病弱な従妹を理由に婚約者がデートをドタキャンするので、全力で治療に協力します!

灯倉日鈴(合歓鈴)

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5話

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「ち……治癒魔法? この人が!?」

 治癒魔法師など、この国に数人しかいないのに。
 従兄と同じように疑いの眼差しを向けてくるミミーに、カトレアはにっこり微笑む。

「ええ。大船に乗った気持ちでいてください!」

「……お兄ちゃま、ちょっと」

 ミミーはリードの袖を引き、顔を寄せて耳打ちする。

「あの人、怪しいわ。帰ってもらってよ」

「僕も怪しいと思うよ。だが、やらせてみるだけなら損はないじゃないか」

 二人はひそひそ話のつもりだが、会話は婚約者にもメイドにも筒抜けの音量だ。

「では、施術の前に確認させて頂きますね」

 従兄妹の不信感など物ともせずに、カトレアはニコニコ進行する。

「お体のどの辺の具合が悪いのですか?」

「……その日によって変わるわ。頭が痛かったり、お腹が痛かったり。今日は胸がムカムカして……」

 ボソボソと答えるミミーに、サマンサは「それはビスケットの食べ過ぎでは?」と心のなかでツッコむ。

「お医者様には診てもらっていないのですか?」

「医者はミミーの病気は治せないって言うんだ!」

 今度はリードが返す。
 カトレアは「ふむ」と呟いてから、

「それなら、とりあえず一般的な治癒魔法を試してみましょう」

 ミミーの頭上に掌を翳した。

「オーディナリーキュア!」

 呪文を唱えると、掌から柔らかい光が溢れミミーに降り注ぎ……そして消えた。

「どうですか?」

 ミミーは自分の体を触って確認し、

「何も変わらないわ」

「おいおい、しっかりしてくれよ!」

 すかさず呆れた抗議の声を上げるリードに、カトレアは再び「ふむ……」と考える。

「では、出力を上げてみましょう」

 今度は指を組んで印を切りながら、呪文を唱える。

「天に在りて地に在りて、すべての源である聖霊よ。我が声に応え……」

 詠う響きに合わせ足元に魔法陣が浮かび上がり、先程とは比べ物にならない量の光が噴き出し、部屋中を輝きで満たす。

「グレイテストキュア!」

 発動の言葉に呼応し、光が弾ける。
 その場にいた術者を除く三人は、眩しさに目を閉じた。瞼越しの明るさが通常に戻ると、リードは恐る恐る目を開けた。魔法の余韻なのか、天井から火の粉のような光の粒がはらはらと舞っては宙に消えていく。
 しばし幻想的な光景に浸っていたいところだが……彼にはそれより大切なことがあった。

「ミミー、具合は!?」

 従妹に確認すると、彼女はキョトンとして、

「……何も」

「はあぁぁ!?」

 リードは露骨に肩を落とした。

「どうなってるんだい? カトレア! 君の魔法は見た目だけの虚仮威こけおどしじゃないか! これだったら花火師の方がいい仕事するよ。国家認定ってのは嘘だったのかい!?」

「そんな。確かに術は発動したはずで……」

 怒鳴りながら詰め寄ってくる婚約者に、カトレアがオロオロと眉尻を下げた……その時。

「ああ!」

 ……あらぬ方向から声がした。
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