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第6章 町の名はプラハ。パラフじゃないです。……どう言う事?
6-2 世界の文豪と入浴です。
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「……湯が沸いたからイスケも来い」
通された部屋で裸になって、毛布に包まっていると、全裸のフランツがドアを開けた。確かに濡れた服を着たままだと、寒くてどうしようもないけど、ちょっとお兄さん、全裸って。……もしかしたら俺が毛布を借りちゃってるから? ですか?
「ああ、ごめん」
「何が?」
思わず口を突いた謝罪に、フランツが首を傾げる。……包まっていた毛布を外すと、ぶるっと、すぐに寒気が襲う。
「ほら、早く」
促されバスルームへと急ぐ。ドアを開けるなりバスタブに飛び入るフランツ。……あの世界的有名な文豪と一緒に風呂に入るなんて、何だかおかしな気分だけど。この寒さを回避するには、ウダウダ考えてる場合じゃない。
「……はぁー、生き返る」
バスタブに飛び入って、温かいお湯に浸かっての第一声。当然の言葉にフランツが笑い出す。ん? 何でだ? どこにも笑いのポイントはなかったと思うけど。
「死ぬためにブルタヴァにいた訳じゃないんだな」
「死ぬため? どう言う意味」
「だってこの季節だぜ。まだ氷は張っていないけど、こんな寒い中、ブルタヴァに飛び込むなんて、死にたい奴の考える事だ」
あ、そんなふうに見られていたんだ。ワイバーンから落ちて、死んでいたかもだけど、そんな事は望んでいない。
「いや、たまたま落ちた場所がブルタヴァ川だったんだ。……死ななくてよかったし、今こうして温かいお湯に浸かって、本当生き返った」
「生き返ったって事は、死にかけてたって事だ。俺に感謝しろよ」
『変身』くらいしか、カフカの小説は知らないけど、あの狂気じみた話からは想像も出来ないくらい、フランツはよく笑うし明るい。もしかして同姓同名ってだけで別人? いや、この顔に見覚えがあるんだから別人ではないはず。
「充分温まったな」
バスタブから上がったフランツが投げたタオルを、受け取る。事情が全く分からないから、とりあえずハル君だ。体を拭きながらそんな事を考えていると、フランツがシャツとズボンを手渡してくれた。
「イスケの服はまだ乾いてないから、とりあえずそれ着てて」
フランツってば、どれだけ優しいんでしょう。
「あ、ありがとう」
「俺はちょっと出かけてくるから、イスケは俺の部屋で休んでて」
「え? 出かけんの? それなのに俺は居ていいの?」
「居ていいも何も。行く所ないだろ? まぁ、俺の勘だけど」
グサッ。はい、図星です。今一つ状況が飲み込めていないのに、どこに出かけられる訳でもない。
「父さんと母さんが戻る前に、俺も戻るから、ゆっくりしてて」
そう言ってフランツは行ってしまった。……父さん母さんと言うんだから、ここはフランツの実家なのか。……まぁ、とりあえずハル君だ。
(ハル君。ニスカきらまた飛ばされたんだけど、なんかいつもと違うんだけど)
(何がですか? 川で溺れかけたけど、ちゃんと助けられたでしょ。それに温かい湯船にも入って解凍されたはずですよ)
(それがさぁ、いつものあの微妙なネーミングセンスじゃないんだよね)
(微妙って失礼ですよ)
(あ、ごめん)
(店長が溺れていたのはバルタヴォ川で、今いるのはパラフの町でしょ? それと溺れているところを、ツランフ・カフフに助けられたはずですけど)
(それがね。俺が今いる町はプラハで、パラフじゃないの。溺れていたのはブルタヴァ川で、俺を助けてくれたのは、フランツ・カフカなの)
(何を馬鹿な事言ってるんですか?)
(馬鹿な事じゃなくて、本当なの。フランツが言ってたから間違いないよ)
(マジすか?)
(マジだよ)
(有り得ないんすけど)
(いや、有り得るんですけど)
まじでどうなっているんだろう? ハル君が書いた小説の世界に俺はいないの? もしかして元の世界に戻ったって事? あ、違う。俺が居た元の世界にフランツはいない。フランツは過去の人だし。ん? 俺、過去に来たって事? あー、よく分からない。
(店長、俺を騙そうとしています?)
(そんな事してません)
(んじゃ、何でしょう?俺にも分からないです。笑)
"笑"って、何だよー。……俺、これからどうなるんだ?
(ハル君。俺、どうなるの?)
(さあ?どうなるんでしょう。乞うご期待ですね)
乞うご期待って。ハル君にも分からないなんて。無理だ! 無理だ! 無理だ! 俺の頭じゃ、こうなった理由なんて閃くはずがない。
通された部屋で裸になって、毛布に包まっていると、全裸のフランツがドアを開けた。確かに濡れた服を着たままだと、寒くてどうしようもないけど、ちょっとお兄さん、全裸って。……もしかしたら俺が毛布を借りちゃってるから? ですか?
「ああ、ごめん」
「何が?」
思わず口を突いた謝罪に、フランツが首を傾げる。……包まっていた毛布を外すと、ぶるっと、すぐに寒気が襲う。
「ほら、早く」
促されバスルームへと急ぐ。ドアを開けるなりバスタブに飛び入るフランツ。……あの世界的有名な文豪と一緒に風呂に入るなんて、何だかおかしな気分だけど。この寒さを回避するには、ウダウダ考えてる場合じゃない。
「……はぁー、生き返る」
バスタブに飛び入って、温かいお湯に浸かっての第一声。当然の言葉にフランツが笑い出す。ん? 何でだ? どこにも笑いのポイントはなかったと思うけど。
「死ぬためにブルタヴァにいた訳じゃないんだな」
「死ぬため? どう言う意味」
「だってこの季節だぜ。まだ氷は張っていないけど、こんな寒い中、ブルタヴァに飛び込むなんて、死にたい奴の考える事だ」
あ、そんなふうに見られていたんだ。ワイバーンから落ちて、死んでいたかもだけど、そんな事は望んでいない。
「いや、たまたま落ちた場所がブルタヴァ川だったんだ。……死ななくてよかったし、今こうして温かいお湯に浸かって、本当生き返った」
「生き返ったって事は、死にかけてたって事だ。俺に感謝しろよ」
『変身』くらいしか、カフカの小説は知らないけど、あの狂気じみた話からは想像も出来ないくらい、フランツはよく笑うし明るい。もしかして同姓同名ってだけで別人? いや、この顔に見覚えがあるんだから別人ではないはず。
「充分温まったな」
バスタブから上がったフランツが投げたタオルを、受け取る。事情が全く分からないから、とりあえずハル君だ。体を拭きながらそんな事を考えていると、フランツがシャツとズボンを手渡してくれた。
「イスケの服はまだ乾いてないから、とりあえずそれ着てて」
フランツってば、どれだけ優しいんでしょう。
「あ、ありがとう」
「俺はちょっと出かけてくるから、イスケは俺の部屋で休んでて」
「え? 出かけんの? それなのに俺は居ていいの?」
「居ていいも何も。行く所ないだろ? まぁ、俺の勘だけど」
グサッ。はい、図星です。今一つ状況が飲み込めていないのに、どこに出かけられる訳でもない。
「父さんと母さんが戻る前に、俺も戻るから、ゆっくりしてて」
そう言ってフランツは行ってしまった。……父さん母さんと言うんだから、ここはフランツの実家なのか。……まぁ、とりあえずハル君だ。
(ハル君。ニスカきらまた飛ばされたんだけど、なんかいつもと違うんだけど)
(何がですか? 川で溺れかけたけど、ちゃんと助けられたでしょ。それに温かい湯船にも入って解凍されたはずですよ)
(それがさぁ、いつものあの微妙なネーミングセンスじゃないんだよね)
(微妙って失礼ですよ)
(あ、ごめん)
(店長が溺れていたのはバルタヴォ川で、今いるのはパラフの町でしょ? それと溺れているところを、ツランフ・カフフに助けられたはずですけど)
(それがね。俺が今いる町はプラハで、パラフじゃないの。溺れていたのはブルタヴァ川で、俺を助けてくれたのは、フランツ・カフカなの)
(何を馬鹿な事言ってるんですか?)
(馬鹿な事じゃなくて、本当なの。フランツが言ってたから間違いないよ)
(マジすか?)
(マジだよ)
(有り得ないんすけど)
(いや、有り得るんですけど)
まじでどうなっているんだろう? ハル君が書いた小説の世界に俺はいないの? もしかして元の世界に戻ったって事? あ、違う。俺が居た元の世界にフランツはいない。フランツは過去の人だし。ん? 俺、過去に来たって事? あー、よく分からない。
(店長、俺を騙そうとしています?)
(そんな事してません)
(んじゃ、何でしょう?俺にも分からないです。笑)
"笑"って、何だよー。……俺、これからどうなるんだ?
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