うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの

文字の大きさ
37 / 68
第五章 孫を追いかけ王都を目指す旅で御座います。

5-5 サーカスはワクワクからドキドキで御座います。

しおりを挟む
「探偵さんよぅ。何だか血が騒ぐと言うか、ワクワクしてくるのぅ」

「そうですね」

 私お手製の、いなり寿司を頬張りながら、じぃじは童心に返ったように、はしゃいでおいでです。夕食を食べて、まだ間がないと言うのに、重箱を開けた、じぃじに幼い頃を思い出します。
私の家では、サーカスに出かける時は、いつも母がいなり寿司を作ってくださいました。今のじぃじと同じように、幼い日の私も、夕食を食べたばかりでも、重箱のいなり寿司に手を伸ばしたもので御座います。

「……私と同じ、人猫ミックスですね」

 じぃじの隣の、探偵さんの隣。私から1番離れた場所に座るレオンさんも、珍しく興奮の色を見せておいでです。レオンさんと同じ人猫ミックスさんは、お二人で空中ブランコの演技です。先程は双頭のライオンさんの、火の輪くぐりでした。その前に登場したピエロは、人犬ミックスさんで御座いました。

「さすが異世界のサーカスで御座いますね。色んな方々が出演されていて、本当に素晴らしいです」

 皆さんの興奮が私にも移ったようで御座います。幼い日に両親に連れられ、見に行ったサーカス。あの日のワクワクした気持ちを、60年近く経ってまた味わえるなんて、思ってもおりませんでした。

「……次は人熊ミックスの玉乗りだそうです」

 探偵さんは、入場口で演目表を手にされていらっしゃいました。……じぃじは次に何が出て来るか、分からないから楽しいんだ。なんて言っておりましたが、次の演目を知っても楽しめるのがサーカスで御座います。

「人熊さんの登場で御座いますね」

 あら……。何だか随分と痩せた人熊さんで御座います。赤と白のチェックのワンピースを着ていらっしゃいますが、お洋服がダボダボで御座います。

 んまぁ。大丈夫で御座いましょうか。さっきから何度も玉に乗ろうとしていらっしゃいますが、失敗ばかりで、乗れる気配が御座いません。……あら、大変! 失敗続きの人熊さんに、観客の皆さんがゴミとヤジを投げておいでです。

「おーい! 早く玉に乗らんか!」

 隣のじぃじまで、ヤジを飛ばし始めました。お見受けするに、人熊さんは痩せ細って、体力と気力があるようには見えません。あっ! いま一瞬、玉の上に建てたのですが、すぐに落ちて、転倒で御座います。かぶっていた赤い帽子も脱げてしまいました。

「……見てられんのぅ」

「きっと何かご事情があるのですよ」

 呆れ始めたじぃじが、二つ目のいなり寿司に頬を膨らませていた時。人犬のピエロさんが、舞台に上がって、人熊さんの手を引いて退場となりました。

「何じゃ? 玉乗りせずに終わりかい」

 子供の頃のサーカスでは、失敗を笑いに変えて、観客を楽しませていたのですが、人熊さんには難しかったようです。……その後は、トランポリンにイリュージョンと、様々な演目が続いていたのですが、何だか集中して観れなくなってしまいました。

「……次が最後ですね。……最後は、ケンタウロスの射撃だそうです」

 ケンタウロスさん? ああ、人馬さんの事で御座いますね。舞台に登場したのは、弓を抱え、背中に矢を背負った、人馬さんで御座います。……射撃と言う事は、弓で的を射ると言う事ですね。

 すると。舞台が暗転しました。的を準備するための演出でしょうか? えっ? もう一度、舞台に灯りがつき現れた的は、さっきの人熊さんじゃありませんか。……あの紫色の果実はランバーの実。……水平にした人熊さんの両腕に、それぞれ並べられた、ランバーの実。それに頭の上にもです。

「……的はあの紫色の果実ですが、先程、こいつが玉乗りに失敗したように、私も失敗するかもしれません。……失敗した時はちゃんとトドメを差しますので、お許しを!」

 舞台の上で、ケンタウロスさんが述べた口上に、観客の皆さんは大騒ぎで御座います。失敗しろ! なんてヤジも聞こえてまいります。

 もう私の胸はドキドキで御座います。見ているのが辛う御座います。あ! その時。……ケンタウロスさんが、立て続けに矢を放ちました。1本、2本、3本。矢は人熊さんの右腕に並べられた、ランバーを射抜きました。

「ほっ」

 少し安心で御座います。続けての3本は、左腕のランバーを射抜いております。後は頭の上のランバーですが、私、もう見ていられません。固く目を閉じて、俯いてサーカスの終わりを待ちます。

 パチパチパチパチ。

 周りから拍手の音が聞こえてまいりました。……成功で御座いますね。目を開けて大丈夫で御座いますね。そっと目を開けると、じぃじと探偵さんとレオンさんが、大きな拍手を舞台に送っていらっしゃいました。 




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

きっと幸せな異世界生活

スノウ
ファンタジー
   神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。  そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。  時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。  女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?  毎日12時頃に投稿します。   ─────────────────  いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。 真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。 気付いたら知らない所にいたの。 とてもこまったの。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

処理中です...