スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの

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第6章 町の名はプラハ。パラフじゃないです。……どう言う事?

6-4 両親の登場です。

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 しばらくしてフランツが戻って来た。手には紙袋を持っている。買い物にでも出掛けていたのかな。

「あ、フランツ。よかった帰って来てくれて」

「何だよ。俺が居なくて寂しかったのか?」

 フランツが笑う。何でだかは分からないけど、まるで旧知の仲のような態度だ。ほんの数時間前に初めて会って……と、言うか助けられたんだけど、フランツの態度はそれ以上だ。

「って言うか、フランツの両親が二人揃って、怪我して帰って来るかもなんだ」

「ん? どう言う事だ? 俺の両親が怪我だって? イスケ、もしかして……」

 フランツが言葉を詰まらせる。もしかして。の、続きは、もしかして未来から来たとかですか? もしかして、バレてます? もしかして、何ですか?

「……もしかして、何だよ?」

 怖いけど、とりあえず聞いてみる。何か疑われたら、正直に話せばいいだけだ。信じてもらえるかどうかは、分からないけど。

「もしかして俺の父さんと母さんに会ったのか?」

 あら。そう言う解釈ですか。

「いや、会ってないけど」

「そうなんだ。まあ、怪我くらい誰だってするしな」

 何だ? そんな軽くていいの? そんなやり取りをしていたら。

「あ、父さん達が帰って来たみたいだ」

 フランツが言った。

「何で分かるんだ?」

「階段をのぼる音さ。あの音は父さん達だ」

 そんな音すら気付かなかったのに、フランツはよほど耳がいいらしい。

「おい、フランツ。手を貸してくれ」

 しわがれた男の声が聞こえた。フランツの父親だろう。

「どうしたの?」

「ああ、母さんもわしも怪我をしてしまったんだ」

 姿を見せた二人は、同じように顔が血だらけだ。……やっぱりハル君の小説の通りだ。きっと巨大ゴキブリに襲われたんだ。

「……ん? 誰だ? フランツ、お前の友達か?」

 そりゃ、そうでした。見ず知らずの人間が、出迎えているんだから。

「あ、うん。イスケ。俺の友達」

 友達と紹介されたら、友達と名乗るしかないな。

「……お邪魔してます。フランツ君の友達の偉介です。結城偉介と言います」

「ユーキースケさん。フランツがお世話になっています」

 フランツの母親だ。お世話になってるのは、俺の方なんだけど。それより、ユーキースケって。名前なんて何でもいいけど、やっぱりユウキとイスケの間に一拍置いて欲しい。

「あのぅ。お怪我大丈夫ですか?」

 血だらけの顔は、どうやら額を怪我したようだ。二人揃って気の毒に。

「え、あっ。はい。まあ」

 フランツの母親が答える。だけど何故だろう? 曖昧な返事をするだけだ。

「……父さん、母さん。一体、何があったの?」

「いや、何でもない」
「大したことないのよ」

 血だらけの顔して、言う台詞じゃないんですけど。……二人して、巨大ゴキブリの事は隠しているんですね。……これもハル君の言う通りって訳か。

「お二人はもしかして、広場で怪我をされたんじゃないですか?」

「どうしてそれを知っているんだ?」

 フランツの父親が驚いている。でもこれで確定だ。フランツの両親は広場で巨大ゴキブリに襲われた。あ、って事は、俺が退治しに行くんだよな。フランツと一緒に。あーーー、嫌だな。しかも巨大ゴキブリと一緒に葬られるんだよな。嫌だなー、嫌だなー。何か回避する方法ないかなあ。

「広場で怪我したって、何だよ! だから何で怪我したんだよ」

 フランツが大きな声を出した。そりゃ、両親が怪我したんだから当然の反応だ。

「……それがゴキブリが」

 フランツの母親がポツリと吐いた。やっぱりゴキブリだ。

「イスケ。行くぞ!」

 フランツが鼻息を荒くしている。

「行くって、どこへ?」

「どこって、広場に決まってるだろ?」

 あーーー、とうとうこの瞬間が来ました。広場にゴキブリ退治に行くのですね。友達としての関係はこの後、終わるのですね。あーーー、その手で俺を葬るんですね。
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