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1章 運命の出会い
第9話 家族への挨拶だった筈が…
しおりを挟む※後半に残酷な表現があります。
今日は父が屋敷にいるというので、フィアとルドは落ち合い、フィアの家へ向かった。
「ねぇ、ルド。緊張してるの?」
「ちょっとね。婚約を認めてくれるかなぁ?」
「認めざるをえないわ。だってこの国には、運命の番だったら婚約や結婚をしていいという法律があるもの」
「そうだったね」
そう、この世界には運命の番というものが存在するため、法律も私の前世の世界とは大分違ったものがある。
例えば、運命の番だった場合は、身分差や親など周りから反対されていたとしても、結ばれることができる。
この法律ができた原因は、昔、運命の番なのにもかかわらず、身分差や種族の差により引き離された2人がいた。
今とは違って、その頃はまだ種族間のいざこざがあったのだ。
女性は人間、男性は獣人だった。
引き離されただけだったらただの悲恋なのだが、この話には続きがある。
引き離された時、男性の獣人の本能が離されることを拒否して、暴れてしまったのだ。
なかなか止める事が出来ず、被害は広がり、自然災害の起きた後のような状態になってしまった。
その出来事から、運命の番同士ならば、周りの意見に関係なく、本人達の自由で婚約や結婚をすることができるようになった。
「だから安心して?でも、もし反対されるようなら、家を出るわ。精霊界で暮らすのもありね。旅をするのもいいし、他国で暮らすのもありだわ。2人でならどこへでも行けるわ」
「ふふ、そうだね。どこへでも行ける」
「だから気楽でいいのよ?」
「うん、ありがとう」
***
「ただ今帰りました」
「サフィーか。……後ろにいる方はどなただ?」
「その事で話があります。お父様」
私が真剣な眼差しで言うと、
「いいだろう。私の執務室に案内しなさい」
「はい」
***
「それで、話とはなんだ?」
「……この方が、私の運命の番です」
「はじめまして。ルインドレッド・リード・カイルラントです。魔法騎士団に所属しています。一等兵です」
「……えっ。はっ……はぁ?それは本当なのか」
「はい。事実です。もうすでに番契約もしています。婚約を認めてください」
「だが身分差があるぞ。侯爵令嬢が一介の兵士と婚約するなどと、許されるはずがないだろう」
「ですが、彼は私の運命の番です」
「例えそうだとしても、彼を殺してしまえば済む話だ。お前には王太子に嫁いで貰う」
……自分の父親がこんな人だとは思っていなかった。
もう少しマシだと思っていたのに…こんな事を言うなんて。
「そんな事……。貴方はそこまで落ちたのですか。この世界には、運命の番同士は婚約・結婚をする事ができるという法律がある事を知らないのですか?」
「もちろん知っている。だがお前は侯爵令嬢だ。ならば結婚の意味がわかるだろう」
「……それならば、私はこの家とは縁を切ります」
「それで生きていけると思っているのか?」
「はい。ですから……」
と、その時……。
ドドドドドド。
『GUGYAAAAAAAAAAAAA‼︎‼︎』
ゴォーーーーーーー。
突然のことに驚き、状況を確認するため、その場にいた者全員で外に出た。
するとそこにいたのは、竜だった。
禍々しい気配を纏っていて、瞳は何も映しておらず、濁っていた。
『サフィー、大変だ‼︎あれは番を不慮の事故で亡くした竜だ。番を亡くしたことで、狂ってしまったんだ。今は破壊することしか考えていない。唯一である番を亡くしてしまったから、もう戻ることは出来なくなってしまった。……この状態になってしまったら、殺してあげる方がその者にとって楽なんだ』
風の精霊王が言う。
「……そうなの。とても悲しい話ね。唯一を亡くしてしまうなんて。私も同じ状況になったら、狂ってしまうと思うわ。ルドが死んでしまったら生きていけないもの」
「安心して?フィア。俺は絶対にフィアを悲しませたりしないよ」
「ええ、信じてるわ。ありがとう」
「うん」
そんな話をしていると……。
目の前に炎の塊が飛んで来た。
パンッ。
ルドが咄嗟にシールドを張って、弾き返した。
「俺のフィアに何をしたか分かっているのか?」
ルドがドスの効いた声で言った。
それと共に、黒い粒子のようなものをまとっていく。
……あぁ、これはヤバイかもしれない。
どうするべきだろう。
取り敢えずは見守ってみる。
そんなことを考えているうちに、ルドは空を飛び、あっという間に竜の目の前まで行った。
そして黒い粒子を集めて槍と剣を創り、槍でぶっ刺したり、剣で斬りつけて腕や足を切断したりした。
ブスッ、ブスッ。
ザクッ、ザキッ。ブシャー。
『GGYAAAAAAAAAAAAAAAAAA』
………なんだか竜の方が可哀想になって来たわ。
すると隣にいたお父様が、
「サフィー、アレは大丈夫なのか?」
「ルドに問題がなければ大丈夫ですわ」
「いや、そういうことじゃなくて…だな」
「なんでしょう?」
私が目線を冷たくして低めの声で言うと…。
「……いや、なんでもない」
……お父様は黙った。
そして、竜の方が飛んでいられなくなり、広場のようなところに落ちた。
『サフィー、サフィー、呑気に見てる場合じゃないよ‼︎ルードを止めて‼︎世界が軋むよ~。世界が壊れる~。お願いだから、ルードを止めて~』
………精霊王達の切実な声が聞こえてきた。
そうね、そろそろ止めないと、ルドが戻って来なくなりそうだわ。
流石にそれは嫌だもの。
さて、止めに行きますか~。
「お父様、ルドを止めてきますわ」
自分の体の周りに風魔法で風を起こし、空中に浮かぶ。
急いでルドの元へ行くと……。
竜はもう死んでいるのに、ずっと剣を差し続けていた。
ルドは返り血で全身が真っ赤に染まっており、なかなかにホラーな見た目をしていた。
瞳は完全に光を失っており、闇堕ちしたような目をしている。
……思ったよりヤバかったわね。
「ルド?」
「………」
「ルド」
声を掛けて、こちら側に戻す。
「ルド」
ピクッと反応した。
「ルド」
「………ッ」
顔をこちらに向けたが、まだ瞳に光は戻っていない。
「ルド、戻ってきて?」
「フィア」
「ええ」
ルドを洗浄魔法で綺麗にして、風魔法で自分の体を浮かせ、ルドの頬に手を添える。
もう少しで戻ってきそうだ。
「ルド、愛しているわ」
「フィア‼︎」
ガバッとルドが抱き締めてくる。
「ふふふ、大丈夫?」
「うん。でも……」
「安心して?こんなことをしたくらいで嫌いにはならないわ。ルドは私を守ってくれたんでしょう?」
「うん、アイツがしたことが許せなくて」
「ふふ、いいのよ」
するとルドがその場に正座の形をして座り、私は向き合う形でルドの膝へ座る。
「あの竜が悪いわけじゃないんだ。
番を失った竜は、狂化してしまう。それはしょうがないこと。
だが、番契約を結んだ者は、簡単に死ぬことはない。病気にもかからないし、怪我をしてもある程度のものはすぐに治る。寿命で死ぬとしても、番契約をしていれば、死ぬタイミングは同じになる。きっと番は誰かに殺されたんだと思う。
おそらくは、人間に。
獣人や竜族、魔族は番の重要性、大切さが分かっている。だが、人間はそもそも番を感じ取れる者の方が少ない。番契約をした者の番を殺すのは人間くらいしかいない。
そんな愚かな種族は人間しかいないんだよ」
怒りを込めながらルドが話す。
番を殺すなんて……。
戦争もなく、比較的平和な世の中で、そんなことをする者がいるなんて……。
「フィアは、俺が絶対守るから。絶対に離さない!」
「ええ、信じているわ。私もルドを守るわ」
そう言ってお互いに微笑む。
「ゴホンッ」
驚いてルドが立ち上がり、私は抱き抱えられながらその音がした方を見ると……。
「貴方達は何者だ?」
40代くらいの男性が、私達に剣を向けながら聞いてくる。
制服を見ればわかるでしょうに…。
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