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第4章 町の名はワィーン。ウィーンじゃないです。
4-5 強制的に演奏会に参加です。
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「イスケさん。あなたは外国の方ですよね? お顔が何と言いましょうか、とてもオリエンタルだ。旅のお方なら、よければの話ですが……」
ソリエリは何を言いたいんだ? ……外国と言うか、国が違うだけじゃなく、世界も違うんだから、見た目が違っても当然の話だ。それをオリエンタルだなんて。って、オリエンタルって、どう言う意味だ。
まぁ、そこは深入りせずに。で、よければ、何だ?
「あのぅ。よければ何ですか? どんな話ですか?」
「ええ、よければ演奏会の日まで、私の宮殿に宿泊されたらいかがでしょうかと。旅のお方なら宿は必要でしょう。サロンでの演奏会まで、また3日程、日がありますし」
宮殿! 宿! 飛び付きたい話ではあるけど、演奏会に付き合わされるのは、間違いない話じゃないか。……演奏会は構わない。コーヒーくらい淹れてやってもいい。でも、悪の化身のムーツァルトには絶対に関わりたくない。
ああーーー。でも宮殿には泊まりたい。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
ぶるっ。ソリエリへの返事に悩んでいると、スマホが震えた。
(店長、何か悩んでいるみたいですけど、悩んだところで、演奏会には行きますからね)
(えっ? 何で? 悪の化身がいる所なんか行きたくないんですけど!)
(店長、忘れてませんか? 店長がいるのは、俺が書いた世界ですよ。って、事は?)
って、事は? そうでした。ハル君が書いた世界なんだから、ハル君が演奏会に行くと書けば、俺は演奏会に行かされるんだ。……何だろう。この抗えない感は。辛い。……俺の人生に、俺の意思は反映されないって事ですね。
(分かったら、ソリエリの所に泊まりましょうね。で、演奏会も行くんですよ。店長にはムーツァルトを退治するって役目があるんですから)
ん? 退治するの? 退治するって事は、やっぱりムーツァルトは悪者って事じゃないですか。
(俺にムーツァルト退治なんて無理です)
(何言ってんですか。店長はノポレオンを退治したんですよ。自信持ってください)
そうだった。俺はノポレオンを倒した男だ! ムーツァルトの1人や2人、何て事はない! なんて乗せられても、無理なものは、無理なんです。
(無理だよー)
ああーーー。また一方的だ。最後に送った一言が既読にならない。
「……馬車が来たようなんで、そろそろ行きましょうか」
馬車まで用意されてるんですね。はー、逃げ出したいのに。
「それじゃあ、イスケ。またサロンの演奏会で」
サネイルが軽く手を挙げる。……何だかなー、何だかなー。あーあ。
紳士的な態度で接っするソリエリだけど、馬車に乗せる時は強引だった。まるで拉致される気分だ。
「……イスケさんの作ったコーヒーは、本当に美味しかった」
「あれは俺じゃなくて、誰が淹れても同じですよ。サネイルにも作り方を教えているので、演奏会の時に、サネイルが淹れても美味しくなります」
本当の話だ。ただ濾せばいいだけなんだから。
「いやあ、ですがあのコーヒーを最初に作ったのは、イスケさんでしょう。そんなあなたには是非演奏会に来ていただきたい」
ハル君の決定事項はかわせないんだし、とりあえず情報収集して、何か対応策を講じておきたい。
「……それで、ムーツァルトです。サネイルが悪の化身なんて言ってましたけど、どう言う事ですか?」
「ムーツァルトは……」
ソリエリが少し顔を伏せた。
「そんなにヤバいんですか?」
「……あの男は悪の化身どころじゃない。あれは魔物だ」
えっ? また魔物? なんですか。魔物は嫌です。
「魔物?」
「ああ、魔物で無ければあんな所業が出来るはずがない。あいつのせいで、どれだけ大勢の人が命を奪われたか」
げっ! 命を奪ったって。ガチでやばい奴なのね。
「……もうすぐ到着になります。詳しくは後ほどお話しましょう。あの男がどれだけ恐ろしい男かを」
促され馬車を降りる。ソリエリの宮殿は町中にあった。ただ宮殿と言っても、町並みが全て豪華な建物で、ずらっと並んだ建物の一つがソリエリの宮殿だ。
「……先生、お帰りなさいませ」
宮殿の入口で、1人の男が出迎えていた。
「只今戻りましたよ。……それで、バートーヴァンよ。この客人をサロンへ案内してくれないか? 私は先にルストの様子を見てくるので」
「はい、分かりました」
ん? バートーヴァン? この見た目ボサボサ頭の、何だか清潔感に欠ける人がベートーヴェンなんですか?
ソリエリは何を言いたいんだ? ……外国と言うか、国が違うだけじゃなく、世界も違うんだから、見た目が違っても当然の話だ。それをオリエンタルだなんて。って、オリエンタルって、どう言う意味だ。
まぁ、そこは深入りせずに。で、よければ、何だ?
「あのぅ。よければ何ですか? どんな話ですか?」
「ええ、よければ演奏会の日まで、私の宮殿に宿泊されたらいかがでしょうかと。旅のお方なら宿は必要でしょう。サロンでの演奏会まで、また3日程、日がありますし」
宮殿! 宿! 飛び付きたい話ではあるけど、演奏会に付き合わされるのは、間違いない話じゃないか。……演奏会は構わない。コーヒーくらい淹れてやってもいい。でも、悪の化身のムーツァルトには絶対に関わりたくない。
ああーーー。でも宮殿には泊まりたい。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
ぶるっ。ソリエリへの返事に悩んでいると、スマホが震えた。
(店長、何か悩んでいるみたいですけど、悩んだところで、演奏会には行きますからね)
(えっ? 何で? 悪の化身がいる所なんか行きたくないんですけど!)
(店長、忘れてませんか? 店長がいるのは、俺が書いた世界ですよ。って、事は?)
って、事は? そうでした。ハル君が書いた世界なんだから、ハル君が演奏会に行くと書けば、俺は演奏会に行かされるんだ。……何だろう。この抗えない感は。辛い。……俺の人生に、俺の意思は反映されないって事ですね。
(分かったら、ソリエリの所に泊まりましょうね。で、演奏会も行くんですよ。店長にはムーツァルトを退治するって役目があるんですから)
ん? 退治するの? 退治するって事は、やっぱりムーツァルトは悪者って事じゃないですか。
(俺にムーツァルト退治なんて無理です)
(何言ってんですか。店長はノポレオンを退治したんですよ。自信持ってください)
そうだった。俺はノポレオンを倒した男だ! ムーツァルトの1人や2人、何て事はない! なんて乗せられても、無理なものは、無理なんです。
(無理だよー)
ああーーー。また一方的だ。最後に送った一言が既読にならない。
「……馬車が来たようなんで、そろそろ行きましょうか」
馬車まで用意されてるんですね。はー、逃げ出したいのに。
「それじゃあ、イスケ。またサロンの演奏会で」
サネイルが軽く手を挙げる。……何だかなー、何だかなー。あーあ。
紳士的な態度で接っするソリエリだけど、馬車に乗せる時は強引だった。まるで拉致される気分だ。
「……イスケさんの作ったコーヒーは、本当に美味しかった」
「あれは俺じゃなくて、誰が淹れても同じですよ。サネイルにも作り方を教えているので、演奏会の時に、サネイルが淹れても美味しくなります」
本当の話だ。ただ濾せばいいだけなんだから。
「いやあ、ですがあのコーヒーを最初に作ったのは、イスケさんでしょう。そんなあなたには是非演奏会に来ていただきたい」
ハル君の決定事項はかわせないんだし、とりあえず情報収集して、何か対応策を講じておきたい。
「……それで、ムーツァルトです。サネイルが悪の化身なんて言ってましたけど、どう言う事ですか?」
「ムーツァルトは……」
ソリエリが少し顔を伏せた。
「そんなにヤバいんですか?」
「……あの男は悪の化身どころじゃない。あれは魔物だ」
えっ? また魔物? なんですか。魔物は嫌です。
「魔物?」
「ああ、魔物で無ければあんな所業が出来るはずがない。あいつのせいで、どれだけ大勢の人が命を奪われたか」
げっ! 命を奪ったって。ガチでやばい奴なのね。
「……もうすぐ到着になります。詳しくは後ほどお話しましょう。あの男がどれだけ恐ろしい男かを」
促され馬車を降りる。ソリエリの宮殿は町中にあった。ただ宮殿と言っても、町並みが全て豪華な建物で、ずらっと並んだ建物の一つがソリエリの宮殿だ。
「……先生、お帰りなさいませ」
宮殿の入口で、1人の男が出迎えていた。
「只今戻りましたよ。……それで、バートーヴァンよ。この客人をサロンへ案内してくれないか? 私は先にルストの様子を見てくるので」
「はい、分かりました」
ん? バートーヴァン? この見た目ボサボサ頭の、何だか清潔感に欠ける人がベートーヴェンなんですか?
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