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第1章 町の名はポリ。パリじゃないです。
1-8 バローニュの門です。
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タミラの店は最初に町に入った門の、真反対の門の近くにあった。タミラの説明では、町を囲む城壁には4つの門があって、俺が町に入った門は東の門で、マンモルトル門。タミラの店があるのは、西の門で、バローニュ門。そして北側には王宮への出入りの門、ポリ門があって、南側には凱旋門があると言う。
凱旋門は同じなのか……。つい、気を取られてしまったけど、注意が必要なのは、バローニュの門だと言う。
「……昼でも危険だって言われているから、夜は絶対、バローニュの門の外には行かない事」
「そんなに危険なのか?」
「……門の外にはバローニュの森があるからね。あの森には魔王と呼ばれるノポレオンがいる。それにノポレオンに操られている、魔物がうじゃうじゃいるから」
そうだ。確か、森さんも同じような事を言っていた。魔物がいる森なんて、頼まれたって足は踏み入れない。
「さあ、着いたよ。ここが私の店」
タミラが立ち止まった館は、宮殿ほど豪華ではないけれど、趣きのある立派な建物だった。
「……父さん。お客さん連れて来たよ」
「いらっしゃい。旅の人だね。どうぞ腰掛けてください」
ドアを開けてすぐの所には、レセプションだろうか、小さなデスクがあった。娼館だと聞いていたけど、普通のホテルのロビーと何も変わらない。
「お客さん。今日は宿泊かい? それか持ち帰りかい?」
「あ、いえ。タミラに一泊1000グーロだと聞かされて。それでついて来たんですが」
「ああ、宿泊だね。先払いだから、金貨1枚」
ポケットに手を突っ込み、金貨1枚を取り出す。
「ほら、これが鍵だ。部屋はこの階段で3階まで上がった一番奥だ。それと娘達を呼ぶなら、必ずわしに声を掛けてくれよ。最近は直接、客を取る非常識な娘もおるもんでな」
「いえ、俺は、一泊させてもらえれば充分なんで、大丈夫です」
鍵を受け取って、階段を上がろうとした時。
「このドアの向こうが食堂で、朝食は付いてます。……夕食は別料金。あっちのドアの向こうは酒場で、酒場の奥にねぇさん達がいます」
タミラが店内の説明をしてくれた。
「朝食以外は必要ないかな。それじゃ、俺はこれで」
階段を上がる。どんな部屋が待っているかは、分からないけど、一夜の宿は確保できた。出来る事なら、このまま体を伸ばしてしまいたいけど、ハル君からの連絡を待って、情報を集めたい。
(ハル君。居酒屋バイトは何時まで?)
夕方に送っていたLINEも、まだ未読だったけど、とりあえず追加で送る。それにしても、あのロイヤル・ポリは高すぎだった。
あれ? もしかしてあのホテルの価格設定も、ハル君が決めたのか? それならハル君に価格を下げるように、交渉しないと。
その時だ。手にしたスマホ画面のLINEに既読が付いた。画面の時計は21:01。
(店長、お待たせです。今、バイト終わりました)
(ハル君ー。バイト終わったんだね。お疲れ様ー。鉛筆全部売れたけど、高級ホテル高すぎて、泊まれなかったんだけど! 一泊200万はないわ)
(笑 店長に贅沢はさせません。娼館の部屋で充分です)
何だかハル君の手の平の上で、弄ばれているような気になる。まるで孫悟空の気分だ。
(あ、そうだ。明日、魔物と戦う事になるから、今日の間に武器を仕入れておいてくださいね)
(えっ? ハル君。魔物と戦うって、武器って何?)
(言葉のまんまの意味ですよ。武器はほら、去年の夏に店長が馬鹿ほど仕入れて売れ残った、巨大水鉄砲あったでしょ? あれの在庫処分、お願いします)
(何? 水鉄砲で戦えって言うの? 無理無理)
(大丈夫です。今日、チャンゼリゼ広場に行きましたよね? あの広場の一角に、ナータルダムって教会があります。その前の泉の水は聖水ですから。水鉄砲買って、聖水汲んで、備えてください!)
(何? もう意味分からないけど)
(魔物と戦って、死にたくないでしょ? いや、死ぬのか。まぁ、とりあえず準備です。万が一、死んでもハランス王国の英雄になれますから。では、おやすみなさーい)
えっ? 俺、死ぬの? 死んだらどうなるの? 天国? 地獄? それか元の世界に戻れるの?
とりあえず水鉄砲だ。巨大水鉄砲、1780円。在庫は7つ。んー。在庫処分だ! 全部買ってやる!
凱旋門は同じなのか……。つい、気を取られてしまったけど、注意が必要なのは、バローニュの門だと言う。
「……昼でも危険だって言われているから、夜は絶対、バローニュの門の外には行かない事」
「そんなに危険なのか?」
「……門の外にはバローニュの森があるからね。あの森には魔王と呼ばれるノポレオンがいる。それにノポレオンに操られている、魔物がうじゃうじゃいるから」
そうだ。確か、森さんも同じような事を言っていた。魔物がいる森なんて、頼まれたって足は踏み入れない。
「さあ、着いたよ。ここが私の店」
タミラが立ち止まった館は、宮殿ほど豪華ではないけれど、趣きのある立派な建物だった。
「……父さん。お客さん連れて来たよ」
「いらっしゃい。旅の人だね。どうぞ腰掛けてください」
ドアを開けてすぐの所には、レセプションだろうか、小さなデスクがあった。娼館だと聞いていたけど、普通のホテルのロビーと何も変わらない。
「お客さん。今日は宿泊かい? それか持ち帰りかい?」
「あ、いえ。タミラに一泊1000グーロだと聞かされて。それでついて来たんですが」
「ああ、宿泊だね。先払いだから、金貨1枚」
ポケットに手を突っ込み、金貨1枚を取り出す。
「ほら、これが鍵だ。部屋はこの階段で3階まで上がった一番奥だ。それと娘達を呼ぶなら、必ずわしに声を掛けてくれよ。最近は直接、客を取る非常識な娘もおるもんでな」
「いえ、俺は、一泊させてもらえれば充分なんで、大丈夫です」
鍵を受け取って、階段を上がろうとした時。
「このドアの向こうが食堂で、朝食は付いてます。……夕食は別料金。あっちのドアの向こうは酒場で、酒場の奥にねぇさん達がいます」
タミラが店内の説明をしてくれた。
「朝食以外は必要ないかな。それじゃ、俺はこれで」
階段を上がる。どんな部屋が待っているかは、分からないけど、一夜の宿は確保できた。出来る事なら、このまま体を伸ばしてしまいたいけど、ハル君からの連絡を待って、情報を集めたい。
(ハル君。居酒屋バイトは何時まで?)
夕方に送っていたLINEも、まだ未読だったけど、とりあえず追加で送る。それにしても、あのロイヤル・ポリは高すぎだった。
あれ? もしかしてあのホテルの価格設定も、ハル君が決めたのか? それならハル君に価格を下げるように、交渉しないと。
その時だ。手にしたスマホ画面のLINEに既読が付いた。画面の時計は21:01。
(店長、お待たせです。今、バイト終わりました)
(ハル君ー。バイト終わったんだね。お疲れ様ー。鉛筆全部売れたけど、高級ホテル高すぎて、泊まれなかったんだけど! 一泊200万はないわ)
(笑 店長に贅沢はさせません。娼館の部屋で充分です)
何だかハル君の手の平の上で、弄ばれているような気になる。まるで孫悟空の気分だ。
(あ、そうだ。明日、魔物と戦う事になるから、今日の間に武器を仕入れておいてくださいね)
(えっ? ハル君。魔物と戦うって、武器って何?)
(言葉のまんまの意味ですよ。武器はほら、去年の夏に店長が馬鹿ほど仕入れて売れ残った、巨大水鉄砲あったでしょ? あれの在庫処分、お願いします)
(何? 水鉄砲で戦えって言うの? 無理無理)
(大丈夫です。今日、チャンゼリゼ広場に行きましたよね? あの広場の一角に、ナータルダムって教会があります。その前の泉の水は聖水ですから。水鉄砲買って、聖水汲んで、備えてください!)
(何? もう意味分からないけど)
(魔物と戦って、死にたくないでしょ? いや、死ぬのか。まぁ、とりあえず準備です。万が一、死んでもハランス王国の英雄になれますから。では、おやすみなさーい)
えっ? 俺、死ぬの? 死んだらどうなるの? 天国? 地獄? それか元の世界に戻れるの?
とりあえず水鉄砲だ。巨大水鉄砲、1780円。在庫は7つ。んー。在庫処分だ! 全部買ってやる!
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