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第1章 町の名はポリ。パリじゃないです。
1-7 高級ホテル=金貨100枚です。
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(ハル君のお陰でボロ儲けできたよ!)
広場のベンチに座って、送ったLINEはまだ未読のままだった。今頃、ハル君は居酒屋でバイト中か……。ユウキの過剰在庫を処分できた喜びを、分かち合いたかったけど、今はまだ無理らしい。
ベンチに座ったまま、赤くなりつつある空を見上げる。その時、赤い空を隠すように、若い女性の顔が現れた。えっ? 何で、俺を覗き込んでいる。
「あの、何か?」
顔を覗き込まれたまま、答える。
「さっき見てたわよ。お兄さん、随分と稼いだんじゃない? よかったら私の店に遊びにおいでよ。サービスするからさ」
「それより、俺を覗き込むの、やめてくれない? 首が疲れる」
「ああ、ごめんね。私はタミラ。よろしく!」
ベンチに並んだタミラが右手を差し出す。一体、何の握手だ?
「悪いんだけど、君に構ってる暇はないな。とりあえずこれから、宿探さないといけないし」
「お兄さん、この町の人じゃないんだね」
何が目的なんだ? 人懐っこく笑うタミラに不信感が募る。そう言えば、私の店に遊びにおいでよ。って、言っていたけど。何の店だ?
「なぁ、遊びに来いって、お前の店って、何の店だ?」
「えっ? もちろん娼館だよ」
ぐっ。軽く言いやがって。そんなに女に飢えてるように見えたのか? 俺には美弥って言う彼女がちゃんといるのに。
「間に合ってるんで! 俺はこれで?」
ベンチから腰を上げて歩き出す。一先ず、このポリで一番高級なホテルを探して、チェックインだ。
「お兄さん。待ってよ!」
追いかけて来たタミラに腕を取られる。
「マジ、間に合ってるんで」
振り払おうとしたけど、振り払えない。タミラは、凄い力で俺の腕にしがみついている。
「お兄さん、宿探してるんでしょ? よかったら私が連れて行ってあげる。安い宿から一流宿まで、どこだって連れて行ってあげるよ」
「それじゃ、一流宿で。あ、でも宿に連れて行ってもらうだけだからな。お前の店には行かない」
「はーい! じゃ、このポリで一番のロイヤル・ポリに連れて行ってあげる。貴族様達が泊まる一流宿だから、お兄さんもきっと満足するよ」
チャンゼリゼ広場から通りは、8方向に延びている。その内の1本、さっき歩いて来た道の2本左の通りをタミラが進む。
「それで、お兄さん。名前は?」
「名前? ああ、偉介」
「イスケ? 変な名前だね」
失礼な奴だ。名乗る必要なんてなかった。
「あ、ここ。ここ。ねっ、外から見ても立派でしょ」
タミラに連れられて来た、ロイヤル・ポリは宮殿と呼ぶに相応しい外観だった。壁の色は上品なクリーム色。外壁に施された沢山の彫刻。そして全ての窓には花が飾られている。
正に高級ホテル! これは期待できる!
「じゃ、ありがとう。俺はこれで!」
重いドアを押し開けようとすると。
「私の店も宿泊出来るよ。こんな一流宿、幾ら取られるか分からないんだし。私の店にしておきなよ」
「いや、遠慮しておく」
何てったって、俺は金持ちだ! 金貨98枚、196万円もポケットに入れているんだ。タミラの腕を振り払い、ホテルのレセプションへと進む。
………………。
………………。
………………、無理だ。
肩を落として、町へ戻るドアを抜ける。豪華なロビーの雰囲気を味わえただけで、よしとしよう。
「待ってたよ、イスケ。それで、結局このロイヤル・ポリには泊まらないんだよね」
「……一番安い部屋で、10万グーロだって! 金貨100枚だって! ふざけるな! 一泊200万円の部屋って、何だよ! 俺は金持ちのはずなのに」
「やっぱり、町一番だけあって高いねー」
タミラが笑う。
「タミラの所は、一泊幾らだ?」
ロイヤル・ポリは諦めるしかない。それに今更、別の一流宿を探す気分にもなれない。
「部屋だけなら1000グーロだよ。ねぇさん達の誰かを指名しても、プラス1000グーロから2000グーロって感じかな」
部屋だけなら金貨1枚。誰かを指名しても、プラス1枚か2枚。……安い。
「その、ねぇさん達ってのは?」
「ああ。私の店って言うか、父さんと母さんが営んでる娼館だけど。そこで働いてる、ねぇさん達の事だよ。私はただの客引き。ねぇさん達みたいに魅力もないし」
そう言ったタミラの顔はやけに幼く見えた。少しの時間を一緒に過ごしただけだけど、タミラに娼婦の顔は見えない。
「分かった。今日はタミラの所で宿を取らせてもらうよ」
広場のベンチに座って、送ったLINEはまだ未読のままだった。今頃、ハル君は居酒屋でバイト中か……。ユウキの過剰在庫を処分できた喜びを、分かち合いたかったけど、今はまだ無理らしい。
ベンチに座ったまま、赤くなりつつある空を見上げる。その時、赤い空を隠すように、若い女性の顔が現れた。えっ? 何で、俺を覗き込んでいる。
「あの、何か?」
顔を覗き込まれたまま、答える。
「さっき見てたわよ。お兄さん、随分と稼いだんじゃない? よかったら私の店に遊びにおいでよ。サービスするからさ」
「それより、俺を覗き込むの、やめてくれない? 首が疲れる」
「ああ、ごめんね。私はタミラ。よろしく!」
ベンチに並んだタミラが右手を差し出す。一体、何の握手だ?
「悪いんだけど、君に構ってる暇はないな。とりあえずこれから、宿探さないといけないし」
「お兄さん、この町の人じゃないんだね」
何が目的なんだ? 人懐っこく笑うタミラに不信感が募る。そう言えば、私の店に遊びにおいでよ。って、言っていたけど。何の店だ?
「なぁ、遊びに来いって、お前の店って、何の店だ?」
「えっ? もちろん娼館だよ」
ぐっ。軽く言いやがって。そんなに女に飢えてるように見えたのか? 俺には美弥って言う彼女がちゃんといるのに。
「間に合ってるんで! 俺はこれで?」
ベンチから腰を上げて歩き出す。一先ず、このポリで一番高級なホテルを探して、チェックインだ。
「お兄さん。待ってよ!」
追いかけて来たタミラに腕を取られる。
「マジ、間に合ってるんで」
振り払おうとしたけど、振り払えない。タミラは、凄い力で俺の腕にしがみついている。
「お兄さん、宿探してるんでしょ? よかったら私が連れて行ってあげる。安い宿から一流宿まで、どこだって連れて行ってあげるよ」
「それじゃ、一流宿で。あ、でも宿に連れて行ってもらうだけだからな。お前の店には行かない」
「はーい! じゃ、このポリで一番のロイヤル・ポリに連れて行ってあげる。貴族様達が泊まる一流宿だから、お兄さんもきっと満足するよ」
チャンゼリゼ広場から通りは、8方向に延びている。その内の1本、さっき歩いて来た道の2本左の通りをタミラが進む。
「それで、お兄さん。名前は?」
「名前? ああ、偉介」
「イスケ? 変な名前だね」
失礼な奴だ。名乗る必要なんてなかった。
「あ、ここ。ここ。ねっ、外から見ても立派でしょ」
タミラに連れられて来た、ロイヤル・ポリは宮殿と呼ぶに相応しい外観だった。壁の色は上品なクリーム色。外壁に施された沢山の彫刻。そして全ての窓には花が飾られている。
正に高級ホテル! これは期待できる!
「じゃ、ありがとう。俺はこれで!」
重いドアを押し開けようとすると。
「私の店も宿泊出来るよ。こんな一流宿、幾ら取られるか分からないんだし。私の店にしておきなよ」
「いや、遠慮しておく」
何てったって、俺は金持ちだ! 金貨98枚、196万円もポケットに入れているんだ。タミラの腕を振り払い、ホテルのレセプションへと進む。
………………。
………………。
………………、無理だ。
肩を落として、町へ戻るドアを抜ける。豪華なロビーの雰囲気を味わえただけで、よしとしよう。
「待ってたよ、イスケ。それで、結局このロイヤル・ポリには泊まらないんだよね」
「……一番安い部屋で、10万グーロだって! 金貨100枚だって! ふざけるな! 一泊200万円の部屋って、何だよ! 俺は金持ちのはずなのに」
「やっぱり、町一番だけあって高いねー」
タミラが笑う。
「タミラの所は、一泊幾らだ?」
ロイヤル・ポリは諦めるしかない。それに今更、別の一流宿を探す気分にもなれない。
「部屋だけなら1000グーロだよ。ねぇさん達の誰かを指名しても、プラス1000グーロから2000グーロって感じかな」
部屋だけなら金貨1枚。誰かを指名しても、プラス1枚か2枚。……安い。
「その、ねぇさん達ってのは?」
「ああ。私の店って言うか、父さんと母さんが営んでる娼館だけど。そこで働いてる、ねぇさん達の事だよ。私はただの客引き。ねぇさん達みたいに魅力もないし」
そう言ったタミラの顔はやけに幼く見えた。少しの時間を一緒に過ごしただけだけど、タミラに娼婦の顔は見えない。
「分かった。今日はタミラの所で宿を取らせてもらうよ」
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