」
要らないと言うなら、払うつもりはない。あんなに苦くてザラザラのコーヒーを飲まされたんだから。……リナンから金貨を奪い返す。その時だ。
「……本当に美味しいコーヒーを飲ませてくれるのは、あんたか?」
当然、高さのある帽子を被った男が、声を掛けてきた。
「ああ、ソリエリ先生。こんにちは。そうなんです、この男性が美味しいコーヒーの作り方を、教えてくれたんです。……そう言えば、あんたまだ名前を聞いていなかったな」
「あ、俺は偉介です」
「イスケか。……ソリエリ先生、このイスケが作ったコーヒーを一度飲んでください」
サネイルに促される。もう作り方は教えたんだし、フィルターを使えば、誰だって不味くないコーヒーを淹れれるのに。……そんな事を考えながら、新しい鍋にフィルターを敷き、煮詰めたコーヒーを流し入れる。
「……お好みでミルクと蜂蜜をどうぞ」
ソリエリにカップを差し出す。何だかウェイターの気分だ。
「ソリエリ先生、いかがですか?」
サネイルが伺いを立てている。
「いやあ、これは美味い。何度もサネイルが作ったコーヒーは飲んだが、今までのあれは何だったんだ。イスケさん、これは最高だ。それにミルクと蜂蜜を入れると、また味が変わって最高だ」
何だか、べた褒めされていますが、ただビッグ3000で濾しただけなんですけど。……で、一つ気になる事が。さっきからサネイルは、ソリエリを先生と呼んでいるけど、教師なの? サネイルの学校の先生と考えると、少し若いような。
「あのぅ、ソリエリさん。あなたは何の先生なんですか? 学校の先生?」
「いえ、サネイルが勝手にそう呼んでるだけで、私は先生ではないですよ」
ソリエリはコーヒーを飲みながら、ただニコニコと笑うだけだ。
「イスケ、失礼だな。ソリエリ先生は宮廷お抱えの大音楽家だ!」
サネイルが鼻息を荒くする。宮廷? 音楽家? 確かに音楽の町だと、少し浮かれたけど。こんな所で遭遇?
「はあ、音楽家ですか」
「イスケ! 音楽家じゃない。大音楽家だ! あのハピスビルキ家お抱えの宮廷音楽家の大先生だ。バートーヴァンや、ルスト、ショーベルタなんかも、皆んなソリエリ先生の弟子なんだ」
ん? ハピスビルキ家って、ハプスブルク家の事? で、バートーヴァンは、ベートーヴェンで、ルストは誰だ? ショーベルタは、きっとシューベルトだ。ん? じゃあ、ルストはリストか。……って事は、このソリエリは、……多分、サリエリって事ですかね。
「……それは、ソリエリ先生、失礼しました。それでは俺はこれで失礼します」
商売も済んで、もうこのカフェに用はない。音楽の町で音楽家にも会えたし、充分だ。音楽の町なんて、少し浮かれはしたけど、正直クラッシック音楽は苦手だ。……子供の頃、お袋にずっと家で聞かされていたから、人より少し詳しいけど、クラシック音楽を聞くと、お袋を思い出すんだ。大人になって、売れ残りをガミガミ言ってくるお袋を今は思い出したくない!
「イスケさん、お待ちください。今度、私のサロンで演奏会があるんです。そこであなたのコーヒーをお出ししたいのですが」
突然だ。ソリエリが訳の分からない話を振ってきた。俺のコーヒーじゃない。このカフェの、サネイルとリナンのコーヒーだ。
「あの、俺のコーヒーじゃないんで、演奏会で出すかどうかは、サネイルに聞いてください」
「……ソリエリ先生、喜んで! 演奏会へは、私もリナンも、もちろんイスケも一緒にまいります」
「おお、サネイル。ありがとう」
えっ? 何、勝手に話をまとめちゃってんですか? 何で俺も行く事なってんですか?
「俺は行くとは……」
否定しようとした口を、ソリエリが遮る。
「次の演奏会はあのムーツァルトが来るんだ」
「ムーツァルトって、あの悪の化身と名高いムーツァルトですか?」
「ああ、そうなんだ。確かに才能ある音楽家だけど、演奏会をめちゃくちゃにしかねないんだ」
えーっと。ムーツァルトって、モーツァルトですよね。……悪の化身って、どう言う事? 魔物って事ですか? 嫌だーーー! これ絶対関わらない方がいいやつですよね。関わっちゃダメなやつですよね。……ハル君ーーーーーー!
受け取った金貨から、1枚をリナンへと差し出す。「どうも!」と、一言、金貨を受け取ろうとしたリナンを、サネイルが遮る。
「あんたからお代は受け取れないよ。不味いコーヒーを飲ませてしまったんだしな」
要らないと言うなら、払うつもりはない。あんなに苦くてザラザラのコーヒーを飲まされたんだから。……リナンから金貨を奪い返す。その時だ。
「……本当に美味しいコーヒーを飲ませてくれるのは、あんたか?」
当然、高さのある帽子を被った男が、声を掛けてきた。
「ああ、ソリエリ先生。こんにちは。そうなんです、この男性が美味しいコーヒーの作り方を、教えてくれたんです。……そう言えば、あんたまだ名前を聞いていなかったな」
「あ、俺は偉介です」
「イスケか。……ソリエリ先生、このイスケが作ったコーヒーを一度飲んでください」
サネイルに促される。もう作り方は教えたんだし、フィルターを使えば、誰だって不味くないコーヒーを淹れれるのに。……そんな事を考えながら、新しい鍋にフィルターを敷き、煮詰めたコーヒーを流し入れる。
「……お好みでミルクと蜂蜜をどうぞ」
ソリエリにカップを差し出す。何だかウェイターの気分だ。
「ソリエリ先生、いかがですか?」
サネイルが伺いを立てている。
「いやあ、これは美味い。何度もサネイルが作ったコーヒーは飲んだが、今までのあれは何だったんだ。イスケさん、これは最高だ。それにミルクと蜂蜜を入れると、また味が変わって最高だ」
何だか、べた褒めされていますが、ただビッグ3000で濾しただけなんですけど。……で、一つ気になる事が。さっきからサネイルは、ソリエリを先生と呼んでいるけど、教師なの? サネイルの学校の先生と考えると、少し若いような。
「あのぅ、ソリエリさん。あなたは何の先生なんですか? 学校の先生?」
「いえ、サネイルが勝手にそう呼んでるだけで、私は先生ではないですよ」
ソリエリはコーヒーを飲みながら、ただニコニコと笑うだけだ。
「イスケ、失礼だな。ソリエリ先生は宮廷お抱えの大音楽家だ!」
サネイルが鼻息を荒くする。宮廷? 音楽家? 確かに音楽の町だと、少し浮かれたけど。こんな所で遭遇?
「はあ、音楽家ですか」
「イスケ! 音楽家じゃない。大音楽家だ! あのハピスビルキ家お抱えの宮廷音楽家の大先生だ。バートーヴァンや、ルスト、ショーベルタなんかも、皆んなソリエリ先生の弟子なんだ」
ん? ハピスビルキ家って、ハプスブルク家の事? で、バートーヴァンは、ベートーヴェンで、ルストは誰だ? ショーベルタは、きっとシューベルトだ。ん? じゃあ、ルストはリストか。……って事は、このソリエリは、……多分、サリエリって事ですかね。
「……それは、ソリエリ先生、失礼しました。それでは俺はこれで失礼します」
商売も済んで、もうこのカフェに用はない。音楽の町で音楽家にも会えたし、充分だ。音楽の町なんて、少し浮かれはしたけど、正直クラッシック音楽は苦手だ。……子供の頃、お袋にずっと家で聞かされていたから、人より少し詳しいけど、クラシック音楽を聞くと、お袋を思い出すんだ。大人になって、売れ残りをガミガミ言ってくるお袋を今は思い出したくない!
「イスケさん、お待ちください。今度、私のサロンで演奏会があるんです。そこであなたのコーヒーをお出ししたいのですが」
突然だ。ソリエリが訳の分からない話を振ってきた。俺のコーヒーじゃない。このカフェの、サネイルとリナンのコーヒーだ。
「あの、俺のコーヒーじゃないんで、演奏会で出すかどうかは、サネイルに聞いてください」
「……ソリエリ先生、喜んで! 演奏会へは、私もリナンも、もちろんイスケも一緒にまいります」
「おお、サネイル。ありがとう」
えっ? 何、勝手に話をまとめちゃってんですか? 何で俺も行く事なってんですか?
「俺は行くとは……」
否定しようとした口を、ソリエリが遮る。
「次の演奏会はあのムーツァルトが来るんだ」
「ムーツァルトって、あの悪の化身と名高いムーツァルトですか?」
「ああ、そうなんだ。確かに才能ある音楽家だけど、演奏会をめちゃくちゃにしかねないんだ」
えーっと。ムーツァルトって、モーツァルトですよね。……悪の化身って、どう言う事? 魔物って事ですか? 嫌だーーー! これ絶対関わらない方がいいやつですよね。関わっちゃダメなやつですよね。……ハル君ーーーーーー!
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