スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの

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第5章 町の名はニスカ。ナスカじゃないです。

5-3 ワイバーンの地上絵です。

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 んー、よく寝たなー。って、ここはどこだっけ? それにしても何でこんなに暑いんだ? めちゃくちゃ汗かいてる。ん? 誰かがツンツンしてる。

 ツンツン。ツンツン。

 誰か知らないけど、っぺツンツンはやめてください。ってか、何でこんな暑いんだ? それに何か動き辛い。加えて頬っぺツンツン攻撃だ。……んー、思い出せ、俺。……あっ、ここはペルーのナスカ。じゃなくてポルーのニスカか。で? ああ、ニスカが朝は冷え込むからって、暖かくして寝たんだ。

 ああ。はい、はい、はい。分かりましたよ。砂漠気候だから、朝は冷え込むけど、日中は暑いって事ですね。確かにもう陽が高い。それでだ。ここがニスカって事と、汗をかいてる理由は分かったけど。このツンツンは誰だ?

 ツンツン。ツンツン。

「……って、さっきからの、そのツンツンやめてくれ!」

「あ、やっと起きた」

 大声に反応したからか、ようやく起きたからか、ツンツン攻撃が止まった。

「邪魔だからあっちに行けよ」

 覗き込んできた顔。男? いや、若いな。少年って感じか。

「こんなに広いんだから、どこで寝てたっていいだろ?」

 反論してみたが、無意味な事だった。少年が立ち上がり、俺を転がし始める。

「ああ。分かったから。蹴らないでくれ」

「お前がいるから石を置けない」

 石? 何の事かは分からないけど、蹴られるのは御免だ。すぐにでも立ち上がりたいけど、寝袋のファスナーがいつの間にか、上がりきって手が出せない。

「すぐに避けるから、ファスナー下ろしてくれないか?」

 少年に頼んでみる。

「ファスナーって何だ?」

「俺の首の所に、銀色のキラキラのがあるだろ? それを足まで下ろしてくれ」

 少年にも伝わったようだ。その手でファスナーがゆっくり下されていく。……ああ。開放される。芋虫が蝶になる気分だ。

「ありがとう、これであっちへ行くから」

 寝袋から開放され、ようやく立ち上がる。暖ったかマッチョ太陽君を、脇に抱えて、寝袋を引き摺る。

「ここならいいか?」

「いいけど、まだ寝るのか?」

 確かに。少年の言う通りだ。充分寝たんだから、寝直す必要はない。

「いや、もう寝ない」

「そうか。それでお前は誰だ? 変な格好をしてるけど」

「ああ、俺は偉介。お前は?」

「俺はマーペン。お前はどこから来たんだ? 昨日はいなかった」

「どこからって、ワィーンって言う町だけど」

「町か。いいなぁ。俺は村しか知らない。このニスカの村しか知らない」

 きっと昨日、ニスカが言っていた、20km離れた村の少年ですね。

「マーペン。お前はニスカの村に住んでいるんだな。……それでここで何をしているんだ?」

「何って、見て分からないのか? 神様に捧げる絵を描いているんだよ」

 見て分からないから、聞いているのに、マーペンはちょっと冷たい。それよりも絵を描いてるって言うわりに、手に持っているのは、石だけだ。ん? さっき石を置けないって、言ってたよな? って、事は、もしかして地上絵を描いてるって事? あの謎だらけの地上絵を描いてるところに出会でくわしたって事? もしそうなら、テンション上がるんですけど。

「マーペンは今、何の絵を描いているんだ?」

「ワイバーンだよ」

 さらりと言うマーペン。……ワイバーンって、確かドラゴンの一種でしょ? 俺の中のイメージでは、翼のあるドラゴンの事なんですけど。

「そのワイバーンには翼がある?」

「翼がなかったら、飛べないだろ?」

 逆にマーペンに聞き返される。……間違いない。俺のイメージしたワイバーンと、マーペンの知るワイバーンは同じだ。確かワイバーンって、ヨーロッパなんかで紋章に使われてるはずだけど、ヨーロッパじゃないこの世界にもんだな。……ん? いる? えっ! ここにワイバーンがって事?

「マーペンは、ワイバーンを見た事があるのか?」

「あるに決まってるだろ? もうワイバーンが飛来してくる季節のはずなんだけど、今年はまだ来ていないんだ。……だからこうして、神様にお願いしているんじゃないか」

 いや、いや。何でそんな怖いものを、わざわざ呼ぶ必要があるの? 襲われるかもしれないし。襲われたら、死ぬかもだし。……もうこれは絶対、ワイバーンが飛来するまでには、逃げて次の国に行かなきゃですね。せっかくハル君が、憧れの国に飛ばしてくれたけど、ワイバーンに襲われるくらいなら、憧れは捨てます。はい。もう捨てました。
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