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46話 少女達の動機
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46話 少女達の動機
訓練と勉強に明け暮れる対戦車旅団の少女兵。
わずか一日の自由時間に久しぶりの顔合わせ・・
「キヨに尋ねたい事があるんだ・・・」
「なあ~に?」
「尋ねにくいんだけど・・・どうして自分で銃殺
したんだろう?ってさ・・・」
「ミツはどうしてと思う?」
「・・・責任感とか・・・忠義とか・・・かなあ」
「ミツらしい考え、けどそんなんじゃないよ」
「判らないよ・・普通は殺すのを嫌うもんだよね」
ため息をついて迷ったが口を開いた
「家は貧しい小作なんだ・・・弟2人と妹2人・・・
徴兵される前は絶望してた・・・ ・・・
食べる物をあちこちで借りて、かあさんは子供を
全員つれて借りる為に村中を回った、乞食みたい
と嫌われながら、もう借りれる家は無かったよ・・
はっきり言う家も在ったよ、子供を売れ、と・・・
ある日、夜中に目が覚めて、かあさんと父さんの
声が聞こえた(キヨは働き手だから売れない・・)
(下の子達は売ろうとしても値が付かないし・・)
(でも・・・食べ物が足らない・・・)
(やはり・・何度考えても口減らししか無い・・)
(無料で人買いに渡したら・・売る家が困るから)
(減らすとしたら・・・2人だ・・・)
(男を2人・・・残すか・・・)
(嫌だよ・・・娘を残したいよ・・・)
(じゃ・・・一人づつ残そう・・・)
(可愛がってたあんたに・・殺せるの?)
(・・・ ・・・お前には出来ん・・・)
(俺が締める・・・しか・・・無い)
(せめて・・・前の日に・・・米を食わせようよ)
(ああ・・・ ・・・)
(生まれた時、幸せになるんだよと願ったのに)
(親に殺されるとは・・・不幸せな子だ・・・)
「それ聞いたらさ・・かあさんと父さんの苦しさ
が想像できてね。子に先立たれる悲しみと殺した
罪を背負って生きるんだ・・・ ・・・
想ったんだよ、自分に何か出来ないかって・・・
教育も無いし・・・知恵も無いあたしだもの・・
弟と妹を殺さずに済む方法なんて何も無かった。
気が付いたんだ・・手立てが無い事に気付くのが
大人なんだと。
大人ならどうするんだろう?
心に決めたよ。
・・・弟と妹はあたしが・・・殺そうと・・・
母さんと父さんの・・・子殺しの罪は私が背負う。
ある日・・・
朝食に・・・かあさんが米を出したんだ。
あたしさあ・・・笑いながら弟と妹を川遊びに
連れて行くと言ったんだ、はしゃいで喜んだよ。
絞め殺す力は無いから川の深みに突き落とす・・
心が迷うけど、笑おうとしてるかあさんと父さん。
弟と妹は日が暮れるまでの命・・・ ・・・
明日から・・・私に・・・幸せは・・・無い。
そんな所に役場から招集を知らされた。
最初は父さんだと家族みんなが思ったよ・・・
でも、私だった・・・
人買いに売るより高い一時金をもらえるし軍人給与
も毎月出る。怪我や戦死なら手当や恩給ももらえる。
一時金だけでももらえるなら・・先に延ばせるんだ。
小作の貧乏人に約束全部守る人は居ないだろうけど
一時金と給与さえもらえれば家族で生きていける。
私が死んでも、弟達が大きくなるまで生きられる!
その夜は・・・庄屋様からいただいた米のご飯・・・
家族みんなで笑いながら食べたよ。
戦争や正義なんて私には判らないんだ・・・けれど
私達の招集を決めた人がいるんだよね、理由なんて
知らないし判る事も出来ないよ・・・
でも・・・これだけは判る・・・
その人の決断で家族は救われたんだよ。
そういう人の目指す事なら、私以外も救うのかも
知れない・・・と想うんだよね・・・
だから、命をかけるし・・・人殺しの罪も背負うよ。
任務なら・・・大勢を殺す罪も被るよ・・・」
「キヨだけじゃないよね・・・」
「あたしさあ・・・夜中に母さんが泣きながら私
の首を絞めていたとこに目が覚めてさ・・・
わたしも薄々気付いてた・・・もうだめなんだと」
「みんなそうだよ・・・もう生きられなかったよ」
「夢と願いはあったけどねー」
「夢は良いから、願いってなによ?」
「うーん・・・それはね、好きな人と子作りする事」
「トモは・・・もう・・正直すぎだよお」
「好きな人と子作り・・・かあ」
「でトモは何回するつもり?」
「えっ?1回でも良いよ~ 想い出になるから・・」
「そうだよね・・・1回あれば嫌な相手とも子作り
できるよね」
「ああ~1回で無くてさ、10回出来たら良いのに」
「好きな人と、10回かあ~」
「そんな幸せ無理だよお・・・」
「欲張ろうよ・・・ただの願いなんだもの」
「うん、綺麗な服着てご飯を食べて好きな人と
子作り10回以上!」
「欲張り過ぎだよお~」
キヨがまとめた。
「戦死は覚悟してるよね。最初の戦闘で私の分隊
から戦死が出たよ・・・一人は砲塔が直撃して
体ごと潰された、もう一人は両足が潰され出血で
戦死。分隊全員が迫る戦車に恐怖で身動き出来ず
機関銃弾を雨の様に浴びてた時だったよ・・・
後でさ・・・
遺族に戦死を伝えるのに同行したよ・・・
その時に知ったよ約束通り軍人恩給を支給された事。
だから私は・・・部下を死地でも行かせるよ!
それが家族と死者の願いと想うから。
戦争が終わって、生きてたら・・・
綺麗な服着て・腹いっぱいご飯を食べて、好きな人
と子作り10回以上を沢山の神様に願おうね!」
「そんなの・・・夢・・・」
「マツは身も蓋も無いよねえ・・・」
「夢・・・も・・・良いかも」
「良いさ、良いに決まってる」
「夢みたいな暮らし、いつの日か来ると良いよね」
「きっと100年ぐらいしたら来るんだよ」
「あたしら100年早かったのかあ・・・」
「キヨも100年と思う?」
「教育も知恵も無いのに考えても答えは無いよ・・
私達の戦死が想いでに成る時代に願いは叶うのかも」
「今を生きて死ぬのが人生」
「ミツはそれで良いんだよねー」
「なによそれ、理屈っぽいって事」
「理屈でも何でもそういう事なんだよねえ」
「私達もう12歳なんだもの子供と違うから」
「うん、そうだよ・・1年前は子供だったよね」
「そろそろ相手を見つけてみようかなあ」
「トチなら出来そうだよねえ」
「うん、夢の願いを実現しようよ!」
「「「おーーー」」」
訓練と勉強に明け暮れる対戦車旅団の少女兵。
わずか一日の自由時間に久しぶりの顔合わせ・・
「キヨに尋ねたい事があるんだ・・・」
「なあ~に?」
「尋ねにくいんだけど・・・どうして自分で銃殺
したんだろう?ってさ・・・」
「ミツはどうしてと思う?」
「・・・責任感とか・・・忠義とか・・・かなあ」
「ミツらしい考え、けどそんなんじゃないよ」
「判らないよ・・普通は殺すのを嫌うもんだよね」
ため息をついて迷ったが口を開いた
「家は貧しい小作なんだ・・・弟2人と妹2人・・・
徴兵される前は絶望してた・・・ ・・・
食べる物をあちこちで借りて、かあさんは子供を
全員つれて借りる為に村中を回った、乞食みたい
と嫌われながら、もう借りれる家は無かったよ・・
はっきり言う家も在ったよ、子供を売れ、と・・・
ある日、夜中に目が覚めて、かあさんと父さんの
声が聞こえた(キヨは働き手だから売れない・・)
(下の子達は売ろうとしても値が付かないし・・)
(でも・・・食べ物が足らない・・・)
(やはり・・何度考えても口減らししか無い・・)
(無料で人買いに渡したら・・売る家が困るから)
(減らすとしたら・・・2人だ・・・)
(男を2人・・・残すか・・・)
(嫌だよ・・・娘を残したいよ・・・)
(じゃ・・・一人づつ残そう・・・)
(可愛がってたあんたに・・殺せるの?)
(・・・ ・・・お前には出来ん・・・)
(俺が締める・・・しか・・・無い)
(せめて・・・前の日に・・・米を食わせようよ)
(ああ・・・ ・・・)
(生まれた時、幸せになるんだよと願ったのに)
(親に殺されるとは・・・不幸せな子だ・・・)
「それ聞いたらさ・・かあさんと父さんの苦しさ
が想像できてね。子に先立たれる悲しみと殺した
罪を背負って生きるんだ・・・ ・・・
想ったんだよ、自分に何か出来ないかって・・・
教育も無いし・・・知恵も無いあたしだもの・・
弟と妹を殺さずに済む方法なんて何も無かった。
気が付いたんだ・・手立てが無い事に気付くのが
大人なんだと。
大人ならどうするんだろう?
心に決めたよ。
・・・弟と妹はあたしが・・・殺そうと・・・
母さんと父さんの・・・子殺しの罪は私が背負う。
ある日・・・
朝食に・・・かあさんが米を出したんだ。
あたしさあ・・・笑いながら弟と妹を川遊びに
連れて行くと言ったんだ、はしゃいで喜んだよ。
絞め殺す力は無いから川の深みに突き落とす・・
心が迷うけど、笑おうとしてるかあさんと父さん。
弟と妹は日が暮れるまでの命・・・ ・・・
明日から・・・私に・・・幸せは・・・無い。
そんな所に役場から招集を知らされた。
最初は父さんだと家族みんなが思ったよ・・・
でも、私だった・・・
人買いに売るより高い一時金をもらえるし軍人給与
も毎月出る。怪我や戦死なら手当や恩給ももらえる。
一時金だけでももらえるなら・・先に延ばせるんだ。
小作の貧乏人に約束全部守る人は居ないだろうけど
一時金と給与さえもらえれば家族で生きていける。
私が死んでも、弟達が大きくなるまで生きられる!
その夜は・・・庄屋様からいただいた米のご飯・・・
家族みんなで笑いながら食べたよ。
戦争や正義なんて私には判らないんだ・・・けれど
私達の招集を決めた人がいるんだよね、理由なんて
知らないし判る事も出来ないよ・・・
でも・・・これだけは判る・・・
その人の決断で家族は救われたんだよ。
そういう人の目指す事なら、私以外も救うのかも
知れない・・・と想うんだよね・・・
だから、命をかけるし・・・人殺しの罪も背負うよ。
任務なら・・・大勢を殺す罪も被るよ・・・」
「キヨだけじゃないよね・・・」
「あたしさあ・・・夜中に母さんが泣きながら私
の首を絞めていたとこに目が覚めてさ・・・
わたしも薄々気付いてた・・・もうだめなんだと」
「みんなそうだよ・・・もう生きられなかったよ」
「夢と願いはあったけどねー」
「夢は良いから、願いってなによ?」
「うーん・・・それはね、好きな人と子作りする事」
「トモは・・・もう・・正直すぎだよお」
「好きな人と子作り・・・かあ」
「でトモは何回するつもり?」
「えっ?1回でも良いよ~ 想い出になるから・・」
「そうだよね・・・1回あれば嫌な相手とも子作り
できるよね」
「ああ~1回で無くてさ、10回出来たら良いのに」
「好きな人と、10回かあ~」
「そんな幸せ無理だよお・・・」
「欲張ろうよ・・・ただの願いなんだもの」
「うん、綺麗な服着てご飯を食べて好きな人と
子作り10回以上!」
「欲張り過ぎだよお~」
キヨがまとめた。
「戦死は覚悟してるよね。最初の戦闘で私の分隊
から戦死が出たよ・・・一人は砲塔が直撃して
体ごと潰された、もう一人は両足が潰され出血で
戦死。分隊全員が迫る戦車に恐怖で身動き出来ず
機関銃弾を雨の様に浴びてた時だったよ・・・
後でさ・・・
遺族に戦死を伝えるのに同行したよ・・・
その時に知ったよ約束通り軍人恩給を支給された事。
だから私は・・・部下を死地でも行かせるよ!
それが家族と死者の願いと想うから。
戦争が終わって、生きてたら・・・
綺麗な服着て・腹いっぱいご飯を食べて、好きな人
と子作り10回以上を沢山の神様に願おうね!」
「そんなの・・・夢・・・」
「マツは身も蓋も無いよねえ・・・」
「夢・・・も・・・良いかも」
「良いさ、良いに決まってる」
「夢みたいな暮らし、いつの日か来ると良いよね」
「きっと100年ぐらいしたら来るんだよ」
「あたしら100年早かったのかあ・・・」
「キヨも100年と思う?」
「教育も知恵も無いのに考えても答えは無いよ・・
私達の戦死が想いでに成る時代に願いは叶うのかも」
「今を生きて死ぬのが人生」
「ミツはそれで良いんだよねー」
「なによそれ、理屈っぽいって事」
「理屈でも何でもそういう事なんだよねえ」
「私達もう12歳なんだもの子供と違うから」
「うん、そうだよ・・1年前は子供だったよね」
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「うん、夢の願いを実現しようよ!」
「「「おーーー」」」
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