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10話【完結】
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――後日、カトレアはリードに呼び出された。
「お願いだ、カトレア。僕との婚約を解消してくれ!」
アンダーソン伯爵令息は、人気の多いカフェでいきなり頭を下げた。
「ミミーの病気は僕の気を引く為の可愛い嘘だったんだ。僕はそんないじらしい彼女を放っておけない。君は嫌がる彼女に嬉々として苦痛を強いる冷酷な女だ、独りでも平気だろう?」
この期に及んで失礼な台詞を吐きまくる婚約者に、ピルチャー伯爵令嬢はニッコリ微笑む。
「ええ、よろしくてよ」
「やった! じゃあ……」
聞き分けのいい婚約者に頬を緩ませて頭を上げるリードに、カトレアは笑顔を貼りつかせたまま、
「でも、そちらの心変わりが原因ですから、慰謝料は頂きますよ?」
「……へ?」
「あと、別途で施術料と薬代。わたくしは『治癒魔法術師』ですから、プロとしての報酬をいただきます。エリクサーも栓を抜いた瞬間代金が発生しますが、大まけで半額でいいですわよ」
すっと差し出された請求書の数字は、城が建つ値段だ。
「それでは、わたくしはこれで」
自分のお茶代分の硬貨だけテーブルに置いて、カトレアは席を立つ。
……真っ白に燃え尽きたリードは、いつまでもその場から動くことができなかった。
◆ ◇ ◆ ◇
「……カトレア、また婚約破棄になったのか」
ピルチャー伯爵邸。家族の憩いのリビングでソファに腰を下ろした当主は、沈痛な面持ちでため息をついた。
「これで四度目だぞ? どうなっておるのだ」
「わたくしのせいではありませんわ」
父の小言に、娘は飄々と言い返す。
「今回は婚約『解消』でしたし」
「結果は同じだろう?」
「まあ、そうですけど」
カトレアは優雅に紅茶を啜る。
「大体、世の中には病弱な身内を優先したがる殿方が多すぎじゃありません?」
カトレアの一番目の婚約者は妹が、二番目は姉が、三番目は幼馴染が病弱で……という理由で破談になっている。
その都度、伯爵令嬢は真剣に彼女らの治療に取り組んできたのだけど。
二番目は今回と同じく詐病、一番目と三番目の彼女達は本当に体調が悪く、治療したカトレアにとても感謝してくれた。……のだが、
『弱い彼女を守るのが生き甲斐だったのに!』
と詰られ終局を迎えた。
「まったく悲劇に酔いたいのなら身内だけにして、他人を巻き込まないで欲しいものですわ」
婚約者は結ばれない二人の恋の邪魔者じゃないっつーの。
カトレアはグイッと紅茶を飲み干し、空のカップをソーサーに戻した。
「お嬢様、おかわりはいかがですか?」
すかさず壁際に控えていたサマンサがティーポットを手にする。
「あら、ありがとう」
「次のお茶はローズフレーバーにしました」
「味を変えるなんて気が利くわね、サマンサ」
「恐縮です」
嬉しそうに頭を下げるメイドと令嬢のやり取りを、当主は複雑な心境で眺めている。
「……カトレア、つかぬことを訊くが」
「なんですの? お父様」
「お前の結婚が破談になる度に、伯爵家の資産と優秀な人材が増えていくのは気のせいか?」
「さあ? わたくしには何とも」
すました顔で紅茶を楽しむカトレア。
……我が家が栄えるのは嬉しいが、この子が嫁に行ける日は来るのだろうか……?
こっそり娘の将来を憂う、ピルチャー伯爵であった。
「お願いだ、カトレア。僕との婚約を解消してくれ!」
アンダーソン伯爵令息は、人気の多いカフェでいきなり頭を下げた。
「ミミーの病気は僕の気を引く為の可愛い嘘だったんだ。僕はそんないじらしい彼女を放っておけない。君は嫌がる彼女に嬉々として苦痛を強いる冷酷な女だ、独りでも平気だろう?」
この期に及んで失礼な台詞を吐きまくる婚約者に、ピルチャー伯爵令嬢はニッコリ微笑む。
「ええ、よろしくてよ」
「やった! じゃあ……」
聞き分けのいい婚約者に頬を緩ませて頭を上げるリードに、カトレアは笑顔を貼りつかせたまま、
「でも、そちらの心変わりが原因ですから、慰謝料は頂きますよ?」
「……へ?」
「あと、別途で施術料と薬代。わたくしは『治癒魔法術師』ですから、プロとしての報酬をいただきます。エリクサーも栓を抜いた瞬間代金が発生しますが、大まけで半額でいいですわよ」
すっと差し出された請求書の数字は、城が建つ値段だ。
「それでは、わたくしはこれで」
自分のお茶代分の硬貨だけテーブルに置いて、カトレアは席を立つ。
……真っ白に燃え尽きたリードは、いつまでもその場から動くことができなかった。
◆ ◇ ◆ ◇
「……カトレア、また婚約破棄になったのか」
ピルチャー伯爵邸。家族の憩いのリビングでソファに腰を下ろした当主は、沈痛な面持ちでため息をついた。
「これで四度目だぞ? どうなっておるのだ」
「わたくしのせいではありませんわ」
父の小言に、娘は飄々と言い返す。
「今回は婚約『解消』でしたし」
「結果は同じだろう?」
「まあ、そうですけど」
カトレアは優雅に紅茶を啜る。
「大体、世の中には病弱な身内を優先したがる殿方が多すぎじゃありません?」
カトレアの一番目の婚約者は妹が、二番目は姉が、三番目は幼馴染が病弱で……という理由で破談になっている。
その都度、伯爵令嬢は真剣に彼女らの治療に取り組んできたのだけど。
二番目は今回と同じく詐病、一番目と三番目の彼女達は本当に体調が悪く、治療したカトレアにとても感謝してくれた。……のだが、
『弱い彼女を守るのが生き甲斐だったのに!』
と詰られ終局を迎えた。
「まったく悲劇に酔いたいのなら身内だけにして、他人を巻き込まないで欲しいものですわ」
婚約者は結ばれない二人の恋の邪魔者じゃないっつーの。
カトレアはグイッと紅茶を飲み干し、空のカップをソーサーに戻した。
「お嬢様、おかわりはいかがですか?」
すかさず壁際に控えていたサマンサがティーポットを手にする。
「あら、ありがとう」
「次のお茶はローズフレーバーにしました」
「味を変えるなんて気が利くわね、サマンサ」
「恐縮です」
嬉しそうに頭を下げるメイドと令嬢のやり取りを、当主は複雑な心境で眺めている。
「……カトレア、つかぬことを訊くが」
「なんですの? お父様」
「お前の結婚が破談になる度に、伯爵家の資産と優秀な人材が増えていくのは気のせいか?」
「さあ? わたくしには何とも」
すました顔で紅茶を楽しむカトレア。
……我が家が栄えるのは嬉しいが、この子が嫁に行ける日は来るのだろうか……?
こっそり娘の将来を憂う、ピルチャー伯爵であった。
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願わくばリードをもっと痛めつけてほしかったですね。
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読後感スッキリで、願わくばシリーズで読みたいです。