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第6章 町の名はプラハ。パラフじゃないです。……どう言う事?
6-9 『変身』の始まりです。
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夕食を終えて、フランツはベッドで横になっていた。2杯のワインで少しは酔えたけど、眠くなるほどではない。それにやらなきゃいけない事があると言っていたフランツは机に向かっている。
「……フランツ。何してるんだ?」
「ああ。面白そうな話が浮かんだから、構想を練ってる」
そうだった。フランツは……フランツ・カフカは作家だった。でも確か生前は、恵まれない作家人生だったはずだ。
「どんな話なんだ?」
「ああ。イスケが巨大ゴキブリって話をしただろ? 何か巨大なゴキブリが登場する話を書けないかなって」
ゴキブリですか? 何でわざわざ小説にゴキブリを登場させるんだよ。そうツッコミを入れようと思ってやめた。
「……それより。イスケ。先に寝ていていいぞ。俺はもうちょっと起きてるから」
「ああ。でもあんまり眠くないし、寝るのもちょっと怖いんだよな」
「何で、寝るのが怖いんだ?」
背中だけで、その表情は見えないけど、フランツが笑っているのは分かった。でも、今は寝るのが少し怖い。眠って目覚めると、意識を失って、取り戻すと、世界が変わっていた。そんな事が続いて、また同じ繰り返しになるんじゃないかって考えると、やっぱり今は寝るのが怖い。せっかく友達になれたフランツが、目覚めると居なくなるんじゃないかって、そんな考えが頭に浮かんでくる。
「寝て、目覚めて世界が変わってたらって思うと、怖いんだ」
「世界が変わる?」
「ああ。目覚めたら、知らない世界が広がっているんだ。怖いだろ?」
「まあな。でも俺なら、もう一度寝るかな」
またフランツの背中が笑っていた。
「二度寝か」
二度寝して望む世界に戻れればいいけど。
「あっ」
何に反応したのかは分からないけど、カフカが声を上げた。
「どうしたんだ? 変な声を上げて」
「いや。イスケのお陰だよ。全部イスケのお陰」
「何がだよ。俺、何もしてないけど」
「今、構想がまとまったんだよ」
「構想? まとまった?」
「ああ。主人公はある日、目覚めると自分が巨大なゴキブリになっている事に気付くんだ。でも夢に違いないって、二度寝するんだ。でも、やっぱり巨大なゴキブリのままでって話。目覚めたら世界が変わっていたんだ」
「えっ? 朝、起きたら巨大なゴキブリに変身してたって事?」
「あっ。そう変身! それいいなぁ。題名は『変身』で、決定だ!」
大きく振り返り、満面の笑みを見せてくるフランツ。……もしかして、これって。読んだ事はないけど、フランツ・カフカの代表作が『変身』って題名なくらい、俺も知っていますよ。……もしかして俺、またやらかした? さっきのロボットに続いてまたやらかした? 怖くてフランツに何も返せない。
「おーい、イスケ。寝たのか?」
毛布を頭まで被って、顔を見せないようにする。
「……寝たんだな。おやすみ」
じっと固まっていると、フランツの声は止んで、ペン先が走る音が聞こえ始めた。……とりあえずハル君に報告だ。
(ハル君。また俺やらかしたかも。フランツが、カフカが『変身』を書くきっかけを、俺が作ったっぽい)
(はぁ、またやらかしたんですね。まぁ、それは置いておいて)
(えっ?置いておくの?)
(はい、置いておきます。それよりもっと大変な事になったんで)
(えっ?何?)
(それがさっきパソコン開いたら、俺は書いていないのに話が進んでたんです)
(どう言う事?)
(さっき店長、カレル・チャペックの話してましたよね?)
(はい、しました)
(それが店長とツランフが広場で巨大ゴキブリを退治した後、カフェでコーヒーを飲むんですけど。そこに少年が現れるんです。その少年の名前がチャレル・カペックなんです。店長はチャレル少年に卓上お掃除ロボ・2代目Ms.クリーンをプレゼントするんですが、Ms.クリーンが巨大化して町を荒らすんです)
一体どう言う事? もうさっぱり訳分からんですよ。はい。確かにロボットはプレゼントしたけど、巨大化していないし、町を荒らしもしていないし。
(ハル君。もうダメ。訳が分からないんで、もう寝ます。おやすみ)
(はい。おやすみなさい)
遅れてきたワインの酔いなのかは分からないけど、何故か急に睡魔が襲ってきた。眠い。もうこれで寝ます。でも神様、目覚めた時にまだ世界は変えないでください。まだフランツにお別れを言っていないんです。
「……フランツ。何してるんだ?」
「ああ。面白そうな話が浮かんだから、構想を練ってる」
そうだった。フランツは……フランツ・カフカは作家だった。でも確か生前は、恵まれない作家人生だったはずだ。
「どんな話なんだ?」
「ああ。イスケが巨大ゴキブリって話をしただろ? 何か巨大なゴキブリが登場する話を書けないかなって」
ゴキブリですか? 何でわざわざ小説にゴキブリを登場させるんだよ。そうツッコミを入れようと思ってやめた。
「……それより。イスケ。先に寝ていていいぞ。俺はもうちょっと起きてるから」
「ああ。でもあんまり眠くないし、寝るのもちょっと怖いんだよな」
「何で、寝るのが怖いんだ?」
背中だけで、その表情は見えないけど、フランツが笑っているのは分かった。でも、今は寝るのが少し怖い。眠って目覚めると、意識を失って、取り戻すと、世界が変わっていた。そんな事が続いて、また同じ繰り返しになるんじゃないかって考えると、やっぱり今は寝るのが怖い。せっかく友達になれたフランツが、目覚めると居なくなるんじゃないかって、そんな考えが頭に浮かんでくる。
「寝て、目覚めて世界が変わってたらって思うと、怖いんだ」
「世界が変わる?」
「ああ。目覚めたら、知らない世界が広がっているんだ。怖いだろ?」
「まあな。でも俺なら、もう一度寝るかな」
またフランツの背中が笑っていた。
「二度寝か」
二度寝して望む世界に戻れればいいけど。
「あっ」
何に反応したのかは分からないけど、カフカが声を上げた。
「どうしたんだ? 変な声を上げて」
「いや。イスケのお陰だよ。全部イスケのお陰」
「何がだよ。俺、何もしてないけど」
「今、構想がまとまったんだよ」
「構想? まとまった?」
「ああ。主人公はある日、目覚めると自分が巨大なゴキブリになっている事に気付くんだ。でも夢に違いないって、二度寝するんだ。でも、やっぱり巨大なゴキブリのままでって話。目覚めたら世界が変わっていたんだ」
「えっ? 朝、起きたら巨大なゴキブリに変身してたって事?」
「あっ。そう変身! それいいなぁ。題名は『変身』で、決定だ!」
大きく振り返り、満面の笑みを見せてくるフランツ。……もしかして、これって。読んだ事はないけど、フランツ・カフカの代表作が『変身』って題名なくらい、俺も知っていますよ。……もしかして俺、またやらかした? さっきのロボットに続いてまたやらかした? 怖くてフランツに何も返せない。
「おーい、イスケ。寝たのか?」
毛布を頭まで被って、顔を見せないようにする。
「……寝たんだな。おやすみ」
じっと固まっていると、フランツの声は止んで、ペン先が走る音が聞こえ始めた。……とりあえずハル君に報告だ。
(ハル君。また俺やらかしたかも。フランツが、カフカが『変身』を書くきっかけを、俺が作ったっぽい)
(はぁ、またやらかしたんですね。まぁ、それは置いておいて)
(えっ?置いておくの?)
(はい、置いておきます。それよりもっと大変な事になったんで)
(えっ?何?)
(それがさっきパソコン開いたら、俺は書いていないのに話が進んでたんです)
(どう言う事?)
(さっき店長、カレル・チャペックの話してましたよね?)
(はい、しました)
(それが店長とツランフが広場で巨大ゴキブリを退治した後、カフェでコーヒーを飲むんですけど。そこに少年が現れるんです。その少年の名前がチャレル・カペックなんです。店長はチャレル少年に卓上お掃除ロボ・2代目Ms.クリーンをプレゼントするんですが、Ms.クリーンが巨大化して町を荒らすんです)
一体どう言う事? もうさっぱり訳分からんですよ。はい。確かにロボットはプレゼントしたけど、巨大化していないし、町を荒らしもしていないし。
(ハル君。もうダメ。訳が分からないんで、もう寝ます。おやすみ)
(はい。おやすみなさい)
遅れてきたワインの酔いなのかは分からないけど、何故か急に睡魔が襲ってきた。眠い。もうこれで寝ます。でも神様、目覚めた時にまだ世界は変えないでください。まだフランツにお別れを言っていないんです。
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