異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル

文字の大きさ
374 / 469
第四章 新天地

第359話 幸せの形

しおりを挟む
 なんとか、無事話がまとまった……。

 具体的には、ルームを連れていくこと。
 伝鳥を使った定期連絡を入れることで、手を打つことに成功した。

 その辺り、若干ハーモニーは不服のようだったが。

「まぁティアさんとは、皆が揃うまでは抜け駆け禁止と約束しましたしね~」

 ──っと、最終的には納得していた。

 確かトゥナも、前にそんなようなことを……。

 良く分からないが当事者を置き去りで、彼女達の間で密約が行われているらしい……まぁ、仲良くしてくれるならいいんだけど。

 しかし男女の関係。自分で言うのもなんだが、何が起こるか分からないからな。
 ティアとしても、二人っきりの状況はまったく安心できなかったのだろう。

「──ところでカナデ様、ラクリマまでの移動は何を使われる御予定でしょうか?」

「んっ? いつも通り馬車でいくつもりだけど。急にどうした?」

「あー……実はですね、言い忘れてた事がありまして」

 言い忘れたこと? 
 これ以上、まだ何かあるのかよ……。

「えっと……カナデ様は一度傷付くのと、二度傷付くのどちらが宜しいでしょうか?」

「傷付くこと前提か……嫌な選択肢だな。嫌な事を何度も繰り返したくはないから一度で頼むよ」

「分かりました、ではついてきてください」

 ついてこいって……。
 
 結局俺は、謎の不安を抱えたままハーモニーと共に、ティアの後に着いていくことにした──。

「──あ~……ここって、なんの変哲もない普通の厩舎だよな? ユニコーン達専用の。あいつらに何かあったのか?」

 前にユニコーン達と約束した、彼等だけのマイホーム。
 村の外に出掛けることが多く、ティアや村人に面倒を見てもらって居たのだが……。

「まぁ、中に入って貰えば分かるかと」

 なんだそれ。この中に、俺が嫌がる何かがあるって事なのか。
 う~ん……こうしてても仕方がないか。覚悟を決めて、中に入ろう!

 俺は恐る恐る足を踏み入れた。
 二頭のために作られた建物。よって、中はさほど広くはない。
 精々六頭程が同時に生活ができる、それぐらいの広さだろう。

 そして目の前には、二頭の人影……いや、二頭の馬影が見える──って!?

 向こうもこちらに気付いた様だ「ヒヒーン」と、馬が鳴く声が聞こえた。

『カナデ!! 少しお腹のおっきなメスコーンが「んまぁ!? 久しぶりね。祝福しに来てくれたのかしら?」って言ってるカナ』

 そう……ミコの言う通り、いつの間にかメスコーンの腹には膨らみが見え、それは新たな命を宿していると理解した。

「い、いつの間に……」

 めでたい、非常にめでたいのだが、何故か素直に喜べない。
 完璧に先を越されて、ショックを受けている自分が──って、ティアが言ってた意味はこの事か! 

『カナデカナデ「歓迎に来てくれたのか? ありがたい。む、さか俺様が父親になる日が来るとはな。次はお前の番だ」って言ってるカナ、ちょっと気持ち悪いシ』

 オスコーン。こいつ、完全に人が……馬が出来てるじゃないか。
 子の親になる、それがこんなに馬を変えるとは。

 負けてられないか、俺も大人にならないとな──。

「おほん! あぁ~二頭とも。この度は、誠におめでとうございます」

 うっ、つい敬語になってしまった。
 先を越されたことで、本能的に心の何処かで優劣を作ってしまったのかもしれない……。なさけない。

「と、ところでハーモニー。さっきからなぜ、こっちをチラチラ見てるのかな? あとティア、クネクネしない!」

 分からない! この二人の言いたい事なんてぜ~んぜん、分からないからな!

『やれやれカナ……』

 あの、ミコさん? 前にも言ったけど、念話でため息をつくのはやめようね。

「あ~なんだ。二頭には今まで頑張ってもらったしな。そう言う事なら、今回は他の馬に頼むよ」

 流石に、この状態の二頭に頼むのは酷と言うものだ。
 こいつらも大切な仲間。素直に彼等には幸せになってほしいと思うしな。

「──お前達、元気な子を産むんだぞ?」

 激励の言葉をかけ俺はその場を去った。
 別に、二頭の幸せな姿が眩しかった……そういう訳では無い。
 
 外に出ると、相変わらずの嫌な空模様。
 原因はハッキリとは分からないけど、ユニコーン達の子供が生まれる頃には、この変な天候も良くなって、太陽に祝福されるといいな。

「ん~よし、俺も頑張らないとな!」

 あいつらの主人が、負けてなんて居られない。
 俺も頑張って、あいつら以上の幸せを掴んで……。

「──カナデ様、私達はその……」

「──いつでもいいんですよ~?」 

「何の事だよ……」

 別に馬を借りるべく、移動すると言うていで、俺はその場を小走りで逃げ出した。
 ハーモニーとティア、二人の熱い視線を背中に受けて……。

 

しおりを挟む
感想 439

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...