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3章 転生者
第24話 封印
しおりを挟む「何か質問がある者は今のうちに聞いておくように。大体の質問には答えよう」
そうルドが言うと、アレックスが手を挙げた。
「質問をよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「ドレッド隊長の番様はなんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「あぁ、そうだな……フィアは何か希望はある?」
「うーん、そうね……これからお仕事で一緒に過ごすことが多くなるし、あまり堅苦し過ぎるのもどうかと思うわ。それに、これは私の予感だけれど、この特別部隊のメンバーとは長い付き合いになると思うの。だから、是非ともサフィーと呼んで欲しいわ」
「そうだね、フィアがそう言うならそうしようか」
「はい。サフィー様、これからよろしくお願いします」
「サフィー様!よろしくお願いします!」
アレックスとエドワードが改めてよろしくと言ってくれた。
「はい、よろしくお願いしますね」
距離が少し縮まった気がして、嬉しくなる。
「もう一つよろしいでしょうか?」
アレックスがもう一つ聞きたいことがあるらしい。
「ああ、なんだ?」
「失礼ながら、先程サフィー様がおっしゃっていた、恐怖心を抱くとは、どういうことでしょうか?男性恐怖症ということであっていますでしょうか?
今後、もし何かあった時に対処できるように、という意味で質問いたしました」
大変申し訳ないというような表情でアレックスが聞いてきた。
「それについては、また後で3人には話す。ただ、フィアは男性恐怖症じゃなくて、対人恐怖症なんだ。
今日でまた新たな発見もあったから、詳しいことは後で伝える。
今は俺の魔力がこもった魔石を身につけているからどうにかなっているだけで、外せばパニックに陥る。
それは頭に入れておいてくれ。
詳細を話すのはフィアの負担になるから、この場では話さない。理解してくれ」
「承知いたしました。サフィー様、申し訳ありません」
「いいえ、お気になさらないで。話さなければならないとは思っていましたの。
ただ、私の口から伝えることは難しいので、ルドから聞いていただけるとありがたいですわ」
「はい」
少し重い空気になってしまったが、フィアがお茶の用意をして部屋の空気を変える。
みんなでお茶を楽しみ、談笑してしばらくした時……。
「あ!そういえば、気になっていたの」
「どうしたの?」
すかさずルドがフィアに微笑みかけながら聞いてくれる。
「シャル、貴女、誰かに封印された覚えはある?」
「え?」
「貴女、ずっと封印されてきたでしょう?」
ずっと感じていた違和感。
そこそこ長い時間を共に過ごし、それが何か突き止めることができた。
だが、シャルには心当たりがないようで、戸惑った表情をしている。
「会った時からずっと違和感は感じていたの。でもそれが何かわからなくて……でも、一緒の時間を過ごしていくうちに、何が原因なのかが分かったわ」
ゴクリ、とみんなが固唾を飲んでフィアの話を聞いている。
「幼い頃から匂いを封印されていたでしょう?」
「え?」
「匂いを?」
ルドが確認してくる。
それに頷き、
「ええ。人によって量は違うけれど、多かれ少なかれ匂いは出ているものよ。
フェロモンともいうかしら。
でも、シャルからはそれが感じられない。
まずそこで違和感を感じて、次に何故匂いが感じられないのか、申し訳ないけれど、シャルを探ってみたの。
そうしたら、匂い事態が封印されていたのよ。
それに伴って、身体が勝手に、まだ10歳と半年を過ぎていないと勘違いしたのね。
だから匂いを感知することもできなくなっていると思うわ」
シャルがこのことをどう受け止めるのかわからない為、そっと伺ってみた。
「ああ、だからでしょうか?まだ一度も発情期がきたことがないのです。
封印ですか……一体誰がそのようなことを…」
「とても言いづらいことなのだけど……シャルのお母様が封印したみたいなの……」
そう言った途端、シャルの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
「え……」
そこで、私の推測を話してみることにした。
「シャルのお母様がどういう理由でシャルの匂いを封印したのかはわからないけれど……悪意があるようには感じなかったわ。ここからは私の推測でしかないけれど、聞いてくれるかしら?」
「はい……はい……お願いします……。
母は…両親は…私が10歳になった日に亡くなったんです」
「っ⁉︎」
その言葉を聞いた瞬間、私の仮説がより真実味を帯びてきた。
「おそらくだけれど……シャルのご両親は何らかの理由で亡くなってしまったのね……。
シャルのお母様はそれを予想していたのだと思うの。自分達が死んでしまうとわかっていて、自分達が死んでしまった後の貴女を心配して、貴女を守ろうとしたのよ。
通常、10歳と半年が経てば匂いがわかるようになるわ。それに伴って、発情期が表れてくるの。
15歳で始まるとはいえ、その時に自分達はいない、頼れる人のいない中での発情期ほど恐ろしいものはないと考えたのよ。
もしそこでシャルが間違いや犯罪に巻き込まれてしまったら……そう考えて恐ろしくなってしまったのね。
匂いを封印する方法は完全ではないけれど、あるにはあるの。
……とても珍しい方法よ。
知っている人はほとんどいないわ。
シャルのお母様が何故その方法を知っていたのかはわからないけれど、それを貴女にかけた。
未来で自分達よりも強い者にシャルを任せたのね……。
この魔法は自分達よりも強い者にしか解くことはできない。なおかつ、この封印を知っている者にしか解くことはできない。
現れなければ自分達の魔法が、現れたらその者に自分達の娘を任せた。
……シャル、貴女は大切にされていたのね」
シャルの涙が溢れてきて止まらない。
「ぅ……ぅ、ひぃっく……ぅ…おかあさん、おとうさん……」
「大丈夫よ。これからは私達がいるわ。それに……貴女にはもっと頼りになる人がいるもの」
そう言ってアレックスへと視線を投げかける。
彼は……アレックスは気づいているのだろうか?
匂いが無くても、運命とは惹かれ合うものだということを。
あれは……気づかずに惹かれている。
先程から、シャルを見る目が愛しい人を見る目になっている。
「シャルロット……これからは私が貴女を守ります。
まだ出会ったばかりで私のことは信用できないかもしれませんが、貴女のことを好きになってしまったんです。
狼族は一途です。一度番と決めた者は一生守ります。
これからは私が貴女を甘やかします。
今まで辛い思いをしていた分、私がこれから貴女を幸せにしていきます」
泣いているシャルを、アレックスがそっと抱きしめながら言った。
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「あの……、好きとかよくわからないですが……この気持ちは…この胸の辺りがポカポカするのは…嬉しい、安心するっていうこと…だと思います」
「シャル、貴女…もしかして感情が育っていない……?匂いを長年封印してきたからかしら?これは……」
10歳まで両親がいたとはいえ、亡くなってしまったショックで感情を無くしてしまったのだろうか?
そこでさらに匂いを封印してきたため、感情が育たずにこの歳まで生きてきたのかもしれない。
これは……アレックスに頑張ってもらうしかない。
アレックスはというと……、シャルに嬉しい、安心すると言われて嬉しそうだ。
蕩けるような笑顔をシャルに向け、抱きしめ続けている。
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