43 / 70
第5章 町の名はニスカ。ナスカじゃないです。
5-3 ワイバーンの地上絵です。
しおりを挟む
んー、よく寝たなー。って、ここはどこだっけ? それにしても何でこんなに暑いんだ? めちゃくちゃ汗かいてる。ん? 誰かがツンツンしてる。
ツンツン。ツンツン。
誰か知らないけど、頬っぺツンツンはやめてください。ってか、何でこんな暑いんだ? それに何か動き辛い。加えて頬っぺツンツン攻撃だ。……んー、思い出せ、俺。……あっ、ここはペルーのナスカ。じゃなくてポルーのニスカか。で? ああ、ニスカが朝は冷え込むからって、暖かくして寝たんだ。
ああ。はい、はい、はい。分かりましたよ。砂漠気候だから、朝は冷え込むけど、日中は暑いって事ですね。確かにもう陽が高い。それでだ。ここがニスカって事と、汗をかいてる理由は分かったけど。このツンツンは誰だ?
ツンツン。ツンツン。
「……って、さっきからの、そのツンツンやめてくれ!」
「あ、やっと起きた」
大声に反応したからか、ようやく起きたからか、ツンツン攻撃が止まった。
「邪魔だからあっちに行けよ」
覗き込んできた顔。男? いや、若いな。少年って感じか。
「こんなに広いんだから、どこで寝てたっていいだろ?」
反論してみたが、無意味な事だった。少年が立ち上がり、俺を転がし始める。
「ああ。分かったから。蹴らないでくれ」
「お前がいるから石を置けない」
石? 何の事かは分からないけど、蹴られるのは御免だ。すぐにでも立ち上がりたいけど、寝袋のファスナーがいつの間にか、上がりきって手が出せない。
「すぐに避けるから、ファスナー下ろしてくれないか?」
少年に頼んでみる。
「ファスナーって何だ?」
「俺の首の所に、銀色のキラキラのがあるだろ? それを足まで下ろしてくれ」
少年にも伝わったようだ。その手でファスナーがゆっくり下されていく。……ああ。開放される。芋虫が蝶になる気分だ。
「ありがとう、これであっちへ行くから」
寝袋から開放され、ようやく立ち上がる。暖ったかマッチョ太陽君を、脇に抱えて、寝袋を引き摺る。
「ここならいいか?」
「いいけど、まだ寝るのか?」
確かに。少年の言う通りだ。充分寝たんだから、寝直す必要はない。
「いや、もう寝ない」
「そうか。それでお前は誰だ? 変な格好をしてるけど」
「ああ、俺は偉介。お前は?」
「俺はマーペン。お前はどこから来たんだ? 昨日はいなかった」
「どこからって、ワィーンって言う町だけど」
「町か。いいなぁ。俺は村しか知らない。このニスカの村しか知らない」
きっと昨日、ニスカが言っていた、20km離れた村の少年ですね。
「マーペン。お前はニスカの村に住んでいるんだな。……それでここで何をしているんだ?」
「何って、見て分からないのか? 神様に捧げる絵を描いているんだよ」
見て分からないから、聞いているのに、マーペンはちょっと冷たい。それよりも絵を描いてるって言うわりに、手に持っているのは、石だけだ。ん? さっき石を置けないって、言ってたよな? って、事は、もしかして地上絵を描いてるって事? あの謎だらけの地上絵を描いてるところに出会したって事? もしそうなら、テンション上がるんですけど。
「マーペンは今、何の絵を描いているんだ?」
「ワイバーンだよ」
さらりと言うマーペン。……ワイバーンって、確かドラゴンの一種でしょ? 俺の中のイメージでは、翼のあるドラゴンの事なんですけど。
「そのワイバーンには翼がある?」
「翼がなかったら、飛べないだろ?」
逆にマーペンに聞き返される。……間違いない。俺のイメージしたワイバーンと、マーペンの知るワイバーンは同じだ。確かワイバーンって、ヨーロッパなんかで紋章に使われてるはずだけど、ヨーロッパじゃないこの世界にもいるんだな。……ん? いる? えっ! ここにワイバーンがいるって事?
「マーペンは、ワイバーンを見た事があるのか?」
「あるに決まってるだろ? もうワイバーンが飛来してくる季節のはずなんだけど、今年はまだ来ていないんだ。……だからこうして、神様にお願いしているんじゃないか」
いや、いや。何でそんな怖いものを、わざわざ呼ぶ必要があるの? 襲われるかもしれないし。襲われたら、死ぬかもだし。……もうこれは絶対、ワイバーンが飛来するまでには、逃げて次の国に行かなきゃですね。せっかくハル君が、憧れの国に飛ばしてくれたけど、ワイバーンに襲われるくらいなら、憧れは捨てます。はい。もう捨てました。
ツンツン。ツンツン。
誰か知らないけど、頬っぺツンツンはやめてください。ってか、何でこんな暑いんだ? それに何か動き辛い。加えて頬っぺツンツン攻撃だ。……んー、思い出せ、俺。……あっ、ここはペルーのナスカ。じゃなくてポルーのニスカか。で? ああ、ニスカが朝は冷え込むからって、暖かくして寝たんだ。
ああ。はい、はい、はい。分かりましたよ。砂漠気候だから、朝は冷え込むけど、日中は暑いって事ですね。確かにもう陽が高い。それでだ。ここがニスカって事と、汗をかいてる理由は分かったけど。このツンツンは誰だ?
ツンツン。ツンツン。
「……って、さっきからの、そのツンツンやめてくれ!」
「あ、やっと起きた」
大声に反応したからか、ようやく起きたからか、ツンツン攻撃が止まった。
「邪魔だからあっちに行けよ」
覗き込んできた顔。男? いや、若いな。少年って感じか。
「こんなに広いんだから、どこで寝てたっていいだろ?」
反論してみたが、無意味な事だった。少年が立ち上がり、俺を転がし始める。
「ああ。分かったから。蹴らないでくれ」
「お前がいるから石を置けない」
石? 何の事かは分からないけど、蹴られるのは御免だ。すぐにでも立ち上がりたいけど、寝袋のファスナーがいつの間にか、上がりきって手が出せない。
「すぐに避けるから、ファスナー下ろしてくれないか?」
少年に頼んでみる。
「ファスナーって何だ?」
「俺の首の所に、銀色のキラキラのがあるだろ? それを足まで下ろしてくれ」
少年にも伝わったようだ。その手でファスナーがゆっくり下されていく。……ああ。開放される。芋虫が蝶になる気分だ。
「ありがとう、これであっちへ行くから」
寝袋から開放され、ようやく立ち上がる。暖ったかマッチョ太陽君を、脇に抱えて、寝袋を引き摺る。
「ここならいいか?」
「いいけど、まだ寝るのか?」
確かに。少年の言う通りだ。充分寝たんだから、寝直す必要はない。
「いや、もう寝ない」
「そうか。それでお前は誰だ? 変な格好をしてるけど」
「ああ、俺は偉介。お前は?」
「俺はマーペン。お前はどこから来たんだ? 昨日はいなかった」
「どこからって、ワィーンって言う町だけど」
「町か。いいなぁ。俺は村しか知らない。このニスカの村しか知らない」
きっと昨日、ニスカが言っていた、20km離れた村の少年ですね。
「マーペン。お前はニスカの村に住んでいるんだな。……それでここで何をしているんだ?」
「何って、見て分からないのか? 神様に捧げる絵を描いているんだよ」
見て分からないから、聞いているのに、マーペンはちょっと冷たい。それよりも絵を描いてるって言うわりに、手に持っているのは、石だけだ。ん? さっき石を置けないって、言ってたよな? って、事は、もしかして地上絵を描いてるって事? あの謎だらけの地上絵を描いてるところに出会したって事? もしそうなら、テンション上がるんですけど。
「マーペンは今、何の絵を描いているんだ?」
「ワイバーンだよ」
さらりと言うマーペン。……ワイバーンって、確かドラゴンの一種でしょ? 俺の中のイメージでは、翼のあるドラゴンの事なんですけど。
「そのワイバーンには翼がある?」
「翼がなかったら、飛べないだろ?」
逆にマーペンに聞き返される。……間違いない。俺のイメージしたワイバーンと、マーペンの知るワイバーンは同じだ。確かワイバーンって、ヨーロッパなんかで紋章に使われてるはずだけど、ヨーロッパじゃないこの世界にもいるんだな。……ん? いる? えっ! ここにワイバーンがいるって事?
「マーペンは、ワイバーンを見た事があるのか?」
「あるに決まってるだろ? もうワイバーンが飛来してくる季節のはずなんだけど、今年はまだ来ていないんだ。……だからこうして、神様にお願いしているんじゃないか」
いや、いや。何でそんな怖いものを、わざわざ呼ぶ必要があるの? 襲われるかもしれないし。襲われたら、死ぬかもだし。……もうこれは絶対、ワイバーンが飛来するまでには、逃げて次の国に行かなきゃですね。せっかくハル君が、憧れの国に飛ばしてくれたけど、ワイバーンに襲われるくらいなら、憧れは捨てます。はい。もう捨てました。
37
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる